見もの・読みもの日記

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2018新春旅行:宋と遼・金・西夏のやきもの(大和文華館)~京博

2018-01-13 23:51:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
大和文華館 特別企画展『宋と遼・金・西夏のやきもの』(2018年1月5日~2月18日)

 新春三連休旅行の初日、大阪の東洋陶磁美術館のあとは、奈良の大和文華館へ。10世紀から13世紀における中国陶磁について、中原のみならず、北方で展開された遼(契丹族)、西夏(タングート族)、金(女真族)の陶磁器にも注目し、その関係性と多様性を考える展覧会。私はこの時期の異民族国家と文化が大好きなので、この珍しい企画、ぜひ見たかったのだ。展示品は約80件、一部は愛知県陶磁美術館や京大総合博物館からの出陳である。

 分量的には、私が期待していたより、宋とその前代の隋唐~五代の作品の比率が高かったが、まあ仕方のないところ。やっぱり定窯の白磁はきれいだ。定窯で黒磁や柿磁(!)がつくられていたのは初めて知った。あとこの時期の「碗」は平べったく浅いものが多いと感じた。

 私の好きな磁州窯はコーナーができるくらいたくさん出ていた。『白地黒花鯰文枕』は大好き。頭を当てる部分に、水草がそよぎ、細身の二匹の鯰が泳いでいる。夏の昼寝に涼しい夢が見られそう。緑釉をかけた磁州窯は「白地黒掻落」と呼ばれる技法のあと、全体に緑釉をかける。こうすると黒は引き立つのだそうだ。磁州窯の技法は、金~元にも継承された。金の磁州窯には、現代の北欧磁器みたいにシンプルなデザインの作品もあって大好き。

 遼の磁器は「皮嚢壺」とか「鶏冠壺」と呼ばれる皮袋形の壺が遊牧民族らしくて面白い。緑釉一色の壺や碗があって、深い緑色がえも言わず美しかった。西夏の磁器は2件だけで、やっぱり珍しいんだなあ。どちらも磁州窯ふうの「黒釉掻落」だが、透明釉をかけておらず、隙間に土が見える(露胎)ので素朴な感じがした。1件は大和文華館所蔵、1件は愛知県陶磁美術館の所蔵。いちおう西夏の霊武窯産と考えられているが、疑義もあるようだ。

 続いて京都へ。これで京博(夜間開館)を見れば、今日のミッション完了である。思いのほか、移動がスムーズで時間に余裕があったので、東寺に寄って、今年最初の御朱印をもらう。五重塔初層の内陣を公開していた。まだ余裕がありそうなので、六波羅蜜寺に向かう。ここの宝物館に井伊直政像があるという噂を年末に聞いたので、確かめたかった。実はこれまで何度も来ているのに、一度も気にしたことがなかった。しかし宝物館は16時半終了で、到着したときは2分ほど過ぎていた。「だめですか?」とすがったけど「無理ですわ。明日いらっしゃい」と言われてしまった。またの機会に訪れたい。本堂に参拝して、御朱印はいただいた。

京都国立博物館 新春特集展示『いぬづくし-干支を愛でる-』(2017年12月19日~2018年1月21日)他

 昨年は「国宝展」4期コンプリートした京博だが、基本的には常設展のほうがゆっくり見られて好きだ。現在の展示は、たとえば陶磁(日本と東洋のやきもの)など、「国宝」の名前はないけどすばらしいものがたくさん出ている。仁清や乾山の色絵もいいし、中国の三彩俑も楽しい。

 2階は2部屋が「いぬづくし」。やっぱり芦雪の『狗子図』がかわいい。『犬追物図屏風』は勇壮だけど、ちょっと可哀想だ。中世絵画は「東福寺の画僧・明兆とその周辺」を特集。東福寺の『達磨・蝦蟇鉄拐図』など。ここからテーマ的には次室の「仙人大集合」につながる。度肝を抜かれたのは鈴木松年筆『群仙図屏風』6曲1双。ネット上の画像で見るとそれほどでもないのだが、実物サイズで見ると、かなりアクが強い。鈴木松年(すずきしょうねん、1848-1918)ってどこかで聞いたことがあると思って検索をかけたら、大徳寺の塔頭・龍源院にあった白蔵主の屏風の作者だった。中国絵画も「中国の仙人たち」。明・劉敔筆『群仙図』4幅は大きくて見ごたえがあった。西王母に招かれた宴会の帰りなのだそうだ。

 1階は特集展示「御所文化を受け継ぐ-近世・近代の有職研究-」が2室。あとは金工と漆工。問題は彫刻展示室である。金剛寺の大日如来坐像と不動明王坐像がお帰りになったことは分かっていたけど、実際にその部屋に入ってみるまで、信じることができなかった。広い展示室の中央には、京都・安祥寺の五智如来坐像5躯が並んでいた。中尊は丈六サイズだろうか、仏像としては大型の部類だと思うが、やっぱり黄金色の山みたいだった大日如来坐像がいなくなった喪失感は拭いきれない。徐々に慣れると思うけど…。あわせて「神像と獅子狛犬」の特集展示があって、静岡・鉄舟寺の『男子立像(伝・摩多羅神)』とか京博所蔵(花咲稲荷伝来)の『猿田比古神立像』など、珍しいものが見られた。

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