見もの・読みもの日記

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名品に向き合う/出光美術館

2006-05-14 20:41:20 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館 『開館40周年記念名品展』第1弾

http://www.idemitsu.co.jp/museum/

 開館40周年を記念する名品展である。既に見てきた友人からは「後期のほうがいいかも」という忠告を受けていたが、やっぱり行ってしまった。

 いつもと異なる順路で、展示室3が「仏画」と「絵巻物」。展示室2に進むと「茶道具」。「茶掛」(茶席に掛ける掛軸)つながりで、日本の書画と中国絵画も展示されている。最後の展示室3は、周囲に「室町屏風」、中央に「中国陶磁」という構成である。

 最大のお目当ては『伴大納言絵巻』だったが、一目見てガッカリ。ええ~ケチ!これだけしか開けてくれないの!という気持ちだった。見ることができるのは、応天門炎上の火柱を挟んで、左右に野次馬が集う場面だけである。ほかの絵巻なら、ある程度の幅で、1場面1場面が完全に切り替わり、物語が進行していくので、こういう見せ方で十分である。しかし、この絵巻に限っては、とにかく始まりから一気呵成に場面が続いていく「想定外」の連続性を味わうのでないと――。そのへんは、今秋の『伴大納言絵巻展』を待て、ということかしら。

 しかし、やっぱり人々の表情はいいなあ。右へ左へ、舞い散る火の粉を追う人々の顔の向きに従って、黒い烏帽子がさまざまな方向を向いているのも面白い。火柱を挟んで、右手の群集と左手の群集では、少し社会的階層が違うように思われる。ところで、人々の装束を見ると、藍地に白の小紋とか、タータンチェック風とか、けっこう柄物が混じっている。これはどうなんだろう。史実の応天門事件(866) の頃の庶民って、こんな着物を着ていたのだろうか? 後世の人が塗り絵しちゃったなんてことはないよね?

 出光美術館には何度も足を運んでいるのに、今回、初めて見る(と思われる)作品が、いくつもあった。ひとつは徐祚筆『漁釣図』。白衣の男が四角く身を屈めて、じっと釣糸を垂れている。丈の高い枯れ草との対比で、男の姿は、コロボックルか何かのように小さく見える。言葉にすればそれだけだが、絹本の暗い画面に漂うメランコリーが美しい。

 相阿弥という画家も、これまであまり気にしたことがなかったが、『瀟湘八景図』はいいなあ。描かれているのは、城壁や城門からして中国のつもりなんだろうけど、丸みを帯びた山容、ちょびちょびと申しわけに生えた木々は、どこか和風である。霞む風景は春の朧夜か。

 ところで、近年、出光美術館は「読ませる解説」が非常に充実していたが、この名品展は、一切、個別作品の解説がない。私は、こういうスタイルは、スッキリしていて気持ちがいいと思う。まず、自分の眼力で展示品に向き合おうという気持ちになれる。でも、意外に観客が少なかったことに驚いた。雨のせいかしら。

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