見もの・読みもの日記

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王朝ブログ明月記/五島美術館

2004-11-11 12:40:47 | 行ったもの(美術館・見仏)
○五島美術館『特別展 京都冷泉家「国宝 明月記」-藤原定家の日記から800年を越えて甦る王朝貴族の生活-』

http://www.gotoh-museum.or.jp/

 すごい。なんたって国宝「明月記」(54巻、補写本5巻ほか)全巻を展示してしまおうという企画である。

 私が出かけたのは日曜日で、お茶席があったらしく、着物姿の上品なおばさまが目立った。「これ何かしら」「日記みたいね」という無邪気な囁き声も聞こえた。お茶をたしなむ方々は、ふだん古筆にもなじみが深いので、こうした展示会では、私に読めない変体仮名をすらすら読み下してくれることもあるのだが、定家の悪筆にはお手上げのようだった。

 実際、「明月記」は悪筆である。原本の隣に現代語の抄訳があっても、なかなか原文が判読できない。アラビア語か何かの写本をじっと見ているのとあまり変わらないかも知れない。

 それでも、父・俊成の死を記した条は、漢文の中に俊成の言葉を仮名書きで埋め込んでいることなど、おもしろい発見があった。後鳥羽院が裸で水練をしているのでびっくりしたとか、愛猫が犬に噛み殺されて悲しいとか、各巻とも興味深いトピックを選んで広げてくれている(ただ、とにかく読めないのが残念)。

 定家は10代の後半から70歳過ぎまで、ほとんど毎日、日記をつけ続けた。執念である。気のせいかも知れないが、私と同じ、40代の前半くらいは不平が多い。こんな仕事は意味がないとか、もう出仕しないことにしたとか、そのくせ他人のスピード出世をきりきりと羨んでいる。でも、当時、定家より早く出世した公卿たちの誰が、今日に名を残したか。そう思うと、人間の評価なんて、分かんないものだなあ。

 さて、定家が今の世に10代の若者だったら、やっぱりブログを始めるかしら? 今、ブログを始めた若者の何人が、70歳過ぎまでこの習慣を続けているだろう? 果たして、今日、世界中で書き綴られているブログのいくつかは、五百年後、一千年後に21世紀初頭の政治・文化・社会を示す史料となるのかしら? そんなことも頭をよぎった。

 参考文献として、堀田善衛『定家明月記私抄』(ちくま学芸文庫 筑摩書房 1996.6)をおすすめする。それから、かわいい「束帯人形」をお見逃しなく!!
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