見もの・読みもの日記

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帝室博物館総長・森林太郎/東京国立博物館

2005-04-13 22:34:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 日本の博物学シリーズ 特集陳列『森鴎外と帝室博物館』

http://www.tnm.jp
※「展示」または「今日の博物館」から。

 いま、東博の常設展エリアで行われている地味な特集陳列である。ほとんど通り過ぎかけて、ちょっと変わった刷り物に目が留まった。解説を見たら「鴎外は…」と書いてあったので、おや?と思った。そうしたら、次の解説にも、その次にも「鴎外」の名前があって、初めてこれが、『森鴎外と帝室博物館』という特集陳列であることに気づいた。

 「文豪」森鴎外は帝室博物館総長をつとめたことがある。へえ、知らなかった。というか、あまり意識したことがなかった。「官僚」鴎外には軍医のイメージが強い。陸軍軍医の頂点である陸軍軍医総監の地位まで上り詰めた人だもの。鴎外は、陸軍省退官後、大正6年から(55歳)帝室博物館総長と宮内庁図書頭(ずしょのかみ)を兼任し、同11年(60歳)現職のまま、この世を去った。毎朝、軍服姿で、馬に乗って出勤してきたという逸話が以下のサイトにある。
http://www.tcvb.or.jp/jp/rashai_tokyo/MEISHO/E_MUSEUM.HTM

 晩年にもかかわらず、鴎外の仕事は実に精力的である。博物館の蔵書目録の編纂を意図し、1点ごとに丁寧な解題を執筆している。その成果は『帝室博物館蔵書解題』(ゆまに書房,2003.2)として刊行されているが、最近、新たな自筆原稿が追加発見されたのだそうだ。

 帝室博物館の罫紙に遺された鴎外の筆跡は、右肩上がりで勢いがある。文献の来歴(序文や跋文から分かる出版の経緯、どこから購入・入手したか)、特徴(形態、寸法、朱印の有無)、注目すべき収録記事や図版、対比参照すべき文献など、豊富な内容を簡潔に記している。若い頃の装飾過多な文体でもないし、晩年の砂を噛むような歴史小説の文体とも異なる。明晰で無駄のない、平易な日本語が美しい。

 鴎外ってあんまり好きじゃなかったが、この仕事を見て、ちょっと好きになった。こんな充実した晩年が過ごせたら幸せだろうなあ。
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