見もの・読みもの日記

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名コンビ誕生の予感/日本建築集中講義(藤森照信、山口晃)

2013-10-04 23:00:07 | 読んだもの(書籍)
○藤森照信、山口晃『日本建築集中講義』 淡交社 2013.8

 カバーの折込みにいう、「先生役に路上観察眼をもつ建築家・藤森照信氏、聞き手に平成の絵師・山口晃氏。その二人がニッポン各地の名建築13件を見学して、あれやこれやを発見したり、建築の魅力を語り合う対談&エッセイ漫画」。私の大好きなジャンルであると同時に、大好きなお二人の顔合わせに、気持ちがスパークしてしまった。もとは月刊「なごみ」2012年1~12月号に連載されたもの。

 そこで、ハタと思い出したが、淡交社の「なごみ」といえば、山下裕二先生と赤瀬川原平先生が『日本美術応援団』の第二弾にあたる『京都、オトナの修学旅行』を連載していた雑誌である。いい意味で脱力した老人力の赤瀬川さんを、敬意をもって支える山下先生もいいコンビだが、この藤森・山口コンビも面白い。藤森照信氏は制作(設計)もするけど本業はずっと大学教授で、教壇にも立つけど基本的にクリエイターの山口晃氏に比べたら、社会の約束事は理解していそうなものだ。ところが、本書を読むかぎりでは、山口さんのほうが常識人で、藤森先生の天衣無縫ぶりに、ハラハラさせられっぱなしなのが可笑しい。何しろオビのひとことが「センセイ!こ、今度は何を!?」だもの。利休の作として伝えられる国宝茶室・待庵で、ゴロリと寝そべって「寝て一畳」を体感してみたり。その姿を、絵師・山口晃さんのマンガで読む贅沢。

 登場する建築は、法隆寺(※)、日吉大社(※)、旧岩崎家住宅(※)、投入堂(※)、聴竹居、待庵、修学院離宮、旧閑谷学校、箱木千年家、角屋(※)、松本城(※)、三渓園(※)、西本願寺(能舞台・書院造・数寄屋)。ほかに藤森先生設計の高過庵やタンポポハウス訪問の記も付いている。※印は私が行ったことのあるもの。旧閑谷学校は未踏地だが、藤森先生の著書で読んだことは覚えている。深い沼のような、磨き込まれた床の美しさ。体験してみたいな~。西本願寺の白書院の魅力は、山口晃さんが雑誌『Pen』2013年8/1号「完全保存版・日本美術をめぐる旅」にも書いていらした。

 山口さんのマンガには、それぞれの建築の案内人のみなさんも登場する。観光地(建築)の魅力は、案内人の個性にも左右される。知識と熱意があればいいというものでもないのが、難しいところ。饒舌になりすぎて、参観者の感興を削いではいかんのだ。西本願寺と三渓園の案内人は、お二人の心をとらえた「二大案内人」ということになっている。山口さん描く西本願寺の案内人の方は、ちょっと水木しげるのキャラクターっぽい。三渓園の建築群は、お庭から眺めただけで、座敷に上がってはいないと記憶するが、楽しかった。また行ってみたい。

 あとがきに藤森先生いわく「私は根っからのツッコミタイプだからボケとしかウマがあわない」。自覚していらっしゃるんだな。このコンビの建築探訪記、ぜひもっと続けてほしい。

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