見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

白と黒のうつわ・志野と織部/出光美術館

2007-04-15 22:30:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館 『志野と織部-風流なるうつわ-』

http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html

 志野と織部かあ。どうしようかなあ。この展覧会は、2月に始まったのを知っていながら、行こうかどうしようか、ずっと迷っていた。近年、陶磁器の美学に開眼して、青磁がどうの豆彩がどうの、柿右衛門が古九谷が、あるいは楽茶碗が、と語っているが、実はいちばん苦手なのが、志野・織部系統のやきものなのだ。「茶の湯」との結びつきが深いので、伝統格式が確立していて、なんとなく、めったなことは言えない雰囲気がある。

 それでも、せっかくの展覧会なので、まあ、さらりと見てくるか、と思って出かけた。志野と織部は、どちらも桃山時代に生まれた。「志野」は、日本人が初めてに入れた本格的な「白いうつわ」である、というのを読んで、なるほど、と思った。白いうつわに黒や錆色の釉薬で、自由な意匠を描くことを、存分に楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。それにしても上手い。いやー。草花や山水を、どうしてこんなふうに自由闊達に抽象化することができるのか。どんな目をしているのかと呆れ返る。

 それから、「織部黒」「黒織部」の登場。京の黒楽茶碗の影響を受け、美濃で「瀬戸黒」が誕生する。これは焼成中に頃合いを見計らって窯から引き出し、急冷させることで、つややかな黒色を得るのだそうだ。白も黒も、大変な苦労の末に手に入れた色なのだな。これに大胆な歪みを加えたのが「織部黒」、文様を加えると「黒織部」になるのだが、ものすごい縄文力である。岡本太郎みたい。

 だけど、私はむしろ「黄瀬戸」を好む。青磁(青いうつわ)への憧れから生まれたもので、黄緑色の地に、微かに青を点ずる。草花のような優しい図柄が多い。

 後半は志野と織部に見られる文様を「吊し」「橋」「車輪」「籠」「網干し」「傘と笠」などのキーワードで分類し、屏風絵や銅鏡、服飾などと見比べながら、桃山時代の美意識を探る。私は「枝垂れ・揺らぎ」という着眼点が面白いと思った。確かに、志野と織部に描かれた植物は、どれも風になびき、揺らいでいる感じがする。あと、「車輪」について、牛車の車輪は、乾燥を防ぐため、外して川水に浸したというのは初耳。古来、水に浸った車輪の意匠が多いのはそういうことか、と初めて分かった。

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1 コメント

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焼き物とは (上村武男)
2007-04-16 23:06:03
陶磁器と茶道のかかわりを考えてしまうと、難しくなってしまいます。単純に焼き物を楽しめばいいのでは、と思っています。
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