見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

個性豊かな神々/大神社展(東京国立博物館)前期を中心に

2013-05-12 21:25:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『国宝 大神社展』(2013年4月9日~6月2日)

 連休前の4月20日(土)にまず前期を、友人と見に行った。それからブログを書く時間が取れないまま、きのう5月11日(土)後期も見てきたので、まとめてレポートする。

 前期の参観日は冷たい雨の降る日で、東博の特別展としては、比較的空いていた。仏像好きの友人なので「まず第二会場の神像から回りましょうか」とも話したが、結局、順路に従うことにする。そのほうが気持ちが盛り上がっていいみたい。

 第1章は、みやびやかな「古神宝」から始まる。前期は春日大社と熊野速玉大社が中心。そこに第2章「祀りのはじまり」が入り組んでいて、沖縄や沖ノ島の考古文物(銅鏡、子持ち勾玉など)が混じり、『古事記』『日本書紀』などの文献資料に進む。『延喜式』の神名帳の前で「このアマテラスから化生した三女神が宗像神社の神でさ」と話している男子がいて、詳しいな、若者、と思った。全体に会場の会話がクロウトっぽくて面白かった。なお、出品目録では第5章「伝世の名品」にリストアップされている『平家納経 願文』(平清盛の自筆)は、いきなり第1室に展示されていて、ハッとした。筆跡って、肖像画よりも何よりも、その人が本当に生きていたことを生々しく伝える資料だと思う。

 第3章「神社の風景」では『伊勢両宮曼荼羅』の前で、三重県出身の友人から現地の様子を聞く。文化庁所蔵の『天神社頭図』が面白かった。絵巻か何かの断簡だろうか。試しに検索してみたら「随意契約の公示」という下世話な情報が引っかかってきて、苦笑。

 第4章「祭りのにぎわい」の見ものは、何と言っても和歌山・鞆淵八幡神社の『沃懸地螺鈿金銅装神輿(いかけじらでんこんどうそうしんよ)』である。展示室の奥まった薄暗がりにひっそりと、しかし堂々と鎮座した様子は、龍が蟠居しているような迫力だ。12世紀の神輿が残っているって、もう奇跡としか思えない。これ、和歌山県博の『高野山麓 祈りのかたち』で(写真?複製を?)見なかったかなあ、と思ったが、私の記憶違いのようだ。でも鞆淵八幡神社の名前は、同展の記憶の中からよみがえってきた。ちなみに「日曜美術館」でこれが映ったときは、twitterの平清盛クラスタが「神輿キター!」「強訴じゃー!」で大騒ぎになって笑った。

 ここから第2会場。第5章「伝世の名品」冒頭は刀剣多し。鹿島神宮の巨大な『直刀 黒漆平文大刀』は、むかし現地で見て、呆気にとられたなあ。石上神宮の『七支刀』はあまり見る機会のないもので嬉しい。意外と細身で華奢な作りである。同じく石上神宮に伝わる『鉄盾』は重たそうだった。ああ、映画『レッド・クリフ』の歩兵もこんなのを持っていたかもしれない。手向山八幡宮に伝わる『唐鞍』一式の重装備にも驚く。やっぱり「神社」って、大陸や朝鮮半島の鉄器・銅器文明との親近性が強いような気がする。

 いよいよ第6章「神々の姿」は、4つほどの部屋に分かれる。まず獅子・狛犬、そして随身像に招かれて進むと、奥には松尾三神像が鎮座まします。左右一対の『随身立像』は岡山・高野神社という知らない神社だった。松尾三神像と並んでいた大きな女神像は、京都・東寺のものだというが、ぜんぜん記憶になかった。このへん、キャプションで所蔵先を確かめながら、へえとかほうとか驚く。写実的だったり、いくぶん抽象化されていたり、唐風だったり和風だったり、さまざまなタイプの神像(絵画もあり)を眺めながら進んでいくと、最も奥まったところに、小浜の若狭神宮寺に祀られた男神(小丹生之明神 和加佐国比古神)・女神像(小丹生之明神 和加佐国比女神)がおいでになった。

 向かって右に男神、左に女神を安置する。どちらも実に静かな御姿で、憤怒や威圧からは程遠い。沈思するというか、むしろ放心しているにも見える。しかし単純に運命を甘受するばかりでない、一種の凛々しさも感じられる。雪深い小浜の人々が祈り求めた神の姿はこのようなものか、と思うと、納得できる気がした。

 チラシ、ポスターに使われているおおらかな地母神的な女神像『吉野子守神像』(個人蔵)は最後に展示されている。個性豊かな神々とともに、この小さな国土に生きていることが嬉しくなる展覧会だった。

 前期参観の日は、このあと『平成25年 新指定 国宝・重要文化財』(2013年4月16日~5月6日)を見ていく。静岡・願成就院の不動明王及二童子立像など、仏像が多くて楽しかった。さらに法隆寺館を覗いて、充実の1日。

 『大神社展』後期の感想は別稿にて。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2013黄金週@関西:藤森神社... | トップ | 「かざり」と「あそび」/大... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鴨脚)
2013-05-13 22:47:40
いつも楽しく拝読しております。
鞆淵八幡神社の神輿は、素晴らしいですね。大昔に師匠から聞いた話ですが、近年(昭和30年代)まで実際に祭礼で使用していたので、文化庁のお役人に叱られたため、使用しなくなったとか。まあ、喧嘩祭りじゃないんだから、年に一度の祭礼なら、渡御しても良いんじゃないかなあ?
私は、「海部氏系図」が良かったですね。系図って本来はあのように記されるものなのですね。私はわかりませんでしたが、丹後国の国印が、捺されているそうです。籠神社(このじんじゃ)社家の海部家が、今も個人名義で所蔵されていてクレジットも個人名が明記されていて驚きました。国宝で個人が所有しているものは、本当に数が少なくしかも個人名を公にするのは稀でしょうね。
前期の早い時期で人も少なく3時間ほどかけてゆっくり拝見できました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事