見もの・読みもの日記

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2016年10月@関西:正倉院展(奈良国立博物館)

2016-11-04 22:44:59 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 『第68回正倉院展』(2016年10月22日~11月7日)

 今年も正倉院展に行ってきた。前日の土曜日からJR奈良駅前に宿泊。翌日、ちょっと気を抜いて、朝8時頃、奈良博に到着したら、折り返し列の最後尾くらいに並ぶことになった。そして、さらに折り返した外側の列がぐんぐん伸びていく。係員さんが気を使って、必ず二人ずつ詰めて並ばせているので、いつもより人口密度が高い気がした。

 8時50分頃、列が動き出し、どうやら待ち時間なしで会場に入ることができた。二階に上がったところで会場案内図をさっと確認する。帰ってから気がついたが、この図(PDF)、ホームページで公開されるようになったのか。ありがたい。今年の見もの『漆胡瓶』は第1会場(東新館)にあることを把握。会場内はそこそこ混んでいたが、まあ例年並みなので、心を落ち着けて、基本的に最初から見ていく。

 まず「聖武天皇ご遺愛の品々」で、象牙製の尺、鯨骨製の尺、銅鏡とその箱。板締め染めの屏風『鳥木石夾纈屏(とりきいしきょうけちのびょうぶ)』は、どことなく西域の香りを感じさせる。そして『漆胡瓶』は1998年以来、18年ぶりの出品だそうだが、私は東博の『皇室の名宝』で2009年に見ているはずである。草花や鳥・蝶・鹿などを描いた愛らしい文様は、かなり見えにくくなっており、白黒写真やエックス線透過写真のほうが、往時の華やかさをうかがわせる。重さ760グラムというのは、この大きさとしては軽い作りだろうか? 同じ重さに作ったレプリカがあれば、持ち上げてみたい。

 「献物に関わる宝物」として各種の箱や台など。イグサを編んだ楕円形の箱は弁当箱みたいだった。『縹地唐草花鳥文夾纈絁(はなだじからくさかちょうもんきょうけちのあしぎぬ)』は20センチ四方ほどの断片だが、水色地に蔓草模様と水鳥(鴨?)がプリントされていて可愛かった。『赤紫臈纈絁几褥(あかむらさきろうけちあしぎぬのきじょく)』は絣のような幾何学模様だと思っていたが、図録で拡大写真を見たら、小さな魚と水鳥が連続プリントされている! あとは管楽器など。

 第2会場(西新館)の最初の部屋は「聖武天皇一周忌斎会と法会の荘厳」の特集だった。『大幡残欠』『大幡の脚』『大幡脚端飾』等の展示品は、錦や組紐でつくられた、それ自体美しい布製品なのだが、これを頭の中で組み合わせると、途方もなく巨大な「大幡」が現れてくる。全長13~15メートルに及んだと推測されている。その他、天平伽藍の供養と荘厳に用いられた品々では、鈴鐸類(鈴、鈴形の玉)が小特集されていて面白かった。梔子形とか杏仁形とか、瑠璃玉つきの鈴というのもあるのだな。

 西新館の後半では『撥鏤飛鳥形(ばちるのひちょうがた)』3件が印象的だった。象牙を削って作った小鳥(3センチくらい)に彩色を施す。1羽は青く、2羽は赤っぽい色だった。腹の部分に2つの穴を穿ってあるので、糸か紐を通して衣服に縫い付けたのか。詳しい用途は不明だというが愛らしい。文書類は、写経所の環境改善を求める上申書が出ていて面白かった。仕事着を新しいものと交換してほしいとか、月に五日の休暇を確実に与えてほしいとか、三日に一度、薬として酒を飲ませてほしい、とか。解説によれば、下書きであることは明らかで、実際に提出されたかどうかは不明と慎重な見解である。確かに、憂さ晴らしの戯れ書きだっかもしれないなあ。

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