見もの・読みもの日記

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夏涼を感じる/江戸期の民藝(日本民芸館)

2017-06-06 23:32:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
日本民芸館 特別展『江戸期の民藝-暮らしに息づく美-』(2017年4月4日~6月18日)

 なんかこう、理屈の要らない展覧会が見たくなって、日本民藝館に行ってきた。「江戸期の民藝」というのは、ずいぶん直球なタイトルだなと思いながら館内に入る。正面玄関、階段下の左の展示ケースには塗物や螺鈿、右には素朴な染付の白磁。視線を上に向けると、踊り場の中央にも展示ケース。ここは焼き物各種。さらに上には、大きな木彫の仮面が掛かっていた。大きくてぶ厚い、見るからに重たそうな「竈面」で、たぶん人が被るためのものではなく、大きな眼を見開いて、広い厨房に睨みを利かすためのものだろう。その左右には藍染の着物。左は吉祥の熨斗柄(?)、右は蝶柄だった。

 いつものように、2階の大展示室から見始める。一瞥して、やっぱり陶磁器と布製品が多いという印象。いちばん奥に、半纏のような丈の短い着物が5点並んでいて、茶系のものが多かったので、へえ珍しい染色だなあと思って近寄ったら、すべて革羽織だった。背中に印を入れたものや、全体に絞り文様を散らしたものもあった。そのほか、三春人形、鴻巣人形などの泥人形、小さい絵馬、籠、色ガラス容器、鉄瓶など、あらゆる素材の品物が並んでいた。金唐紙の煙草入れも。筒描きの近江八景図を貼った屏風は涼しげで素敵だった。旗印屏風も楽しい。毎日見てたら、自然と覚えるだろうなあ。廊下には、泥絵や大津絵など。

 もう1室が関連展示で、司馬江漢の『巨蟹図』の掛軸仕立てや丹緑本、異時同図法で物語全体を描いた『曽我物語図屏風』など。『陣羽織図』に、白地に赤富士というデザインがあって、特攻服みたいだと思ってしまった。「朝鮮陶磁」と「朝鮮工芸」が1部屋ずつあって、取り合わせの書画も楽しめた。石造の羅漢、如来、道人像などがあり、つやつやした濃茶色を見て木造?と思うと「石」と書いてある。朝鮮半島は古い木彫仏が残っていない、と聞いたことがあるが、やっぱりそうなのだろうか。「河井寛次郎と濱田庄司」の部屋では、河井のピンク色の釉にときめく。

 1階、「明治・大正・昭和時代の陶器」では「うんすけ」「ちょか」「行火(ねこ)」「うるか壺」などの知らない用語に目を見張る。「ここ不親切よね」とこぼしていたおばさんもいたけど、説明のないのが、民藝館のいいところだと私は思っている。塩笥(しおげ)というのは、塩や味噌を入れるための小型の壷だそうだが、黒っぽい球体の側面に口が開いているものがあって、すごく気に入ってしまった。そっけなさの極地みたいで好きだ。逆に、十字の手裏剣みたいに四方に注ぎ口のついた「ちょか」には笑った。どういう発想なのか、まるで見当がつかない。

 「アフリカの造形」は、かなり珍しい特集だと思った。仮面が多く、動物の特徴を模した巨大なものもあれば、能面みたいに小さくて無表情なものもある。小さな木製の枕が、古い日本の箱枕に似ているのが面白かった。最後に「ベトナムの染織」は、北部山地や中部高原に住む民族の衣装で、濃い藍染と華やかなパターン文様の組み合わせが美しい。中国の少数民族とも共通する感じだった。

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