○東京国立博物館 特別展『華麗なる伊万里、雅の京焼』
http://www.tnm.jp/
入場待ちの列のできている、人気の『北斎展』を横目に、『伊万里、京焼』を見に行った。会場は、久しぶりの表慶館である(この夏、映画『姑獲鳥の夏』のジャパンプレミアが開催されたところ)。
この展覧会の企画を聞いたとき、近年、焼き物、特に「伊万里」にハマっている私は、やったー!ついに東博だ!!と小躍りした。昨年の出光美術館の『古九谷』とサントリー美術館の『初期伊万里』、今年に入って、戸栗美術館の『館蔵・古伊万里』シリーズ、まだ行っていないけど松岡美術館の『古伊万里』など、類似企画は数々あれど、東博なら”決定版”の「伊万里」展を打ってくれるにちがいない、と思っていたのだ。
展覧会の公式ホームページには「選りすぐりの作品約110件」とある。「選りすぐり」であることは否定しない。ただし、この数年、都内の「伊万里」「九谷」展をほぼ全て見ており、昨年暮れは、佐賀県の有田まで名品を見に行ってしまった私には、あ、これ見たなあ~という作品が多く、新しい発見は少なかった。いかんせん、数が少ない。手元のカタログによれば、昨年、出光の『古九谷』が120件、サントリーの『初期伊万里』が176件。今年の夏、戸栗美術館で行われた『館蔵・鍋島焼名品展』は、鍋島だけで110件だったことを思うと、東博には、もうちょっと頑張ってもらいたかったと思う。
いいなあ、と思った作品のひとつは、古九谷の「色絵鳳凰図大皿」。白地に五彩の鳳凰を描いたもので、輪郭線がなく、色の塊りで構成された鳳凰は、素朴なキュビズムのようだと思った。それから、柿右衛門の魅力を、ついに”発見”したのは、今回の収穫であった。「色絵傘人物図有蓋壺」は、ヨーロッパ向けに輸出する”中国陶器”として作られたものだが、どう見ても中国陶器の緊張感がない。描かれた人物も、服装は中国風だが、顔立ちはのっぺりしていて、目鼻が小さく、浮世絵の若旦那ふうである。のんびりと、素朴で脱力した風情が魅力なのだ。
後半の「京焼」では、仁清の「色絵月梅図茶壺」が必見である。灰白釉に金の雲、現在、梅の花が赤と黒で描かれているのは、当初の色彩が変化してしまったためか。さらに(別の画像で見ると)黒い月が描かれている。
この茶壷の隣に、ちょっと気になる写真パネルが飾られていた。月に梅枝の文様は、茶壷そのままなのだが、黒を背景に白銀色の月が浮き上がっているのだ。もしかして、黒釉でペアの茶壺があったのかしら? 不審に思って、会場案内のお姉さんに聞いてみたら、「色絵月梅図茶壺」の文様を、壺の底から覗いてみたという想定で、デジタル処理した画像です、という。「平成館の1階で上映しています」というので、帰りに寄ってみた。
短いビデオであるが、あっと驚くような美しい映像が見られる。これ、見逃して帰る人、多いんだろうなー。もったいない。『伊万里、京焼』の会場で、もっと宣伝すべきだと思う。
http://www.tnm.jp/
入場待ちの列のできている、人気の『北斎展』を横目に、『伊万里、京焼』を見に行った。会場は、久しぶりの表慶館である(この夏、映画『姑獲鳥の夏』のジャパンプレミアが開催されたところ)。
この展覧会の企画を聞いたとき、近年、焼き物、特に「伊万里」にハマっている私は、やったー!ついに東博だ!!と小躍りした。昨年の出光美術館の『古九谷』とサントリー美術館の『初期伊万里』、今年に入って、戸栗美術館の『館蔵・古伊万里』シリーズ、まだ行っていないけど松岡美術館の『古伊万里』など、類似企画は数々あれど、東博なら”決定版”の「伊万里」展を打ってくれるにちがいない、と思っていたのだ。
展覧会の公式ホームページには「選りすぐりの作品約110件」とある。「選りすぐり」であることは否定しない。ただし、この数年、都内の「伊万里」「九谷」展をほぼ全て見ており、昨年暮れは、佐賀県の有田まで名品を見に行ってしまった私には、あ、これ見たなあ~という作品が多く、新しい発見は少なかった。いかんせん、数が少ない。手元のカタログによれば、昨年、出光の『古九谷』が120件、サントリーの『初期伊万里』が176件。今年の夏、戸栗美術館で行われた『館蔵・鍋島焼名品展』は、鍋島だけで110件だったことを思うと、東博には、もうちょっと頑張ってもらいたかったと思う。
いいなあ、と思った作品のひとつは、古九谷の「色絵鳳凰図大皿」。白地に五彩の鳳凰を描いたもので、輪郭線がなく、色の塊りで構成された鳳凰は、素朴なキュビズムのようだと思った。それから、柿右衛門の魅力を、ついに”発見”したのは、今回の収穫であった。「色絵傘人物図有蓋壺」は、ヨーロッパ向けに輸出する”中国陶器”として作られたものだが、どう見ても中国陶器の緊張感がない。描かれた人物も、服装は中国風だが、顔立ちはのっぺりしていて、目鼻が小さく、浮世絵の若旦那ふうである。のんびりと、素朴で脱力した風情が魅力なのだ。
後半の「京焼」では、仁清の「色絵月梅図茶壺」が必見である。灰白釉に金の雲、現在、梅の花が赤と黒で描かれているのは、当初の色彩が変化してしまったためか。さらに(別の画像で見ると)黒い月が描かれている。
この茶壷の隣に、ちょっと気になる写真パネルが飾られていた。月に梅枝の文様は、茶壷そのままなのだが、黒を背景に白銀色の月が浮き上がっているのだ。もしかして、黒釉でペアの茶壺があったのかしら? 不審に思って、会場案内のお姉さんに聞いてみたら、「色絵月梅図茶壺」の文様を、壺の底から覗いてみたという想定で、デジタル処理した画像です、という。「平成館の1階で上映しています」というので、帰りに寄ってみた。
短いビデオであるが、あっと驚くような美しい映像が見られる。これ、見逃して帰る人、多いんだろうなー。もったいない。『伊万里、京焼』の会場で、もっと宣伝すべきだと思う。