漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「其キ」<箕のかたち>と「期キ」「旗キ」「棋キ」「欺ギ」「碁ゴ」

2023年03月14日 | 漢字の音符
 増補改訂しました。
 キ・その・それ  ハ部

解字 甲骨文・金文は、収穫した穀物を中にいれ、あおってカラなどを取りのぞく道具である箕(み)を描いた象形。篆文は、箕を台の上にのせた形を描く。しかし、本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)されて、やや遠い所の物をさす語や助字となった。
意味 (1)その(其の)。それ(其れ)。人や物をさす語。「其処そこ」 (2)それ。語気を強めたり、語調を整える助字。

イメージ 
 「その(仮借)」
(其・期)
 「箕のかたち・四角い」(箕・萁・基・棋・碁・旗・倛・欺・斯)
 「形声字」(麒・騏・祺)  
音の変化  キ:其・期・箕・萁・基・棋・旗・倛・麒・騏・祺  ギ:欺  ゴ:碁  シ:斯

その
 キ・ゴ  月部
解字 「月(月日)+其(その)」の会意形声。ある指定された、その月日。
意味 (1)とき。おり。決められた時。「時期ジキ」「任期ニンキ」「期末キマツ」「期月キゲツ」(①かねて決めた期限の月。②1カ月) (2)ねがう。あてにする。「期待キタイ」「所期ショキ

箕のかたち・四角い
 キ・み  竹部
 竹の箕
解字 「竹(たけ)+其(箕のかたち)」の会意形声。其は箕のかたちの象形。そこに竹をつけて竹製の箕を表す。
意味 み(箕)。穀物を中にいれ、あおってカラなどを取りのぞく道具。また、ちりとり。「箕箒キソウ・キシュウ」(ちりとりとほうき。掃除をすること)「唐箕とうみ」(木製の機械式になった箕。中国から伝わったので唐の字がつく)
 キ・まめがら  艸部
解字 「艸(植物)+其(=箕み)」の会意形声。実った大豆の茎を引き抜き、ゴザの上で棒でたたいて実を出し、これを集めて箕であおって豆を選別する。萁は豆の実を取り去った残りの茎をいう。[説文解字]は「豆の茎なり」とする。

大豆の収穫(神流町インターネット放送局)
意味 (1)まめがら(萁)。豆の実をとったあとの茎。カマドの燃料として利用した。「豆萁トウキ」(豆の茎)「萁稈キカン」(豆の茎)「豆を煮るに萁(まめがら)を焼く」(豆を兄、萁(まめがら)を弟に例え、兄弟の関係が不仲である例え)(2)おぎ(荻)に似た草の一種。箙えびらを編む材料にした。
 キ・もと・もとい  土部
解字 「土(つち)+其(四角い)」の会意形声。四角い土の壇。この上にお堂などの建物が建つので、転じて物事のもとになるもの。
意味 もとづく(基づく)。もとい(基)。「基本キホン」「基礎キソ」「基準キジュン
[棊] キ  木部
解字 「木(き)+其(四角い)」の会意形声。囲碁及び将棋で使う四角い木の盤。棊は異体字。
意味 囲碁・将棋。また、碁盤・将棋盤や碁石・駒。「棋士キシ」「棋局キキョク」(①碁盤。また将棋盤。②囲碁・将棋の局面)「棋譜キフ」(囲碁・将棋の手順の記録)「棋客キカク」(囲碁・将棋をする人。棋士)
 ゴ  石部
解字 「石(いし)+其(=棋。四角い木の盤)」の会意形声。四角い木の盤に碁石をおく遊戯。発音のゴは呉音。
意味 ご(碁)。「碁盤ゴバン」「囲碁イゴ」「碁石ゴイシ」「持碁ジゴ」(引き分けとなった碁)「碁笥ゴけ」(碁石を入れる円い器)
 キ・はた  方部
解字 「方𠂉(はた)+其(四角い)」の会意形声。旗から其をとった形は、旗のゆらめくさまを描いた象形。そこに其(四角い)をつけた旗は四角いはたの意。旗については「斿ユウ」を参照。
意味 はた(旗)。はたじるし。「旗手キシュ」「校旗コウキ」「旗艦キカン」(司令官が乗っている軍艦)
 キ  イ部
解字 「イ(ひと)+其(四角い)」の会意形声。四角い面をかぶった人。旧暦・年末の厄払いにかぶり、悪鬼を退散させるのに用いる四角い面。
意味 四角い大きな面。「蒙倛モウキ」(おにやらいをする時かぶる面。四目の者を方相、両目の者を倛という)
 ギ・あざむく  欠部
解字 「欠ケン(口をあけて立つ人)+其(=倛)」の会意形声。其は倛(鬼やらいの四角い面)の略体。欺は、面をかぶってしゃべり相手をあざむくこと。
意味 あざむく(欺く)。だます。「欺瞞ギマン」「詐欺サギ
 シ・これ・この・ここ・かく・かかる  斤部
解字 「斤(おの)+其(=棋。四角い木の盤)」の会意。木の盤の上で、斤で物をきる意だが、仮借カシャ(当て字)され、「これ・この」など、ものを指示する代名詞に使う。
意味 (1)これ(斯)。この(斯の)。ここ。「斯界シカイ」(この社会。この分野)「斯学シガク」(この分野の学問)「斯道シドウ」(この道。この分野) (2)かく。かように。「斯様かよう」 (3)音訳字。「瓦斯ガス」(gasの音訳。斯の発音は現代中国音)
音符「斯シ」で斯の音符字をまとめています。

形声字
 キ  鹿部
解字 「鹿(しか)+其(キ)」の形声。キは冀(すぐれた能力をもつ)に通じ、すぐれた能力をもつ鹿の意で、鹿に似た聖獣をいう。冀キを参照。
意味 麒麟キリンに使われる字。「麒麟キリン」(①鹿に似てさらに大きく、顔は龍に似、牛の尾と馬の蹄をもち、雄は頭に角をもつとも言われる中国の伝説上の聖獣。 ②キリン科の哺乳動物。首とあしが非常に長い。 ③「麒麟児キリンジ」とは、将来が楽しみとされるすぐれた才能をもつ少年。)
 キ  馬部
解字 「馬(うま)+基(キ)」の形声。キは冀(すぐれた能力をもつ)に通じ、すぐれた能力をもつ馬をいう。
意味 (1)すぐれた馬。駿馬。「騏驥キキ」(①すぐれて早く走る馬。騏驥ともに駿馬の意。②賢人)(2)青黒い毛色の馬。
 キ・さいわい  示部
解字 「示(神)+其(=基。もと)」の会意形声。古い字は其⇒基になっており、神が基(もと)にいる意。[説文解字]は「吉なり」とする。
意味 (1)さいわい(祺)。吉祥。「祺祥キショウ」(①さいわい。②清の同治帝の代に公布されながら、施行されなかった元号。1861年。)(2)心がおちついてやすらか。「祺然キゼン」(やすらかなさま) (3)手紙の文末に付ける語。「文祺ブンキ」「祺安キアン
<紫色は常用漢字>

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