漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「重ジュウ」<おもみがかかる>と「種シュ」「腫シュ」「衝ショウ」「動ドウ」

2023年05月07日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ジュウ・チョウ・トウ・え・おもい・かさねる・かさなる  里部 

解字 金文第一字は「人(ひと)+東(中に荷物が入った袋)」で、人が荷物をいれた袋を背負う形。荷物が重い意となる。金文第二字は人が東の上にきた形。篆文は、さらに下に土がつき人が持つ袋の重みが土にかかる意で、重い意を表す。現代字は形が変わり、千と里がつながった重になった。したがって部首は里になっている。発音は東トウが変化した、ジュウ(呉音)・チョウ・トウ(漢音)。
意味 (1)おもい(重い)。おもさ。「重量ジュウリョウ」 (2)おもおもしい「重厚ジュウコウ」 (3)大切にする。「重用チョウヨウ」 (4)かさなる(重なる)。「重箱ジュウばこ」「八重やえ

イメージ 
 「おもみがかかる」
(重・動・働・慟・衝・踵)
  重の意味(4)の「かさなる」(腫)
 「形声字」(種・鍾・董)
音の変化  ジュウ:重  シュ:種・腫  ショウ:衝・踵・鍾  トウ:董  ドウ:動・働・慟 
 
おもみがかかる
 ドウ・うごく・うごかす  力部  
解字 「力(ちから)+重(おもい)」の会意形声。重いものに力を加えて動かすこと。うごく・うごかす意。
意味 (1)うごく(動く)。うごかす(動かす)。「動画ドウガ」「「動向ドウコウ」 (2)乱れる。「動乱ドウラン」「動転ドウテン」 (3)人のふるまい。「活動カツドウ」「動機ドウキ
<国字> ドウ・はたらく  イ部
解字 「イ(人)+動(うごく)」の日本製漢字。人が動いてはたらくこと。
意味 はたらく(働く)。はたらき。「労働ロウドウ」「実働ジツドウ」「稼働カドウ」(かせぎ働く。機械を働かせる)
 ドウ  忄部
解字 「忄(心)+動(うごく)」の会意形声。身体を揺れ動かせて悲しむこと。
意味 なげく(慟く)。身もだえして悲しむ。「慟哭ドウコク」(大声をあげてなげき悲しむ)「慟泣ドウキュウ」(泣いて悲しむ)
 ショウ・つく  行部  
解字 「行(ゆく)+重(おもい)」の会意形声。重い物が行き当ること。ぶつかること。
意味 (1)つく(衝く)。ぶつかる。「衝突ショウトツ」「緩衝カンショウ」(あたりを和らげる)「折衝セッショウ」(敵の衝いてくる戈先をくじき(折)とめる。外交のかけひき) (2)つきうごかす。「衝動ショウドウ」(つきうごかすこと)「衝動買い」(その場の欲しいという気持ちだけで買ってしまうこと) (3)かなめ。大事な所。「要衝ヨウショウ」(衝(攻撃)に対し要(かな)めとなる所)
 ショウ・かかと  足部
解字 「足(あし)+重(おもみがかかる)」の会意形声。立ったとき重みがかかる足の部分。
意味 (1)かかと(踵)。きびす(踵)。くびす。「踵きびすを返す」(引き返す) (2)つぐ。後ろに付き従う。「踵接ショウセツ」(踵が接する。人が絶えまなく続いて行く)

かさなる
 シュ・はれる・はらす  月部にく
解字 「月(からだ)+重(かさなる)」の会意形声。体の細胞が過剰に増殖して、重なるようにふくらむこと。
意味 はれる(腫れる)。はれもの。「腫瘍シュヨウ」(身体の細胞が過剰に増える症状)「肉腫ニクシュ」(皮膚以外の組織の腫瘍)

形声字
 シュ・たね・うえる  禾部
解字 「禾(穀物)+重(ジュウ⇒シュ)」の形声。[説文解字]は「先に穜(うえ)て後(のち)孰(みの)る也。禾に从(したが)い重の聲(声)」とし、穀物を最初に穜(うえ)る、また蒔(ま)くタネ(種子)とする。禾(穀物)にシュ(重)の発音で、うえる(種える=穜)、タネ(種子)の意味とした。また、タネの意から、タネの種類(同じタネの仲間)の意となる。
意味 (1)たね(種)。「播種ハシュ」 (2)うえる(種える)。「種芸シュゲイ」(穀物や草木を種え付ける)「種痘シュトウ」(牛痘を人体に種えつける) (3)たぐい。「種類シュルイ」「種目シュモク」「人種ジンシュ
 ショウ・シュウ・あつめる・かね  金部
解字 「金(金属)+重(ジュウ⇒ショウ・シュウ)」の形声。ショウ・シュウとよぶ金属の器。[説文解字]は、「酒器也。金に从(したが)い重の聲(声)とする。また[同注]は、「古者(いにしえは)此の器に蓋を用い以(もっ)て酒をたくわえた。故に其の下は大きく、其の頸くびは小さい」とし、つぼ型の酒器を言った。この酒器が周代において容量の単位とされ一鍾は49.7リットルとされた。また、シュウの発音が聚シュウ(あつまる)に通じ、あつまる意がある。またショウの発音が鐘ショウ(かね)に通じ、「つりがね」の意味にもなる。
意味 (1)つぼ形の酒器。(2)周代の容量の単位。1鍾ショウ(約49.7リットル)は4釜で大容量。(3)あつめる(鍾める)。あつまる。「鍾愛ショウアイ」(愛をあつめる。非常にかわいがること) (4)かね(鍾)。=鐘。「鍾乳ショウニュウ」(鍾の表面に乳首のように突起した飾り)「鍾乳洞ショウニュウドウ」(地下の石灰岩が雨水や地下水で溶け、できた空洞)「鍾乳石ショウニュウセキ」(鍾乳洞の天井から下がる白い石。その下に石筍セキジュンができる) (4)「鍾馗ショウキ」とは、疫病神を追い払うという民間信仰の神。

鍾乳がある鍾(かね)(中国ネット「古玩珍蔵」から)
 トウ・ただす  艸部
解字 「艸(くさ)+重(トウ)」の形声。草冠がつくのでハスの根を表したとされるが根拠は不明。草冠の字は姓となることがあり、原義は董姓からか。董姓は中国の姓のうち最も古い姓の一つとされ、最初の皇帝である黄帝の末裔である高陽氏まで遡ることができるとされる。董の意味に、みはる・ただす・監督するなどがあるが、指導力のある董姓の人々の行動をあらわしたのかも知れない(私見です)。
意味 (1)ただす(董す)。とりしまる。おさめる。「董正トウセイ」(ただす。おさめ正しくする)「董督トウトク」(監督し取り締まる)「董統トウトウ」(董・統とも、全体を統括する意で、きちんと管理すること)「董事長トウジチョウ」(中国で、理事長・代表取締役のこと) (2)「骨董コットウ」とは、価値ある古道具や古美術品をいう。※中国語で「骨董グトン」と発音し、「古董グトン」とも書くことから「古い東西(品物)」を略した「古東グトン」が語源か。 (3)姓の一つ。「董仲舒トウチュウジョ」(武帝に仕えた前漢の学者)「董卓トウタク」(後漢末の将軍)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 トウ・ひがし  木部  
解字 筒状の袋の両端を縄でしばった形の象形。この袋は普段は両端が開いている袋で、荷物を入れて運ぶのに使用した。袋に荷物を詰めると両端を結び、人が背負って運んだ。この字形が「重い」という字になる。東は袋の意味で使われることなく、「ひがし」の意味に仮借カシャ(当て字)された。
意味 ひがし(東)。 
東を音符に含む字  トウ:東・棟・凍  チン:陳
音符「東トウ」を参照。
  
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