漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「矣イ」<矢が当ってとまる>と「挨アイ」「埃アイ」「欸アイ」「俟シ」「竢シ」「拶サツ」

2021年03月28日 | 漢字の音符
 イ  矢部 yǐ

解字 金文・篆文ともに「ム(以の略体)+矢(や)」の会意形声。以イは甲骨文字で人が物を手で携えたかたちで、現在「ム」で表される字体は、その略体。特に具体的な物を表すのでなく、発音「イ」を表している。従って、矢の先にム(イ)がついた矣は、矢が当たって止まった形で、その発音がイであることを示している。意味は、仮借カシャ(当て字)されて、文末につけて断定や推定の語句を表す助字として用いられる。矣が音符になるとき、矢が「あたる」、当たって「とまる」イメージがある。
意味 文末につけて断定や推定の語句を表す。(1)なり(矣)。 (2)か(矣)。 (3)かな(矣)。 (4)のみ(矣)。

イメージ
 「仮借カシャ」(矣)
 矢が「あたる」(挨・埃)
 当たって「とまる」(俟・竢)
 「アイの音」(欸)
音の変化  イ:矣  アイ:挨・埃・欸  シ:俟・竢

あたる
 アイ・おす  扌部 āi・ái
解字 「扌(手)+矣(あたる)」の会意形声。手で打ちあてる形で、相手の背中をうつ・おす意となる。
意味  (1)背中をたたく。(2)おす(挨す)。押しのけて進む。押してひらく。「挨拶アイサツ」(①おおぜいが押し合ってすすむ。②[国]安否・寒暖の言葉をとりかわす。転じて、おじぎ・返礼)(3)つづいて進む。「挨次アイジ」(あとからあとからと続いて進む)
覚え方  挨拶をまとめて語呂合わせで覚えると便利。
 てむや(扌ム矢)でアイ、て く く く た(扌くくくタ)でサツ
 アイ・ほこり  土部 āi
解字 「土(つち)+矣(あたる)」の会意形声。(強風が土にあたり)土からほこりが発生すること。空中にたちこめるほこりを言う。
意味 (1)ほこり(埃)。ちり。空中を舞う細かいちり。「塵埃ジンアイ」(ちりやほこり。また、俗世間)「埃滅アイメツ」(ほこりのように消えてなくなる)(2)俗世間。俗事。(3)地名。「埃及エジプト」(中国語発音はアイジ āi jí で、Egypt の前半の発音に当てた)

とまる
 シ・まつ  イ部 sì・qí
解字 「イ(ひと)+矣(とまる)」の会意。人が止まってまつこと。
意味 (1)まつ(俟つ)。「俟河清シカセイ」(黄河の水の澄むのを待つ)「俟望シボウ」(まち望む)「俟命シメイ」(①天命をまつ。②命令をまつ)
 シ・まつ  立部 sì
解字 「立(たつ)+矣(とまる)」の会意。立ち止まってまつこと。
意味 (1)まつ(竢つ)。=俟。まちうける。「竢望シボウ」(待ち望む)「竢門シモン」(門に待つ)「竢時シジ」(時機を待つ)「竢命シメイ」(①天命をまつ。②命令を待つ)

アイの音
 アイ・なげく  欠部 ǎi・ēi・éi・ěi・èi
解字 「欠ケン(口をあける)+矣(アイの音)」の会意形声。欠はケンの発音で口をあける形。欸は口をあけてアイと声を出し、なげくこと。
意味 (1)なげく(欸く)。ああとなげく。「秋冬緒風ショフウを欸く」(秋から冬になるときの風をなげく) (2)「欸乃アイダイ」とは(①船頭のかけごえ。舟歌。②木こりの歌)


    サツ <せまる>
 サツ・せまる  扌部 zā・zǎn
解字 「扌(手)+巛+夕」の会意。字の初形が知られておらず成り立ちは不明。
意味 せまる(拶る)。後ろから押しのける。「挨拶アイサツ」(もとは大勢の人が押しのけ合って進む意。現在は人と人との受け答え)
覚え方 「挨拶アイサツ」は語呂合わせで覚えると便利。
 てむや(扌ム矢)でアイ、てく く く た(扌くくくタ)でサツ
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


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