漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「甘カン」<口にものを含みあじわう> と 「柑カン」「疳カン」「酣カン」「坩カン」「鉗カン」「箝カン」「嵌カン」「紺コン」「甜テン」」

2022年08月04日 | 漢字の音符
 紺コンの解字を改めました。
 カン・あまい・あまえる・あまやかす  甘部

解字 甲骨文は、「口+一印」の指事文字。口の中に一で示した物を含んだ状態を表すが、うまい・あまいは後起の意味で、甲骨文字では、①地名またはその長、②祭祀名になっている[甲骨文字辞典]。篆文は[説文解字]が、「美(おいしい)なり。甘なり。五味の一と為す。」とし、うまい・あまい意味となった。現代の字形は甘に変化した。甘を音符に含む字は、「あまい・うまい」「中に物を含む」イメージを持つ。
意味 (1)うまい。あまい(甘い)。「甘旨カンシ」(うまい味)「甘酒あまざけ」 (2)こころよい。「甘美カンビ」(①あまくて味がよい。②心をうっとりさせる)「甘言カンゲン」(人の気にいるような言葉) (3)あまんじる(甘んじる)。満足する。しかたなく我慢する。「甘受カンジュ」(さからわずに受け入れる) (4)[国]あまい(甘い)・きびしくない。あまえる(甘える)・あまやかす(甘やかす)。 
参考 カンは部首「甘あまい・かん」になる。この部に属する字は非常にすくない。常用漢字では甚ジンがあるが、これは上部が甘と似ているため。甘い意では甜テンがあるのみ。なお、甚ジンは音符になる。
 
イメージ 
 「あまい・うまい」
(甘・甜・柑・疳・酣)
  「中にものを含む」(坩・拑・鉗・箝・嵌・紺)
音の変化  カン:甘・柑・疳・酣・坩・拑・鉗・箝・嵌  コン:紺  テン:甜

あまい・うまい
 テン・あまい  甘部
解字 「舌(した)+甘(あまい)」の会意。舌に感じる甘さ。
意味 あまい(甜い)。「甜瓜テンカ」(まくわうり)「甜茶テンチャ」(甘茶)「甜菜テンサイ」(さとう大根)
 カン・みかん  木部
解字 「木(き)+甘(あまい)」の会意形声。甘い実のなる木。みかんの一種をいう。
意味 みかんの一種でやや小さなもの。こうじ(柑子)。みかん。「蜜柑ミカン」(温州ミカンなどで知られる日本の代表的ミカン)「柑橘類カンキツルイ」(ミカン類の常緑樹の総称)
 カン  疒部
解字 「疒(やまい)+甘(あまい)」の会意形声。甘いものなどの食べすぎから起きる子どもの胃腸病。また、カンの音から癇カン(幼児のひきつけ)の意にも用いられる。
意味 (1)小児に起こる慢性の消化器障害。「脾疳ヒカン」(小児の疳の一種で、慢性消化器障害) (2)[国]かん(疳)。小児の神経症の一種。ひきつけ・夜泣きなどをともなう。「疳の虫」(日本では幼児の疳は、中にいる虫によって起きると信じられ、虫封じなどのまじないが行われた)
 カン・たけなわ  酉部
解字 「酉(さけ)+甘(うまい)」の会意形声。酒がうまいとき。
意味 (1)たけなわ(酣)。ものごとのまっさかり。「酣春カンシュン」(春たけなわ) (2)たのしむ。酒をのんで楽しむ。「酣酔カンスイ」(十分に酔う)

中に物をふくむ
 カン・つぼ  土部
解字 「土(つち」+甘(中に物をふくむ)」の会意形声。中にものを含みいれる土のつぼ。特に、金属を入れて溶かす耐火性のつぼをいう。
意味 つぼ(坩)。るつぼ。「坩堝カンカ・るつぼ」(①るつぼ。②興奮・熱狂の場のたとえ。③種々のものが入りまじった状態のたとえ)
 カン・はさむ  扌部
解字 「扌(て)+甘(=坩。つぼ)」の会意形声。つぼを手ではさむこと。
意味 (1)はさむ。手ではさむ。 (2)(口を手ではさむ意から)つぐむ。口をとじる。
 カン・ケン  金部
解字 「金(金属)+甘(=拑。はさむ)」の会意形声。金属製のはさむ道具。
意味 (1)かなばさみ。「鉗子カンシ」(はさみの形をした医療器具) (2)くびかせ。「鉗徒ケント」(首かせをはめられた囚人)
 カン・はさむ  竹部
解字 「竹(たけ)+拑(はさむ)」の会意形声。竹の棒ではさむ意だが、竹にかかわらず広くはさむ意となる。口をつぐむ意は、拑にもあるが、慣例により「箝」が使われることが多い。
意味 (1)はさむ(箝む)。 (2)自由をうばう。「箝制カンセイ」(自由にさせないこと) (3)とざす。口をつぐむ。口に竹片をはさませて声をださせない。「箝口カンコウ」(口をつぐんで物を言わない)「箝口令カンコウレイ」(ある事柄について発言を禁止する命令)
 カン・ガン・はめる  山部
解字 「甘(=拑の略体。手ではさむ)+欠(口をあける=あな)」の会意形声。「甘+欠」は、手ではさんだものを、あなにはめることで、はめる意。これに山がついた嵌は、山中のくぼみ(あな)の意となる。現在は、山と無関係の「はめる」意で使われることが多い。
意味 (1)山中のくぼみ。谷の深いさま。ほろあな。「嵌谷カンコク」(①山のほら穴。②深い谷) (2)はめる(嵌める)。はまる。くぼみに押しこんではめる。「嵌入カンニュウ」(はめこむ)「象嵌ゾウガン」(かたちをはめ込む意。はめこみ細工。=象眼)
 コン・カン  糸部 
解字 「糸(いと)+甘(中に物をふくむ)」の会意形声。[説文解字]に「帛きぬの深青にして赤色を揚ぐるもの也」とし、深い青に赤色を含ませた色とする。また、「釈名シャクミョウ」(後漢)は「紺は含なり。青にして赤色を含むなり」とし、いずれも青色の染料に赤色を含ませた色としている。これが初期の紺色であった。
 現在の日本では、紫がかっている暗い青を指し、藍色系統では最も深い色とされている。

 日本の紺色(「色彩図鑑・紺色」より
中国の茄子の色が本来の紺色
  

中国のネット検索画面から。赤みを帯びた茄子を選んだ。
 現在、中国の辞書では「すこし紅を帯びた深い青」または「赤味がかった黒色」と書かれており、例として「茄子紺」とあり、茄子の色が紺色に例えられている。
意味 (1)こんいろ(紺色)。紫がかった濃い青色。「濃紺ノウコン」「紫紺シコン」(紫がかった紺色)「紺碧コンぺキ」(真夏の日差しの強い青空の色のような深く濃い青色。碧もあおい意) (2)紺色に染める。「紺屋こうや・こんや」(藍染を職業とするもの。後に一般に染物屋の意)「紺屋町こんやまち・こうやまち」(紺屋・染物屋が集まっている町)
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



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