ワンちゃんのことなど。

数日前の午後のことです。
ＪＲ駅構内で、犬を連れた高齢の男性を見かけました。
小さなワンちゃんが二匹、洋服を着て、ウバ車に乗せられていたのです。
二匹とも、メガネをかけていましたので、思わず振り返ってしまいました。
“えっ、近視、遠視？”
犬の種類は分かりません。
かわいい、ちっちゃな二匹です。
兄弟でしょうか。

１１月に入って、晴れていても戸外の空気は冷たくなりました。
ワンちゃん達は、暖かそうにくるまれて、ウバ車に乗っていました。
“犬って暑がりじゃなかったっけ”
私は、やや非難めいた思いで眺めました。

リボンや、上着をつけた愛犬と一緒に散歩をしている人の姿は、時々見かけます。
でも、ウバ車に乗って、メガネまでかけているワンちゃんの姿に接したのは初めてでした。

愛犬家にとっては家族の一員なのでしょう。
可愛いらしい洋服を着せ、おしゃれをさせて、街へ出かけて来たのでしょう、きっと。

数日前に、金子みすゞ展を見て来たせいでしょうか。
「犬」というタイトルの詩を思い出しました。

　　『犬』
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金子みすゞ
　　うちのだりあの咲いた日に
　　酒屋のクロは死にました。

　　おもてであそぶわたしらを
　　いつでも、おこるおばさんが
　　おろおろ泣いて居りました。

　　その日、学校でそのことを
　　おもしろそうに、話してて

　　ふっとさみしくなりました。

家に戻り、少々、揶揄を含んだ笑い話の様に、「メガネをかけた犬」の話を家人にしたのです。
でも、犬を連れていた高齢の男性は、少し淋しげだったかも…………。

そんな風に思い返してみましたら、私も、みすゞの詩の様に、
〈ふっとさみしくなりました〉。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〈ゴマメのばーば〉