散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

スコットランドの独立から大英帝国の黄昏へ~EU離脱・英国民投票の後

2016年06月25日 | 国際政治
様々な論評が賑わうなかで、「スコットランド民族党 独立問う住民投票視野に協議へ」とのニュースも流れている。スコットランドでは62%がEU残留であったからだ。
従って、一昨年のイギリスからの独立を問う住民投票から賛否が変化する可能性があるとの見方が大きくなるだろう。スコットランドの独立=EU加盟は現実の危機だ!勿論、北アイルランドへの波及も容易に想像がつくから、大英帝国は自ら分裂の種を蒔いたことになる。

日本の中では、昨日の急激な円高(一時99円)と株安(日経平均1286円安)が参院選挙運動も絡んで大きなニュースであった。しかし、具体的には何も変化していない状況では、通貨価値、株価の急激な変動も騒ぎ過ぎなのか、投機筋の仕掛けなのか、と筆者は感じる。

逆に、株とは無縁の一般庶民は、昨日の騒動の中に、静かな生活の上空を顔の見えないモンスターたちが利益を漁って虚業を操っている姿を垣間見て、グローバル世界を感じとっているように思われる。

それはジョージ・オーウェルが言うように、鯨の腹の中で現実の混沌とした状態から隔離されて暮らしたいとの考えだ。一方、そのためには、オーウェルが指摘するように、すべてをありのままに受け入れる態度が必要になる。

それもできない。そこで、機会があるごとに反乱を起こす、例え、ポピュリズムと言われようとも。今回の離脱派には、そんな心境も潜んでいるであろう。

閑話休題。様々な論評の中で、「EU崩壊は杞憂、大英帝国分裂」(唐鎌大輔、ロイター2016/6/25)に注目する。以下にその内容を示す。

<今後の英国の行動>
脱退を通知した後、以下のリスボン条約50条に沿って離脱手続を進める。
「欧州理事会(=EU首脳会議)における全加盟国の延長合意がない限り、脱退通知から2年以内にリスボン条約の適用が停止される」。従って、
2018年6月が重要な節目、英国はEUとの「新関係」を交渉し、確定させる。

英国は、単一市場へのアクセスを一部諦めつつ、EUからの介入を遮断した上で、交渉によってはうまく付き合っていける余地を残すカナダのように、包括的経済貿易協定(CETA)をEUと締結する道を探る公算が大きい。

しかし、オバマ米大統領は米国とのFTA交渉に関し、離脱した英国がEUより優先されることはないと、…最悪の場合、英国はEUと特別な互恵関係を結べず、世界貿易機関(WTO)ベースの貿易関係、最も基本的なルールの適用だけになる。英国はEUに対する義務ない、一方、巨大な単一市場からメリットも受けない。
2020/5の英国総選挙では、「EU離脱の評価」が争点になる。

<EUの対応―今後2年間では、英国への手加減はなく、厳しい姿勢>
EU側は「離脱の連鎖」の懸念に先ず対応すること。来年以降、春・仏大統領選挙、秋・独連邦議会選挙!右派ポピュリズムの「追い風」を防ぐための立場を貫く。
英国に都合の良い協定は第2、第3の離脱候補に口実を与える。従って、「カナダモデル」のシナリオは難しい。

<英国経済への影響>
対英直接投資の減少、対英証券投資の減少は不可避である。欧州経済領域(EEA)、欧州自由貿易協定(EFTA)からも距離を置く場合、共通関税、単一市場ルールに絡んだメリット等を喪失し、英国から民間企業が流出するリスクは高まる。格付け会社が離脱を理由に英国債を格下げした場合、金融機関の資金調達コスト上昇に直結し、国際金融市場の懸念材料となる。

<為替相場への影響―「政治同盟の後退=ユーロ安」ではない>
G3通貨に関しては「円>ドル>ユーロ」の強弱関係が続く。英国のEU離脱により、ドルの年内利上げは完全に消え、円高の確度は一段と高まった。当面、円安反転はなく、7―9月期にドル円相場は95円程度で違和感はない。

欧州統合プロジェクトにとって、今回の英国離脱は史上最大の失敗であるが、結局は米国の利上げが頓挫する中で、ユーロ相場は底堅さを維持する。
世界最大の経常黒字と高めの実質金利というユーロの地力の強さは英国離脱後も変わるものではなく、通貨分析の上では明らかな買い材料になる。
ユーロ相場はドイツを中心とする残された加盟国の今後の行動による。「共通通貨圏から脱落者が出るたびにドイツマルクに近づく」という柔軟な発想を持ち、相場を見通したいところだ。


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