散歩から探検へ~政治を動かすもの

自己認識の学・永井陽之助の政治学を支柱に、自由人による主体的浮動層の形成を目指し、政治状況の認識・評価・態度を語ります。

過剰な力を持った中国の対外戦略~南シナ海問題は華僑のアナロジーか

2015年12月04日 | 国際政治
かつて英国は七つの海を支配していた。
日露戦争は、韓国の争奪戦であるが、その一面、日本海の争奪戦でもあった。日本海軍は旅順港のロシア艦隊を黄海海戦で破り、ウラジオストック港へ向かうバルチック艦隊に日本海海戦で壊滅的打撃を与える。日清戦争の勝利によって、獲得した台湾を含め、東アジアの海は日本が支配することになる。

一方、その時代には、米国がフィリピンを植民地として進出、太平洋戦争では、ミッドウェイ海戦以降、日本へ向けて島々を攻略、空襲から原爆投下を経て日本が降伏後、沖縄島を軍事基地として広く太平洋を支配し、今日に至っている。

結局、中国は沖縄及び米国第7艦隊によって封じ込まれている、と感じるのは当然である。毛沢東の革命期におけるゲリラ支援等によって、「米国への挑戦」を試み、その後、小平路線に転換、経済力も飛躍的に伸び、今後は米国を追い抜く勢いを示しているからだ。

中国は、ここで改めて、「米国への第2の挑戦」を仕掛けているのが現状なのだ。海軍・空軍の増強が進み、軍の発言力も大きくなっているはずであり、特に海洋戦略には習近平政権も無視できない存在であろう。

今回の“南シナ海問題”は米国の封じ込めを受けての対抗というより、自らが過剰な力を持ち、世界の中心的役割を果たすという自信がその基盤にあるように感じる。一方、その戦略は伝統的な中国の対外観に基づき、その現代版であった毛沢東の共産革命戦略を引き継でいる様に思える。その結果は“膨張”だ。

しかし、過剰な力とは、必ずしも上部の指導者だけの感じ方とは思えない。漲るエネルギーの発露は民衆レベルでも対外的に発揮されるようだ。
それを筆者が感じたのは「中国漁船サンゴ密漁問題」の時だ。2014年に小笠原諸島と伊豆諸島周辺の日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で、中華人民共和国の漁船によりサンゴが大規模に密漁された問題だ。

以下、ネット記事による。
小笠原諸島の周辺海域でのサンゴは希少な宝石サンゴであり、背景に中国周辺海域での密漁による資源の枯渇と、中国国内での規制強化と価格高騰がある。上記の大規模密漁は、中国の船主が日本近海で大量のサンゴを密漁し、高額で売った話が広まったことにあるという。

該当海域にサンゴ密漁船と見られる中国漁船は最多で200隻確認(2014/10)されたとのことだ。それまで、日本は摘発せずに漁船に警告をして領海から追い出す措置に留めていた。しかし、以降は巡視船を大幅に増勢し、積極的に摘発する方針に転換した。外務省も以下に示す資料を提示し、中国へ警告している。


  外務省資料

集団的エネルギーが一攫千金を求めて発揮する様は、中国の民衆的力を示す。
おそらく歴史的には、海外に移住して拠点を形成した華僑に代表されるものと同じに感じる。華僑とは本籍地を離れて異国を流浪する華人の意とのことだ。

中国本土以外の華僑・華人人口の合計は、台湾・香港・マカオに2,700万人、その他世界に2,300万人(2,000万人はアジア)である。合わせて5,000万人程度だという。(1980年頃のデータ、20~30年後の2010年には7,000万人)。
(出典は若林敬子「中国人口超大国のゆくえ」岩波新書(1994))

この民衆的力は結局、膨張させる以外にない。それは海外に拠点形成をして落ち着く。現在、海軍力を制御する象徴的な事象が“南シナ海問題”なのだ。人口島を拠点とする発想だ。であるなら、米国も中国全体を相手にする意識を持って、グローバルな視野で対応する必要がある。

      
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