米国の州議会で「非難決議」が出され、慰安婦像、記念碑が建立されている。これに対し、在住の日本人が議会の公聴会でその設置に明確な反対の意見表明をし、あるいは設置を阻止したことが報告されている。
一方、在米知識人で米国及び日本の社会問題、双方国の関連等を幅広くレポートしている冷泉彰彦氏は「従軍慰安婦問題と日米関係、一つの提言」において、次の様な見解を述べている。
米国の州議会での「非難決議」、或いは地域レベルでの像・碑の設置は、全国ニュースでは取り上げられていない。単に市町村、州での行動である。自らの住むニュージャージー州の場合、州上院が「決議」を４０対ゼロで可決、州内のパリサイドパーク町に「記念碑」ができた。しかし、全国世論における対日感情が悪化していることは全くない。騒ぐのは「韓国系活動団体」とそれに反対する「日本の右派」だけである。しかし、今後日本の対応が間違えれば、問題になる。
自らの居住地の州議会が「非難決議」を可決しても特に意に介さず、一方、橋下徹市長の発言を「間違った対応」と言う理由の中に、氏の米国及び日本の社会に対する基本的な見方が表れて興味深い。
冷泉氏は次の様に言う。米国にとって「古い日本」は「最も忌まわしい敵」、一方、戦後の「新しい日本」は最も近く、親しみのある友好国だというのが共通理解であり、「悪しき古い日本」と「親しみのある新しい日本」は、米国の政府と世論においては驚くほど明確に区別されている。
それは、戦後、米国が日本を占領し支配する中で、日本を変えることに成功したという「手前味噌」ではなく、戦後の日本が振舞ってきた平和志向の行動パターンや、ソフトパワーによる。
しかし、これは「米国は正義の国であり、戦後の日本が米国の庇護のもと、その正義を認め、与えられた憲法を逸脱しなかったことは、米国の意にかなったこと。」と言っているのと同じだ。“善悪二元論”の世界観で、戦前の「古い日本」は悪、戦後「米国」に倣った「新しい日本」は善、更に「善＝米国の正義」なのだ。
オバマ大統領はビンラディンを殺害し、「正義は達成された」と言った…これにはビックリ仰天したが…敵は“絶対の悪”であり、この世界から一掃されるべきとの考え方である。既に、ルーズベルト／トルーマン大統領は原爆投下の計画／実施を決定、「正義の戦争」を遂行し、マッカーサー元帥は戦争能力保持を否定し、「正義の憲法」を策定した。「正義」は米国自由主義のイデオロギーなのだ。
『「米国の戦争観」と「正義の戦争」20110507』
ここでの問題は二つ、即ち、日米それぞれが抱えている。
先ず、政治事象の中で「悪しき問題であるか」を“米国”が決めようとすることだ。自らが不愉快に感じ、理解できないことを悪しき問題としてしまう。冷泉氏が述べる様に、内政干渉のはずだが、占領時代の考え方を今でも持っているのだろうか、「価値観を共有するパートナー」という理由付けで通用させようとする。
一方、“日本”では悪しきもの「軍国主義」「海外侵略」、善きもの「戦後改革」「経済成長」は異論がないと思われる。しかし、個々の具体的問題は議論も賛否も様々だろう。だが、問題は「憲法改定、特に第９条の是非」に収斂することだ。先の衆院選挙の際も、世論調査では拮抗した形で意見は割れている。
従って、すべての事象が改憲是非から色分けされ、個別具体的な調査・議論等へ展開されないのだ。更に、橋下氏が「慰安婦問題」を通してチャレンジした、国内だけに通じ、外国に対して閉鎖的な「黙殺文化」が米国との対話を阻んでいる。その結果、米国側の一方的な「悪しき問題」の規定が通用するようになる。
『外国に対する「黙殺文化」と直截な翻訳表現(4)130618』
冷泉氏は米国自由主義の考え方を受入れ、従軍慰安婦の問題は「新しい日本」と「古い日本」の区分けがされていないからだと言い、「悪くしき過去」の名誉回復の必要性に疑問符を投げる。しかし、橋下氏は、無い事まで故意に有った事に拡大し、それを「公的な場」に晒すことは、「現在の日本」を侮蔑する行為にもなると感じているのではないか。反対活動は「現在の日本」への誤解を解く行為なのだ。
更に、氏は「現在の日本」の女性の人権・名誉を改善することを提案している。それは結構なことであるし、現在もそれなりに施策を実施しているであろう。その主張とは別に、冷泉氏には、自らの住んでいる地域において、「現在の日本」を侮蔑する行為を阻んで頂きたいものだ。
一方、在米知識人で米国及び日本の社会問題、双方国の関連等を幅広くレポートしている冷泉彰彦氏は「従軍慰安婦問題と日米関係、一つの提言」において、次の様な見解を述べている。
米国の州議会での「非難決議」、或いは地域レベルでの像・碑の設置は、全国ニュースでは取り上げられていない。単に市町村、州での行動である。自らの住むニュージャージー州の場合、州上院が「決議」を４０対ゼロで可決、州内のパリサイドパーク町に「記念碑」ができた。しかし、全国世論における対日感情が悪化していることは全くない。騒ぐのは「韓国系活動団体」とそれに反対する「日本の右派」だけである。しかし、今後日本の対応が間違えれば、問題になる。
自らの居住地の州議会が「非難決議」を可決しても特に意に介さず、一方、橋下徹市長の発言を「間違った対応」と言う理由の中に、氏の米国及び日本の社会に対する基本的な見方が表れて興味深い。
冷泉氏は次の様に言う。米国にとって「古い日本」は「最も忌まわしい敵」、一方、戦後の「新しい日本」は最も近く、親しみのある友好国だというのが共通理解であり、「悪しき古い日本」と「親しみのある新しい日本」は、米国の政府と世論においては驚くほど明確に区別されている。
それは、戦後、米国が日本を占領し支配する中で、日本を変えることに成功したという「手前味噌」ではなく、戦後の日本が振舞ってきた平和志向の行動パターンや、ソフトパワーによる。
しかし、これは「米国は正義の国であり、戦後の日本が米国の庇護のもと、その正義を認め、与えられた憲法を逸脱しなかったことは、米国の意にかなったこと。」と言っているのと同じだ。“善悪二元論”の世界観で、戦前の「古い日本」は悪、戦後「米国」に倣った「新しい日本」は善、更に「善＝米国の正義」なのだ。
オバマ大統領はビンラディンを殺害し、「正義は達成された」と言った…これにはビックリ仰天したが…敵は“絶対の悪”であり、この世界から一掃されるべきとの考え方である。既に、ルーズベルト／トルーマン大統領は原爆投下の計画／実施を決定、「正義の戦争」を遂行し、マッカーサー元帥は戦争能力保持を否定し、「正義の憲法」を策定した。「正義」は米国自由主義のイデオロギーなのだ。
『「米国の戦争観」と「正義の戦争」20110507』
ここでの問題は二つ、即ち、日米それぞれが抱えている。
先ず、政治事象の中で「悪しき問題であるか」を“米国”が決めようとすることだ。自らが不愉快に感じ、理解できないことを悪しき問題としてしまう。冷泉氏が述べる様に、内政干渉のはずだが、占領時代の考え方を今でも持っているのだろうか、「価値観を共有するパートナー」という理由付けで通用させようとする。
一方、“日本”では悪しきもの「軍国主義」「海外侵略」、善きもの「戦後改革」「経済成長」は異論がないと思われる。しかし、個々の具体的問題は議論も賛否も様々だろう。だが、問題は「憲法改定、特に第９条の是非」に収斂することだ。先の衆院選挙の際も、世論調査では拮抗した形で意見は割れている。
従って、すべての事象が改憲是非から色分けされ、個別具体的な調査・議論等へ展開されないのだ。更に、橋下氏が「慰安婦問題」を通してチャレンジした、国内だけに通じ、外国に対して閉鎖的な「黙殺文化」が米国との対話を阻んでいる。その結果、米国側の一方的な「悪しき問題」の規定が通用するようになる。
『外国に対する「黙殺文化」と直截な翻訳表現(4)130618』
冷泉氏は米国自由主義の考え方を受入れ、従軍慰安婦の問題は「新しい日本」と「古い日本」の区分けがされていないからだと言い、「悪くしき過去」の名誉回復の必要性に疑問符を投げる。しかし、橋下氏は、無い事まで故意に有った事に拡大し、それを「公的な場」に晒すことは、「現在の日本」を侮蔑する行為にもなると感じているのではないか。反対活動は「現在の日本」への誤解を解く行為なのだ。
更に、氏は「現在の日本」の女性の人権・名誉を改善することを提案している。それは結構なことであるし、現在もそれなりに施策を実施しているであろう。その主張とは別に、冷泉氏には、自らの住んでいる地域において、「現在の日本」を侮蔑する行為を阻んで頂きたいものだ。
