ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

輝ける女たち

2008年01月22日 | 映画レビュー
 人間関係がややこしすぎる! 登場人物の血縁関係を把握するまでにだいぶ時間がかかってしまったわ。おまけにやっと納得した人間関係にも疑惑の目が…。わたしは最後まで疑ってたからね。

以下、ネタバレぎみに展開します。未見の方はご注意。「ネタバレが絶対嫌」な方は読まないでください。



 ミナミフランスはニースの下町にある古いキャバレーが舞台だけあって、そこで繰り広げられるショーがどこか田舎じみて垢抜けない。でもそのイモいところがなんとも楽しげで懐かしい香りがしていいのだ。巻頭の、歌って踊るシーンなんて、ワクワクしてしまった。

 キャバレー「青いオウム」のオーナー、ガブリエルが急死した。彼は女装趣味の変わった老人だったが、アルジェリアから流れてきた15歳の少年だったニッキー(ジェラール・ランヴァン)を拾って親代わりに育て、立派なマジシャンとして独り立ちさせた。そのニッキーの二人の元妻がアリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)とシモーヌ(ミュウ=ミュウ)だ。今は二人とも離婚して、ニッキーは独身中年男。青いオウムの売れっ子歌手レア(エマニュエル・ベアール)にぞっこんで、なんとか口説こうとしている。そんなニッキーの息子と娘もガブリエルの葬儀のために集まってきた。二人ともガブリエルを「おじいちゃん」(または「おばあちゃん」)と呼んで親しんでいたのだ。

 やがてガブリエルの遺言状が公開され、キャバレー青いオウムは存続の危機に瀕する…


 愛憎が錯綜していそうな男女2人ずつ。じいさんのガブリエルと、息子同然のニッキー、その二人の元妻。それに加えてニッキーの子どもたる異母兄妹ニノとマリアンヌ。この合計6人の男女の関係がすっきり観客に理解できるまでが大変。なにしろガブリエルとニッキーには血縁関係がなくて、さらにニノとマリアンヌは異母兄妹で、その母親達はどちらもニッキーのことをそれなりに愛していてかつ……というややこしい相関図。

 異母兄妹の仲の良さというか確執というか、二人とも極めて美しいのだけれど、兄のほうがゲイなもんだから、兄と妹で同じ男を取り合いしたりして…という、さらに加えてややこしいお話が展開する。で、親の世代の4人に関しては絶対なんかあるぞと思っていたけれど、案外すんなり関係は暴露されてなんということもなく収まった。それでもわたしは疑っていました、絶対ニノとマリアンヌは二人ともガブリエルの子どもに違いない!

 まあこういのがおフランス映画なんでしょうか、とにかく恋愛に関しては極めて個人主義的で、カトリックの国のはずなのになぜか脅迫的な倫理観は希薄で、みなさん好き放題やってください、というノリ。物語の収束点が全然見えないってところが混乱の極みなんだけど、こういうふうに一見すっきりさせたふりして実はいっぱい秘密を残したたまま終わるっていうのがフランス風におしゃれなのかもね。

 中年の恋愛と再生という点で見ればわたしには楽しめたけど、この映画を若者が楽しめるかどうかは不明です。

 ニノ役のミヒャエル・コーエン、ちょっとキアヌ・リーブス似のイケメンで、彼が美しいからこんなややこしい話も退屈せずに見ることができた。ミヒャエルくん、素敵っ。

 「青いオウム」で繰り広げられる芸はちょっと素人っぽくて苦笑しながら見てしまった。特にエマニュアル・ベアールの歌はド素人丸出しで、恥ずかしい。あれのどこが「素晴らしい!」んだか?!(レンタルDVD)

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LE HEROS DE LA FAMILLE
フランス、2006年、上映時間 103分
監督・脚本: ティエリー・クリファ、製作: サイド・ベン・サイド、脚本: クリストファー・トンプソン 音楽: ダヴィド・モロー
出演: ジェラール・ランヴァン、カトリーヌ・ドヌーヴ、エマニュエル・ベアール、ミュウ=ミュウ、ジェラルディン・ペラス、ミヒャエル・コーエン、クロード・ブラッスール