採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

輪切り獅子柚子甘煮(お友達作)

2023-03-28 | ■おともだちの味研究

ブログ友カノンさんから、スペシャルな獅子柚子甘露煮を頂いたのでご紹介します。

カノンさんはなんと、ブログ歴18年。
お料理レシピにとどまらず、いろいろなことを調べて記録して、すばらしい蓄積です。

早速写真を。

輪切り獅子柚子甘露煮

獅子柚子、どーん!
カノンさんのブログ記事によると、煮詰めているところでコゲかけて煙が出てしまったのだそう。

例年は、そこそこ煮詰めて、そのあと乾かしてピールの状態にして、更にチョコをかけたりして加工されているのですが、今年はコゲたこともあって、この柔らかい状態で食べてみたところとっても美味しいので、これを完成形にしたとのこと。


輪切り獅子柚子甘露煮

一枚ずつ袋詰めして下さって、おすすめの食べ方の説明書も。
(実は食パンもセットで頂いてしまいました。
  スワンベーカリーの角食パンです。どんどこ食べ進んでしまって、写真撮りそびれた!)

輪切り獅子柚子甘露煮

何しろ見た目が豪華!(豪快?)。
大きな丸い獅子柚子の輪切りで、厚みもたっぷりです。
で、乾かしたピールとは違い、とっても柔らかいのです。
ピールにすると、ペクチンが多い獅子柚子は全体的にしっかりプリンと硬くなりますが、この状態はじょうのうも皮もとろけるよう。
ぱくりと一口食べると、相当の分量の甘露煮が口に入ることになりますが、甘さも控えめになっているので甘すぎないです。

(この写真のものはコゲはないですが、少しコゲ色があるくらいの方が、カラメル風味で美味しいです)
甘すぎないので、6枚切りではなく、8枚切りくらいの薄い食パンでも(味の比率的に)問題ないかもしれません。(8枚切りくらいの薄いのは、サクサク感が増しますよね。)

スワンベーカリーの食パンがまた、しっとりして、格別のきめ細かさです。
(カノンさんは普段これを召し上がっていて、他のは知らないとのことですが、いや、これはなかなかない美味しさ)

油脂は、やっぱ無塩バターを薄~くスライスして載せるのが合うかな~。(私はトーストにバターを「塗る」のではなく「載せる」派なのです)


「あんぐ」と食べると、トーストの香ばしさと獅子柚子の香りがいっぱい。
幸せ~。

カノンさん、とっても美味しいものを本当にありがとうございました☆

コメント (2)
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シャーナーメ:9.イランとトゥランの戦いの始まり(下)

2023-03-27 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

この後半は、場面があちこち移って、なかなか興味深い展開です。
この後は、ロスタムの馬探しとか、もうちょっとわかりやすい物語が出てきますので、
これに懲りずまた読んで下さい。

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9.イランとトゥランの戦いの始まり(下)
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■登場人物
《イラン側》
マヌチフル:イラン王ファリドゥンのひ孫、イラジの孫。兄達(サルムとトゥール)がイラジを殺した敵をとってイラン王位を継いだ。Manuchehr
ノウザル:マヌチフルの息子 Nozar / Nowzar/ Naudar
カレン:イラン軍最高司令官
トゥースとゴスタハム:武将。ノウザルの息子。Tus  Gostaham/Guzhdaham
ザール:サームの息子でザボレスタンの領主。イラン防衛の要。
ミフラーブ:ザボルの支配下のカボルの領主でザールの義父。一時的にザボルの城代。

《トゥラン側》
パシャン:トゥールの孫で、トゥランの将軍。Pashang。父はザドシャム/ ザダシュム/ Zadashm(トゥールの子)。兄弟に、ヴィセViseh がいる。
アフラシヤブ:パシャンの息子。ここでは長男とした。Afrasiab / Afrasyab
アグリラス:パシャンの息子。ここではアフラシヤブの弟とした。Agriras 。
ガルシワズ:パシャンの息子。ここではアフラシヤブの弟とした。Garshivaz / Garsivaz 。
ヴィセ:トゥランの武将。パシャンの弟。Viseh 
バルマン:トゥランの武将。ヴィセの息子。兄弟にピラン、ホウマンがいる。

■概要
ノウザル王を捉えたアフラシヤブとヴィセは、バルマンとカレンが戦ったことを知りました。その戦場に来て、大勢のトゥラン兵とバルマンの死を知ったヴィセはカレンに追いつき復讐戦をします。しかしカレン軍は強く、ヴィセ軍は多数の将兵を失い退却します。
一方で、ザボレスタンの都ザボルにもトゥランのシャマサスとカズバランが攻め入ろうとしていました。
ザボル城代ミフラーブの機転により時間稼ぎをし、ザールの軍はカズバランを斃し、シャマサスを退けます。
退却途中のシャマサスは、カレンの隊と出会い、ここでも戦って、這う這うの体で敗走します。

バルマンの死を知ったアフラシヤブは復讐のためノウザルを斬り捨てますが、ノウザルと同行して捕虜になった一行はアグリラスの助言により殺さず、幽閉することにしました。

ザールはノウザル王の復讐戦を企図しますが、捕虜はアフラシヤブの更なる報復を恐れ、寛容なイグリラスと手を結びザールにもその作戦を伝え、平穏裡にザールの軍に引き渡してもらうことに成功しました。
しかしこれを知ったアフラシヤブは激怒し、弟イグリラスを殺してしまいます。

ノウザルの後には高齢のザヴが王位につきました。
干ばつと飢饉で戦線は膠着し、トゥランとイランは講和を結び、トゥランはオクサス川の対岸に戻りました。

ザヴの治世の5年間、そして次の王ガルシャスプの治世の9年間は戦争はありませんでしたが、ガルシャスプの死後、トゥランが再び動きました。トゥラン王パシャンは王子アフラシヤブを再び送り込み、イラン王位奪取を試みます。
防衛の主力となるザボレスタンの領主ザールは、自分の老いのため、息子ロスタムに戦わせることを提案します。そのためにも相応の武具、そして馬を手配する必要があるのです・・・。

■地図
これまで見て見ぬふりができた地名ですが、今回ばかりはこの地名の羅列を何も分からず読むのはあまりにもつらいので、いくつかの資料を見つつ、ざっくりとした位置関係が分かるような模式図マップを作ってみました。
「アフラシヤブ×ノウザル」など対戦者名がある場合は、先に書いた方が北側、後に書いた方が南側のイメージです。(イラン側とトゥラン側、色分けした方がよかったかな?)

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/b9/ba237d910198efb6d194cd1c67196ce2.jpg
※地名がでてきた場合、それが町・都市と思う(しかない)のですが、レイとパースは、もしかしたら「○○地方」「みちのく」「上方」のような意味かもしれません。(もやは理解には絶望的です)
※今回、アフラシヤブがレイで王冠を頂いたので王都レイ、としましたが、違うかも。
イラン王族の子女はパースにいたようで、レイが政治の中心地?で、パースは、別荘?何? 夏の都と冬の都、とかあるのかなあ。

■ものがたり

9□□息子の死を知ったヴィセとカレンの戦い□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

ヴィセは兵を率いて出発したところ、カレンと包囲軍の闘った場所に来ました。無数のトゥランの戦士が倒れており、息子バルマンもその中にいました。旗は破れ、太鼓は倒れ、胴衣はチューリップのように赤く、顔は血で朱に染まっていました。
[パースまでたどり着いていたカレンは]ヴィセの隊が自分達を追撃していることを知り、早馬をザヴォレスタンに送り、残りの兵と共にパースから平原に出て待ち受けました。砂塵の中から黒い旗が浮かび上がり、その先頭にいるのはトゥラン軍司令官ヴィセです。両軍は互いに前進し、兵の中央からヴィセが呼びかけました。
「イラン王はもはや我らの手にある。カヌジからザヴォレスタンの国境まで、そこからボストとカボルに至るすべての土地もわれらのものだ。どこに逃げていくのかね。」
カレンは答えました。
「私は恐怖や噂のために去ったのではない。私はそなたの息子と戦った。復讐を望むなら、そなたとも闘おう。」

喇叭が鳴り響き、騎馬の戦士たちが駆け寄って、舞い上がった塵で空は薄暗くなりました。戦士たちは激しくぶつかり合い、血しぶきが飛び散りました。最終的に、カレンの軍はヴィセの軍に勝ち、ヴィセは退却しました。多くの部下が殺されましたがカレンは彼を追いませんでした。ヴィセは息子の死を嘆きながら、アフラシヤブのもとへ帰っていきました。


10□□シャマサスとガズバラン、ザボレスタンに迫る□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

アフラシヤブがザボレスタン方面に派遣したアルメニア人の将軍はシャマサスといいました。彼はカズバランとともに3万の軍勢を率いてオクサス川を渡り、[ゴルグザラン、そしてニムルズを陥とし]いま剣とメイスを携えてザボレスタン国境のヒルマンド川まで進軍してきました。
この頃、ザールは喪に服して父の墓を建てており、ミフラーブは彼の代わりに政務を執っていました。
トゥラン軍の接近を知り、ミフラーブはシャマサスに使者を送り、メッセージと贈り物を託しました。

「トゥラン軍の司令官に栄光あれ。
私はアラブ王ザハクの子孫であり、ザールの支配に大きな愛情はありません。私が彼の一族と手を組んだのは、自分の命を守るため、仕方がなかったからです。今、この城とザヴォレスタンはすべて私の手の中にあります。ザールは父を悼んでいるが、私の心は彼の悲しみで元気づけられます。
どうかアフラシヤブ公に早馬の使者を送るために時間をください。同盟したいという私の希望を知れば、手間を省けましょう。私は王にふさわしい贈り物を何でも送ります。拝謁を命じられれば、私は彼の玉座の前に立ち、主権も富もトゥラン王に譲り、彼の戦士たちを煩わせることはないでしょう。」

こうしてミフラーブは、トゥランの戦士たちの心をつかむと同時に、時を稼いで彼らの脅威から逃れる道を探りました。
彼はザールに使者を遣わし、こう言いました。
「鳥のように素早く飛んで行って、ザールに急いで戻るよう伝えよ。豹のような2人の戦士がトゥランからここにやってきて、我々に戦争を仕掛けてきたと。
彼らの軍隊はヒルマンド川のほとりに陣取り、今のところ私が贈った金貨が彼らの足を絡め、進行を妨げている。しかし、もしあなたの対応が遅れれば敵は彼らの望むことを実現するだろう。」


11□□ザール、ザボルに戻り闘う□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

使者からの知らせにザールの心は火のように燃え上がりました。彼は軍を率いてミフラーブのもとに向かい、言いました。
「あなたは賢く行動した。私はあなたがしたことすべてに拍手を送る。
 さて、夜の闇の中で、私は彼らに私の能力を見せに行こう。私が戻ってきたことを彼らはすぐに知るだろう。」

ザールは弓を肩にかけ、その矢の一本一本は木の枝のように重厚でした。彼は敵の陣地を見定めると3つの場所に矢を放ちました。夜が明けると、兵士たちは矢を囲んで大騒ぎしています。この矢はザールのものに違いない、彼以外の猛者はこんな矢を弓で射ることはできない、と。

シャマサスは言いました。
「カズバランよ、もしあんたがそんなに富を求めなければ、今頃ミフラーブは残っておらず、軍隊もなく、略奪する財宝もなく、こうやってあんたを怖がらせるザールもなかっただろうよ。」
カズバランは平静を装って答えました。
「彼は一人の男で、アーリマンでもなければ、鉄でできているわけでもない。心配する必要はない。」

輝く太陽が空に昇り始めると、平原に太鼓の音が鳴り響き、街の中でも太鼓や喇叭、シンバルやインディアンチャイムが鳴り響くようになりました。
ザールは大勢の兵と象を引き連れて平野に現れ、遠くから見ると舞い上がる砂埃で平野に黒い山が生まれたように見えました。

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●対峙するトゥラン軍とイラン軍 f104r


メイスと盾で武装したカズバランがザールに襲いかかり、メイスをザールの胸に振り下ろしました。胸当てが砕け散り、カボルの戦士たちに守られてザールは一旦引き返しました。彼は新しい鎧を身につけ、獅子のように戦いに戻りました。
彼の手には父のメイスがあり、彼の頭は怒りで満たされ、心臓には血が滾っていました。彼は牛頭の棍棒をカズバランの頭に振り下ろすと、地面は飛び散った血しぶきで豹の皮のようになりました。

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●ザールがカズバランに牛頭槌を振り下ろす f104r

ザールはカズバランを投げ飛ばし、無残な姿で放置すると、両軍の間にある平原に向かいました。
彼はシャマサスを呼びました。
「出てきて戦え、臆病者!」
しかし、シャマサスはザールのメイスを見ると、兵の中に身を隠しました。ザールは戦塵の中、弓に矢をつがえて別の戦士、鎧をまとったゴルバドに迫りました。矢はゴルバドの腰と鎧を貫いて、ゴルバドを鞍に釘付けにしてしまいました。
シャマサスは色を失いました。
トゥランの軍勢が無秩序に敗走するのをザールとミフラーブが猛追し、あたりには多くの兵士が倒れて足の踏み場もないほどでした。


[ニムルズに]退却しようとするシャマサスの一行が砂漠にたどり着いたとき、カヴェの息子カレンが遠くに現れました。彼はヴィセの軍隊と闘ったあと、ザヴォレスタンに向かっているところでした。

カレンは、相手が誰なのか、なぜザヴォレスタンに来たのかを知っていました「ヴィセと闘う直前に送った早馬からザヴォレスタンの状況を知ったのです]。
彼は喇叭を鳴らし、両軍は戦闘を開始しました。シャマサスの兵士の多くが負傷し、他の兵士は捕虜となりました。シャマサスは数人の兵を連れ、戦いの埃の中から逃げ出しました。


12□□アフラシヤブによるノウザル処刑とイラン王位の簒奪、捕虜とイグリラスの交渉□□□□□□□□□□□□

アフラシヤブは辿り着いたヴィセから将兵たちの死を知り、怒り狂って立ち上がり、言いました。
「ノウザルはどこだ? ヴィセの軍の仇を討ってくれよう。」
ノウザルはこれを聞いて、自分の命運が尽きたことを知りました。

兵士の一団が噂をしながら彼を探しに来て、両腕を縛ったままアフラシヤブの前に引きずっていきました。ノウザルが近づいてくるのを見ると、アフラシヤブは失った将兵達、そして先祖トゥールの悲憤を思い、言いました。
「自業自得だろうな。」
そして剣を抜き、ノウザル王の首を一撃で切り落とし、その亡骸を地面に投げ捨てました。
このようにしてわずか7年の治世ののちマヌチフルの後継者は死に、イランの王位は空白となったのです。

次にノウザルと共に捕らえられた捕虜たちが連れてこられました。彼らは必死で命乞いをしました。アグリラスは、彼らを弁護してアフラシヤブに提案しました。
「丸腰の捕虜をこれほど多く殺すのは、高貴な行為ではなく、卑しい行為です。私が彼らを鎖につないで洞窟に閉じ込めておきましょう。そこで惨めに死ぬことになるでしょうが、無駄に血を流すことはありません。」

アフラシヤブは弟の求めに応じて捕虜を引き渡し、彼らは泣き叫びながらサリに連行されました。

□□アフラシヤブのイラン支配

アフラシヤブは、デヘスタンからイランの王都レイまで全速力で馬を駆りました。そしてそこでカヤン王国の王冠を頭に載せました。
そして宮廷を開き、イランの宝物庫を開け、自分の手下に金貨を配りました。

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●イラン王を僭称するアフラシヤブ   f105r

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●金を分配するアフラシヤブの手下たち   f105r

[女子供を連れてアルボルツ山脈を越えていた]ゴスタハムとトゥースは、ノウザル王が処刑されたという知らせを受けました。戦士たち、女たちもみな嘆き悲しみました。彼らはザヴォレスタンに向かい、王のことを語り、悼みました。
彼らはザールの宮廷で言いました。
「イランの守護者、国家の支柱、世界の王よ!
我々は剣に毒をつけ、その不当な死を復讐する。ザボレスタンもともに嘆き闘ってください。」
ザールの宮廷の皆、一緒に泣きました。
ザールは言いました。
「審判の日まで、私の剣はその鞘を見ることはない。馬は私の王座であり、足は鐙以外のどこにもなく、冠は私の兜である。私は復讐を果たすまで休むことはなく、川の水は私の流す涙より少ないだろう。」

サリにいるイラン人の捕虜に、ザールとその仲間たちが反撃の準備をしているという知らせが入りました。彼らはこの知らせに動揺し、不安で食事も睡眠もとれませんでした。彼らはアフラシヤブの報復を恐れ、アグリラスにメッセージを送りました。
「公正で善良なる閣下、私たちはあなたの言葉によってのみ生きています。あなたはザヴォレスタンにザールが君臨し、カボルの王ミフラーブ、カレン、バルジン、ケルダド、キシュワドといった戦士たちとともにそこにいることを知っています。彼らはイランの防衛のために躊躇なく力を発揮する偉大な英雄であり、戦場に乗り込むと、長槍の突きで人の目を突き刺すことができます。
もし彼らが反撃してくれば、アフラシヤブはそれに激怒して怒りを我々捕虜に向けるでしょう。もしアグリラス閣下が私たちを解放して下さるならば、私たちは永遠に閣下を称賛し、神の加護を祈ります」。

賢明なアグリラスは応えました。
「それはできません。そのようなことをすれば、兄アフラシヤブに対する私の敵意が明白なものとなり、彼は激怒することでしょう。しかし、私は別の方法で、兄を刺激しないように、あなた方を助けようと思います。
もしザールの軍が攻めてきたら、サリに近づいたところで、あなた方をザールに引き渡し、戦わずにアモルから撤退することにします。私が面目を失いましょう。」

イランの貴族たちはひれ伏して彼に感謝の気持ちを伝えると、サリからザールへの伝言を伝える使者を派遣しました。そのメッセージにはこう書かれていた。
「神は我々に慈悲深く、賢明なアグリラスは我々の同盟者となった。彼は、イランからザールの代理として2人の男が来た場合、戦わず、アモル周辺から撤退し、彼の軍をレイに向かわせると誓っている。もしそうしなければ、あの竜アフラシヤブの爪から逃れる者は一人もいない。」

このメッセージを聞いてザールは言った。
「さあ、我が戦士の豹たちよ、戦で心が黒くなった君たちの中で、この任務を引き受け、太陽に向かって頭を上げるのは誰だ?」
ケシュバドは胸に手を当て志願しました。ザールは彼に祝福を与えて送り出しました。

ザヴォレスタンからアモルに向かって軍隊が出発し、その知らせがアグリラスに届きました。アグリラスは、喇叭を吹かせて全軍をレイに向かわせ、すべての捕虜たちをサリに残していきました。ケシュバドはサリに着くと捕虜たちを解放し、それぞれに馬を与え、一行はザボルへの帰路につきました。ザールは彼らを歓待して都に招き入れ、ノウザルに仕えていたときのように身分を保障しました。 

13□□アグリラス、兄に殺される。ザールの決起□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
 
アグリラスがアモルから王都レイに到着したとき、アフラシヤブは彼のしたことを知り、激しく叱責しました。
「殺せと言ったはずだ、慎重さや高邁な考えで行動している場合ではないと。知恵など戦士が戦いで栄光を得るためのものではない。」
アグリラスは静かに答えました。
「少々の恥や名誉の精神は場違いなものではないでしょう。勝っているときこそ神を恐れ、無闇に危害を加えないことです。王冠と王帯はあなたのような人をたくさん見てきましたが、長くは続かないものです。」
激昂したアフラシヤブは答えのために剣を抜き、そして弟を腰への一撃で二つに切り裂きました。

ザールはアグリラスに起こったことを聞いて言いました。
「アフラシヤブの幸運は翳り、王座は荒れ果てた。」
彼は漆黒のラッパを吹き鳴らし、太鼓を戦象に括り付け、雄鶏の目のように色とりどりに輝く大軍を率い、怒りに燃えてパース[を経由してレイ]に向かいました。
アフラシヤブはザールが軍を動員したことを知ると、王都レイの防衛に備えました。
両軍の前線部隊は昼夜を問わず戦い、砂塵にまみれて全てが同じ色に変わりました。多くの戦士や首領が両軍で殺されました。
このようにして2週間が過ぎ、馬も戦士も闘いに疲れ果ててしまいました。

ある夜、ザールは指揮官たちと話し合って言いました。
「我ら戦士は十分な勇気と幸運を持っているが、古の伝承に精通している王族のシャーが必要だ。
軍隊は船のようなもので、玉座に座る王は風であり、船の操縦者でもある。
ゴスタハムもトゥスも立派な戦士だが、どちらも王冠と王座にはふさわしくない。幸運に恵まれ、神から王威(ファール)を授かり、知恵のある王が必要だ」。

彼らはファリドゥンの子孫の中から、王位にふさわしい人物を探しました。それはファリドゥンの血筋、タフマスプの子ザヴでした。カレンは、神官や諸侯とともに、王位継承の吉報を彼に伝え、ザヴはそれを受け入れました。


14□□タフマスプの子ザヴの治世□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
 
ザヴは吉日に即位し、ザールは彼に忠誠を誓いました。ザヴは80歳の老人でしたが、その治世の間に、彼は正義と善意で世界を若返らせました。
軍隊が犯罪を犯すのを止め、軍が勝手に人を逮捕して殺すのを防ぎ、心の中で神と交信しました。
その頃、日照りが続き、地面は乾燥し、植物は枯れ、世界は飢饉に苦しんでパンは金に等しい価値がありました。両軍は8ヶ月間対峙していましたが、飢饉のために戦力が低下しており戦うことはありませんでした。将兵たちは「この災いが天から降ってきたのは、私たちのせいだ」と言い合いました。両軍から飢えの叫びが聞こえ、アフラシヤブからザヴに講和の使者が遣わされました。
「この儚い世界での我々の運命は、苦痛と悲しみだけである。国土を分割し、互いに神の加護を呼び起こそう。将兵たちは戦争で疲弊している。この飢饉は、和平を結ぶのを遅らせてはいけないという意味だ。」

彼らは、心の中で互いに憎しみを抱かないこと、先例に従って正当に土地を分割すること、過去に遡って互いに恨みを抱かないことを誓い合いました。オクサス川を越えて中国とホータンまではアフラシヤブのものであり、ザヴとザールはトゥラン人の天幕が張られている国境を越えず、トゥラン人はイランに進出することはない、と。

ザヴは老いていましたが、彼の統治で世界は一新され、彼は軍を率いて[戦場であったレイから]パースに向かい、ザールはザヴォレスタンに戻りました。
ほどなくして山々の頂は雷鳴に包まれ、小川は水の流れで満たされ、世界は再びの色と香りを取り戻しました。もし男たちが虎のような性質を持たなければ、大地は若い花嫁のように美しく、彼らに手ひどい仕打ちをすることもないのです。
ザヴは貴族たちを集めて神に感謝しました。各地で祝祭が催され、人々は怒りや恨みの心をすべて空にしました。そして、5年の歳月が流れました。ザヴが86歳になったとき、その太陽のような顔は翳り、高潔な男は死に、イランの幸運は失われました。
 

15□□シャー・ガルシャスプの死をトゥランが知る□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
 
ザヴにはガルシャスプという息子がいて、王位を継ぎました。彼は威厳と優雅さをもって支配しました。
ザヴが世を去ったという知らせがトゥランに届いたとき、アフラシヤブは好機再来とみて出兵を考えました。しかしトゥラン王パシャンからの沙汰はありませんでした。
パシャンは、アフラシヤブの撤退以来、政をおろそかにし剣を錆びつかせて、イグリラスの死を悲しんでいたのです。アフラシヤブは月々に使者を派遣しましたが、何ヶ月も何年も、パシャンはそれを拒絶しました。一度だけ出した返答はこのようなものでした。
「どんな王子が王位に就いても、イグリラスのような思慮深い腹心がいれば、彼に利益をもたらしたはずだ。私はお前を敵との戦いに送り出したのに、お前は弟を殺し、鳥に育てられたあの野蛮人から逃げ出した。二度と会うことはない。」

こうして、しばらくの間、月日は流れました。
9年の治世の後、ザブの子ガルシャスプが世を去ったとき、「王の座は空位である」という知らせがすべての耳に届きました。
そしてパシャンが投げた石がアフラシヤブに届けられました。
「オクサス川を越えよ。王座が満たされないうちに。」

オクサス川とシパンジャブ平原の間で、アフラシヤブは軍備を整え、壮麗な軍勢は戦場へ向かいました。
アフラシヤブが王位を主張したという知らせがイランに届くと、人々はザールに向かい、厳しい口調で話しかけました。
「あなたの統治はずいぶんと手ぬるかったのではないでしょうか。サーム殿が亡くなりあなたがザボレスタンの王者になってから、私たちは一日も幸福な日を知らない。
軍隊がオクサス川を渡り、私たちに迫っています。この危機を解決する方法があるのなら、それを実行に移してください。トゥランの指導者はすぐにやってくるでしょう。」

ザールは貴族たちに言いました。
「初めて剣帯を締めて以来、私は日夜戦ってきた。誰も私の剣やメイスを振るうことができないほど、比類ない騎士であった。たったひとつを除き恐れるものは何もなかったが、とうとう、それ―老い―により背中が曲がり、かつてのようにカボルの短剣を振り回すことができなくなってしまった。
今、ロスタムは背の高い糸杉のように成長し、栄誉ある騎士章を授かるにふさわしい。彼には軍馬が必要なのだが、アラブ馬よりも遥かに大きな馬を探さなければならない。私はあらゆるところに問い合わせてみるつもりだ。ロスタムに私の計画に同意するかどうか尋ね、彼がトゥールの一族と戦うために生まれてきたことを思い出させる。彼がその任務に耐えられるかどうか、見てみよう。」

イランのすべての都市は彼の言葉を聞いて喜び、ザールは四方八方に使者を送り出し、ロスタムのために鎧を作らせました。

 

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f102v 104 RECTO  Zal slays Khazarvan  ザールがカズヴァランを斃す MET, 1970.301.15 MET  
f105v 105 RECTO  Afrasiyab on the Iranian throne  アフラシヤブ、イラン王位につく  MET, 1970.301.16 MET 本のp140

 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)
●104 RECTO  Zal slays Khazarvan  ザールがカズヴァランを斃す
〇Fujikaメモ:
ザールとカズヴァランの対戦が中心にあって、わかりやすい構図です。
ザールが、心なしか若いような。この14年後に引退を考えるので、もうちょっと顎髭のある壮年に描いてもいいような。
カズヴァランの着ている濃いグレーの服は、もとは銀色の鎖帷子ではないかと思います。
双方、馬もフルの防具をつけています。

●105 RECTO  Afrasiyab on the Iranian throne  アフラシヤブ、イラン王位につく 
この細密画は、このプロジェクトでは手数の少ない画家E、バシュダン・カーラBashdan Qaraによるもので、この画家の古風で硬い作風の典型的なものです。確かに彼は熱心で熟練した職人であり、その装飾は素晴らしい。しかし、その人物描写には、例えばスルタン・ムハンマドの作品に見られるような活力がない。画家Eの顔は全体的に似ていて、目も焦点が定まっていないように見えることが多い。

〇Fujikaメモ:
アフラシヤブの金色の玉座は、ちょっと装飾が少なめでさっぱりしています。
その分、天蓋の内側のアラベスクとフェニックスの模様が繊細で豪華。天蓋の垂れ布は大柄なのですね。



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シャーナーメ:9.イランとトゥランの戦いの始まり(上)

2023-03-26 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

因縁の間柄、イランとトゥランの間にとうとう戦争が起こります。
結構複雑で込み入った状況で、(戦記物が得意ではない私でも)読みながらなるほど~、とは思いました。
でも、挿絵が少ないのよね・・・。面白いかというと・・・。
せめて分かり易さだけでもと、地図を描いてみました。
(この地図がまた曲者で・・・)
上・下に2編わたる長さですが、読んでくれる人いるかなあ。
この章は、何週間もネチネチと直し続けて(なるべくテンポよく読めるように刈り込んだりとか)本当に時間がかかりました。これ以上いじくり回していても仕方がないので、ひとまずアップして次にいきたいと重います。
ほかの写本の挿絵とかがみつかれば足したいです。
(イグリラスは結構印象的なキャラだと思うのだけど絵がないのよね・・・)

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9.イランとトゥランの戦いの始まり(上)
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■登場人物
《イラン側》
マヌチフル:イラン王ファリドゥンのひ孫、イライの孫。兄達(サルムとトゥール)がイライを殺した敵をとってイラン王位を継いだ。Manuchehr
ノウザル:マヌチフルの息子 Nozar / Nowzar/ Naudar
サーム:マヌチフルに忠誠を誓ったシスタンの前王であり、息子(ザール)に国を譲り辺境のゴルグザランを統治。
カレン:イラン軍最高司令官
クバド:武将。カレンの兄弟。ここでは兄とした。
トゥースとゴスタハム:武将。ノウザルの息子。Tus  Gostaham/Guzhdaham
ガルシャスプ:武将。王族。

《トゥラン側》
パシャン:トゥールの孫で、トゥランの将軍。Pashang。父はザドシャム/ ザダシュム/ Zadashm(トゥールの子)。兄弟に、ヴィセViseh がいる。
アフラシヤブ:パシャンの息子。ここでは長男とした。Afrasiab / Afrasyab
アグリラス:パシャンの息子。ここではアフラシヤブの弟とした。Agriras 。
ガルシワズ:パシャンの息子。ここではアフラシヤブの弟とした。Garshivaz / Garsivaz 。
ヴィセ:トゥランの武将。パシャンの弟。Viseh 
バルマン:トゥランの武将。ヴィセの息子。兄弟にピラン、ホウマンがいる。

■概要
かつてイラジの仇トゥールを討ったマヌチフル王が亡くなります。
後継者はノウザル。このノウザルの未熟な統治を好機とみて、トゥールの恨みを晴らすべく、トゥラン軍が侵攻してきます。
トゥラン軍の最高司令官は勇猛かつ冷酷な王子アフラシヤブ。
3度の会戦で、イラン軍は窮地に立たされ、デヘスタン城塞に籠城することになります。
ノウザルは覚悟を決め、せめてイラン王統の血筋を守ろうと別の場所(パース)にいる王族の子女を救うため二人の戦士を遣わしますが、最高司令官を含むほかの武将も女子供を守るためノウザル王には告げずそちらに向かってしまいます。
これを知ったノウザル王は動顛して、将兵らと共に彼らを追ってデヘスタンを脱出しますがアフラシヤブに捉えられてしまいます。

■地図
今回、戦がメインの物語で、戦場が複数箇所あったりすることもあって、結構沢山地名が出てきます。
これまでは見て見ぬふりができた地名ですが、今回ばかりはこの地名の羅列を何も分からず読むのはあまりにもつらい・・。
いくつかの資料を見つつ、ざっくりとした位置関係が分かるようなマップを作ってみました。実際の地名とは対応できないし距離感もちぐはぐのため、架空の地図と思って下さい。
「アフラシヤブ×ノウザル」など対戦者名がある場合は、先に書いた方が北側、後に書いた方が南側のイメージです。

https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/b9/ba237d910198efb6d194cd1c67196ce2.jpg
※イラン王族の女子供を連れて超えたというアルボルツ山脈の位置がどうにも合わないです。パースに彼女たちがいて、それを連れて逃げるので、比較的近く、敵からは遠ざかる方向のはず、ということでパースの南西に山脈を置きました。でも現実のアルボルツ山脈は、カスピ海南岸沿い・・・・。でもパースからまた北を目指すのは違う気がする・・・。

■ものがたり

□□1マヌチフルの最期の日々□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

120年の治世の後、占星術師たちはマヌチフルのもとにやってきて、空のしるしを告げました。王の日々はもう続かない、という苦い知らせです。
「彼岸に発つときが参りました。旅立ちの前に必要なことをなさって下さい。」
占星術師の言葉を聞いたマヌチフルは、宮中の堅苦しい慣例を変え、神官や賢者に心の裡を打ち明けました。そして息子ノウザルを呼んで最後の話をしました。

マヌチフル王は言いました。
「この王座は幻影であり、永遠に心を縛るようなものではないと知りなさい。私がかつて満月の頬だった頃、ファリドゥンの栄光が私を奮い立たせ、サルム、トゥールと戦い、祖父イラジの死に対する復讐を果たした。即位してのち百二十年もの間、危険や困難と闘い、地上から不幸を取り除き、都市と要塞を築いた。
しかし、今、私は何事もなしえなかった気持ちであり、審判の日が過ぎて闇の中にいる。生とは葉も果実も毒の木のようであり、今の私は痛みと悲しみに耐えるばかりである。
今、王位と王冠をお前に授ける。曽祖父フェリドゥンが私に与えたように。
お前が世界を経験し、それが過ぎ去ったとき、お前はより良い場所に戻ることになるが、お前の残す痕跡は長い年月続くことを知りなさい。決して神の道から外れないように。
私が去った後、汝の前には困難が立ちはだかるだろう。トゥールの孫のパシャンとトゥランの軍勢は汝の悩みの種となるだろう。問題が起こったときは、わが息子よ、ザールやサーム、そしてザールの根から芽生えた新しい木(ロスタム)に助けを求めるがよい。」

ノウザルはそばについて永訣を嘆き悲しみました。
そしてシャーは、病からも痛みからも解き放たれ、最後の冷たいため息をついて目を閉じ、息を引き取ったのです。

□□2ノウザル王の治世□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

父の喪が明けると、ノウザルはマヌチフルの玉座に座り、民を呼び寄せ、富を分配しました。しかし、彼の心が不正に傾くのにそれほど長い日数はかかりませんでした。
世間は、この新しい王が富と金にのみ心を奪われ、神官や助言者に残酷な仕打ちをし、すべての人を蔑ろにしていることに嫌気がさし、各所で不平不満が噴出しました。
農民の反乱が起こり、王位継承を主張する者たちが現れ、抗議の声が広がって世の中が混乱すると、この不義の王は恐れて、ゴルグザラン遠征中のサームに使者を送り、お世辞を並べて助けを求めました。 

この手紙がサームに届くと、彼は冷たい溜息をつきました。それでもサームはゴルグザランの国から、緑の海を凌駕するほどの大軍を率いてきました。サームが都に近づくと、貴族たちが彼を出迎え、サームにノウザルの不義を長々と語りました。

「彼の圧政によって世界は破滅しました。彼は知恵の道に従わず、王威(ファール。王たるものに備わる威光)も失せました。
お願いでございます、閣下。英雄サームが王座に就けば何の問題もなくなります。イランとその国民は閣下を支持し、我々は皆、閣下の意志に従います。」

しかし、サームは彼らに答えました。
「神はお認めになるだろうか? 王家の血筋を引くノウザルが王座にいるのに、私が王冠をかぶるなどということはあり得ない。
ノウザルの専横は長く続いてはいない。鉄はまだ、その輝きを取り戻せないほど錆びついてはいない。私は彼の神々しいファールを復元し、世界を再び彼の愛に目を向けさせよう。
このような考えを捨て、王への忠誠を再確認せよ。神の慈悲と王の愛を得なければ、ノウザルの怒りが世界を炎に包んでしまう。」
貴族たちは自分の言ったことを悔い、ノウザルに再び従うことにしました。

そしてサームは国王の前に着くと、地面に口づけして挨拶をしました。
シャーは王座から降りて勇者サームを抱き、王座に座らせ、挨拶と限りない賛辞を送りました。

f96v
●ノウザル王、サームを歓迎する 96v 

サームは道を踏み外した君主に理非を説き、族長たちの心を彼に向けさせ、秩序と平和な統治が戻りました。各州からは、怒れる戦士サームを恐れて、税や貢ぎ物がやってきました。
ノウザルは栄光に満ちて王座に座り、そして心乱されることなく眠れるようになりました。
そしてサームはノウザルからさまざまな褒美を授けられ、ゴルグザランに戻りました。


□□3トゥラン王パシャンがマヌチフルの死を知り出兵する□□□□□□□□□□□

しかし運命は転回しつつありました。
マヌチフルの死の知らせはトゥランに届き、ノウザルの乱れた治世が噂されました。
これを聞いたトゥランの王パシャンは、イランへの侵攻を決意しました。彼は、祖父トゥールがマヌチフルに討たれたこと、そして父ザドシャムの不遇について恨みを募らせていたのです。

彼は、弟のヴィセ、息子のアフラシヤブとイグリラス、ガルシワズ、そしてアクヴァスト、バルマン、ゴールドバッドといった国の司令官や貴族、戦士を招集しました。
パシャンは戦士たちに向かって言いました。
「イランに対する復讐心を衣の下に隠してはならない。彼らのかつての行いについて、心が騒がない者はいない。今こそ、復讐、反抗、そして容赦ない戦争の時だ!」

父のお気に入りの勇猛なアフラシヤブは奮い立ち、叫びました。
「私はノウザルを必ずや斃す!
もし先王ザドシャムが戦いの剣を抜いていたら、世界はイランの君主に支配されることはなかっただろう。しかし、孫である私がいま、復讐を行うのだ。混乱の時こそ好機である!」

獅子の肩と象の力、どこまでも続く影、鋭い舌鋒、泡立つ海のような心を持つアフラシヤブを見て、パシャンの戦意は燃え上がりました。
彼は息子に、剣を抜いてイランに対抗する軍を率いるよう命じました。彼は、アフラシヤブは立派な指揮官であり、自分の死後、王国を継承して父の名声を守り続けてくれると考えたのです。
アフラシヤブは復讐に燃え、出陣して国庫を開き、戦士たちに豊富な装備を与えました。

戦いの準備が整う頃、アフラシヤブの弟アグリラスが懸念を抱いて父のもとにやって来ました。
「父上、偉大なトゥラン人の王よ。あなたはトゥールとサルムが、マヌチフルやその軍勢にどんな目にあわされたかをおっしゃいました。
しかし、先王のザドシャムは、その兜が月に触れるほどの名君でありましたが、そのような戦争について一言も語らず、平和の時に復讐の書物を読んだことはありませんでした。
このような狂気は国を混乱させます。私たちは自制した方がよいのではないでしょうか。」

パシャンは言いました。
「あの獰猛なクロコダイル、アフラシヤブを見よ。狩りの日のライオンのようであり、戦いの時の象のようではないか。それに比べ、祖父の恥辱を晴らそうとしない孫は、その血統にふさわしくない。お前もすぐに出発して、大小の問題でアフラシヤブを助けてやれ。
雨が荒野を濡らし、山の斜面や砂漠が馬のための良い牧草地に変わり、植物が英雄の高さまで成長し、世界が春の植物で緑色に変わるとき、それは平野に陣を敷く時だ。
そして軍を率いてオクサス川に向い、デヘスタンとゴルグザランを騎馬隊の蹄で踏み潰し、その川の水を血で赤く染めるのだ。そこはマヌチフルが我が祖父トゥールに復讐するために旅立った場所なのだ。
イラン軍の拠り所はマヌチフルであり、彼亡き今、イラン軍は一つまみの塵にも値しない。若くて未熟なノウザルは恐るるに足りぬ。カレンやガルシャスプは手ごわい敵となろうが。
お前たちの勝利で父祖の魂を喜ばせ、敵の心を屈辱の炎で燃やしてくれ。」

アグリラスはうつむいて答えました。
「彼らの川を復讐の血で染めましょう。」

□□ 4アフラシヤブのイラン侵攻□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

春の新緑が平原に絹のような表情を見せる頃、トゥラン軍は戦いの準備を整えました。トゥランとチンから軍隊が集まり、西方からはメイスで武装した戦士が加わりました。あまりの大軍に中央も端もありません。

トゥラン軍がオクサス川に接近しているという知らせが届き、イラン軍はカレンの指揮の下、デヘスタンを目指して出発し、ノウザルが後方を追いました。
世間は戦の噂でもちきりで、軍勢がデヘスタンに近づくと、太陽は彼らの塵で見えなくなってしまいました。一行はしばしの滞在の後、デヘスタンを出て、郊外の平原に陣を構えました。

アフラシヤブはアルマンで部隊を分け、シャマサスとカズバランという二人の武将を選び、三万騎の軍勢を与えて[ゴルグザランと]ザヴォレスタン方面を侵攻させました。
使者が来て、[ゴルグザランでの]戦闘の最中サームが死に、ザールが墓を建てていると伝え、アフラシヤブは大いに喜びました。

アフラシヤブはオクサス川を渡って進軍し、デヘスタンの町から2里ほどのところに陣を構えました。その軍勢は40万、山そのものが彼らの存在で沸き立つようで、砂漠はすべて戦士で埋め尽くされていました。

ノウザル王は14万人の軍勢を擁し、騎乗して戦いに備えていました。アフラシヤブは敵軍を見渡し、日暮れ時に使者を遣わしてパシャンに書簡を送りました。
「もはや勝利は我々の手の届くところにあります。ノウザルの戦力をみると、彼らは我々にとって容易い獲物です。
何よりサームはもはや王のために戦うことはできません。息子のザールは父を弔い墓を作るのに忙しく、我々に対抗する力はありません。将軍シャマサスはすでにザヴォレスタンの北、ニムルズを陥落させました。この好機を逃さず攻撃を続けます。」
使者は翼が生えたようにトゥランの王に向かって疾走しました。


□□5バルマンと老クバドの一騎打ち、そして一回目の両軍の会戦□□□□□□□□□

夜明けが山の端に見えた頃、両軍は総ての装備を固め、2里離れたところに位置していました。 偵察に出たトゥラン軍のバルマンは司令官のところに戻り、報告したのちに申し立てました。
「いつまで待機しているのでしょうか。もしお許しを頂ければ、私は彼らの一人に一騎打ちを挑みます。」

慎重なアグリラスは兄に進言しました。
「バルマンが敗れれば、我が前線軍は意気消沈してしまいます。我々は、無名の戦士を選ばなければならない。そうすれば結果に歯噛みすることもないでしょう。」 
これを聞いたアフラシヤブの顔は恥辱で紅潮し、憤激してバルマンに命じました。
「鎧をつけ、弓を張れ!歯の出番などない!」

バルマンは戦場に戻るとカレンに向かって叫んだ。
「ノウザル軍の戦士よ、誰か、私と一騎打ちをしようではないか!」

カレンは部下を見回し募りましたが、名乗りを挙げたのは古参の戦士コバド―カレンの兄 ― だけでした。
カレンはコバドの行動に動揺し、軍勢に向かって怒鳴りました。
「若い戦士の大軍がいて、老人に戦わせるのか!」

そして皆の前でコバドに向かって言いました。
「バルマンは若く屈強な戦士です。兄上はこの軍の重要な指導者であり、王の助言者でもある。もしあなたの白い髭が血で赤く染まるようなことがあれば、我が戦士はみな動揺し絶望してしまいます。」
コバドは兄に答えました。
「運命は私にもう十分なものを与えてくれた。弟よ、私は戦士だ。偉大なるマヌチフル王のために戦っていたときから覚悟は出来ていた。戦場で、自分の寝台で、人は必ず死ぬのだ。
もし私がこの世を去ったとしても、剛健な弟が残る。どうか私の頭を樟脳と麝香と薔薇水で包み、立派な墓で永遠の眠りにつかせてくれ。
許してくれ。さらばだ、君が世界で活躍するように。」
彼は話し終わると、槍を握りしめ、狂った象のように戦場へ駆けて行きました。

バルマンは彼をみとめて大呼しました。
「さてさて、ようやく来たのは老人か!
 そろそろ寿命なんだからおとなしく待っていたらどうだ!」
コバドは応えました。
「私はとうに天命を全うした。いつでも死ぬ準備は出来ている!」
こう言って彼は黒い馬を走らせ、戦いの魂に休息を与えることはありませんでした。

夜明けから影が長くなるまで、2人は死闘を続けました。
ついにバルマンの投げた長槍がコバドの背中に突き刺さり、コバドの背骨を砕きました。彼はゆっくりと、鞍から地面に落ち、動かなくなりました。
老いた英雄はこうして死んだのです。

(画像なし)
●トゥラン軍のバルマン、老クバドを斃す 100r

バルマンは顔を輝かせてアフラシヤブのもとに戻り、誰も見たことがないような栄誉の衣を授けられました。

コバドが討たれたその時、カレンは全軍を率いて出撃しました。
両軍はまるで二つの大海が交わるように出会い、大地が揺れ動くような勢いでした。
カレンは突進し、トゥランの側からはガルシワズが同じく突進してきました。馬の嘶きと舞い上がる砂埃が日月を遮り渦を巻き、燦めく鋼鉄の武器は血に染まりました。
カレンは馬を駆り、剣を火のように振り回したので、まるでダイヤモンドが珊瑚の雨を降らせるかのようでした。
アフラシヤブはその腕前を見て、部下を率いて彼のもとに向かい、二人は山々に夜が明けるまで戦い続けましたが、彼らの復讐心は満たされることはありませんでした。

f98v
●イラン軍とトゥラン軍のごっちゃごちゃの激闘 98v 

夜になると一旦の休息が得られました。
カレンは軍勢を率いてデヘスタンに向かい、兄の死に心を痛めながらノウザルの陣にやって来ました。ノウザルは彼を見て、眠れぬ目から涙を流して言いました。
「戦士サームの死以来、私の魂はかくも嘆くことはなかった。コバドの魂が太陽のように輝くように。そして、そなたが永遠にこの世にとどまる運命であるように。」

カレンは答えました。
「ファリドゥン王がこの頭に 兜をかぶせて以来、私は帯を緩めず、剣を脇に置くこともなく戦ってきました。
今、威厳と知恵に満ちた兄が死に、この戦が私の最期となるでしょう。
今日、アフラシヤブが牛頭槌を持った私を見て、追いかけてきました。私は彼と目が合うほど近づいて闘いましたが、彼は魔法の呪文を唱え、私の目はかすみ、すべてが昏くなりました。もはや槌を振るう力は残っていませんでした。私たちは塵と闇の中で戦いから引き下がらなければなりませんでした。」

6□□ 2回目の会戦、ノウザルがトゥースとゴスタハムを送り出す□□□□

両軍とも休息し、二日目の朝、戦闘が再開しました。□□両軍とも隊列を組んで進み、太鼓の轟きと喇叭の音で大地は揺らめき太陽が砂塵に曇りました。
鬨の声がこだまするなか両軍の応酬が始まり、戦士たちは組み合い、カランが突き進む場所には血の川が流れました。
アフラシヤブが他を引き離して先頭を駆けていたところにノウザルが迫り、その槍を互いにぶつけあって、蛇のように絡み合って争いました。

戦いは日暮れまで続き、トゥランが優勢になりました。
イラン将兵の多くが負傷しましたが、トゥランの攻撃は止まず、彼らは前線の野営地を踏み捨ててなすすべもなく敗走しました。
 
戦場に太鼓の音が聞こえなくなると、本陣にいたノウザルは、息子たち、戦士トゥースとグスタハムを呼びました。
ノウザルは沈痛な面持ちで言いました。
「父王マヌチフルが臨終のときにおっしゃったのだ。『トゥランとチンから強大な軍隊がイランに侵攻してくる。お前の軍隊は敗れるだろう』と。今、父上の言葉は現実のものとなった。これほどの大軍勢のことを記した書物は誰も読んだことがない。
トゥースよ、お前は密かにパースに行ってくれ。そしてそこで宮殿や後宮の女子供―王族や武将たちの妻子―を集めてアルボルズ山脈のラベクーに連れて行ってくれないか。この退避を傷ついた兵士達が知れば、更に消沈してしまうだろう。しかし、そうすることでファリドゥンの血筋の誰かがこの無数の敵の群れから救われるかもしれない。
この企てのために、我らが再び相まみえることはないかもしれない。
偵察を欠かさないようにせよ。もし我が軍の、そして私についての悪い知らせを聞いても悲しまないでくれ。天はいつも、ある人を塵に帰し、別の人に幸福と冠を与えてきたのだ。」
そして、息子たちを抱きしめて泣きました。
トゥースとゴスタハムも頬を涙で濡らし、魂を不安で満たしたまま、出立しました。

7□□3回目の会戦、イラン軍のデヘスタンへの籠城、カレンの脱出□□□□□□

2日間の休戦ののち、3日目の夜明けとともに事態が動きました。

トゥラン軍はこの間、昼も夜も休まず、軍備を整え剣や槍を研いで備えていました。そしてこの朝、陣幕の中には喇叭やインディアンベルが鳴り響き、闘いの鬨の声が上がりました。本陣の天幕の前でシンバルが鳴り響き、兵士たちは鉄兜を被って待機しました。
闘志が漲り沸き立つようなアフラシヤブは、怒濤の軍勢を率いてノウザルの軍に襲いかかっていったのです。
谷間は重いメイスを持って進む兵で埋め尽くされ、山の斜面も平原も消えました。

カレンは王を守るために軍の中央に位置し、タリマンは左翼を、ナストゥレの子シャプールは右翼を指揮しました。夜明けから日暮れまで、山も海も平原も見えません。しかし、槍の影が長くなる頃にはイラン軍は崩れていき、トゥラン軍が優勢になりました。シャプールの軍隊は敗走し、シャプール自身は討たれてしまいました。

イラン軍は後退しデヘスタンの城塞に立てこもりました。城塞への進入路はわずかであったため、昼夜を問わず懸命に防御することで、彼らはしばらくの休息を得ることが出来ました。

イラン軍が籠城しているためトゥラン軍は攻めあぐね、将兵に余裕がありました。そこでアフラシヤブは、カラカンというトゥラン人に一隊を率いさせ、砂漠の道を通ってパースに行って、王族やイラン武将たちの子女を襲うように命じました。
これを知ったカレンは、怒りが収まらず、豹のようにノウザルのもとにやってきて言いました。
「卑怯者のアフラシヤブめ!彼は我々の妻子のもとに軍勢を送り込みました。もし彼女たちが捕らわれるようなことがあれば、我々の面目は丸潰れです。私はこのカラカンを追いかけなければならない。ここには食料があり、水も流れていて、兵は陛下に忠実です。この城塞でお待ち下さい。」
しかし、ノウザルは反対しました。
「それはならぬ。汝が第一の司令官だ。トゥースとゴスタハムが夜明けにすでに出発した。彼らは女性たちに追いつき、適切に世話をしてくれるだろう」。
カレンと指揮官たちはシャーの寝所に招かれ、しばし、悲しみを紛らわすために葡萄酒を飲み交わしました。

宮廷を後にした勇者たちの目は、冬の雲が雨を降らせるように涙で満たされていました。そしてカレンの宿舎に皆集まり、議論を重ね、合意に至りました。
「やはりパースに行かなければならない、王の決定は受け入れられない。もし私たちが戦うことなく妻子を捕虜にされたら、誰がこの平原で再び槍を振るう勇気があるだろうか、誰が休んだり眠ったりすることができるだろう。」

カレン、シルイ、キシュワドの3人が、この企てについて協議し、夜半過ぎ頃、彼らは出撃の準備を整えました。夜明けになって城塞を出る道のひとつ、人々が "白い城"と呼んでいる場所に到着しました。そこでは、城主グズダハムが、包囲軍に悩まされていました。
城塞を包囲して道を塞いでいたのは、カレンの兄クバドを一騎打ちで倒したバルマンとその隊でした。

カレン達が脱出すると、バルマンの隊は砂漠までずっと追ってきました。
イラン軍は夜の砂漠で追手を待ち受けました。

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●デヘスタンを脱出したカレンの隊 f102v


兄クバドの復讐を切望していたカレンはバルマンに狙いを定めました。カレンの槍はバルマンの鎧と腰帯を貫き、彼の背骨は砕け、バルマンは馬の背から真っ逆さまに落ちていきました。

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●カレンがバルマンを槍で突く f102v

シルイ、キシュワドも追手に痛手を負わせました。

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●槍で突かれるバルマンの将兵 f102v


バルマン軍が混乱して逃げ惑うなか、カレンとその軍はパースに向かって突き進んだのです。

□□8ノウザル、アフラシヤブに捕らえられる□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

ノウザルはカレンらの出発を知ると、動顛してカレンを追いかけました。
アフラシヤブは包囲が破られたことを知ると、兵を集めて本陣から追撃に出ました。夜を徹して追撃し、ついにノウザルが千二百人の兵と共に捕らえられました。捕虜たちは鎖につながれてアフラシヤブの前に連れて行かれました。
アフラシヤブは[ノウザルとカレンが同行していたと思い]カレンを捕まえるため、近くの洞窟、山、砂漠、川をくまなく捜索するように命じましたが、捕虜の証言により、カレンはイランの女たちを案じ、ノウザルに先んじて出発したのだと告げられました。そして追撃したバルマンと包囲軍を打ち破ったと。
アフラシヤブは息子の死を嘆くバルマンの父ヴィセに言いました。
「豹でさえカレンを襲うのをためらうが、追いかけて息子の仇を取ってやれ。」

(下に続く)

■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f096v 96 VERSO  Shah Nowzar embraces Sam  (イラン王)ノウザール王、サムを歓迎する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  
f098v 98 VERSO  The first clash with the invading Turanians  侵略者トゥラン人との最初の衝突  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran Hollis  
f100r 100 RECTO  Barman slays old Qubad  トゥラン軍のバルマン、老クバドを斃す Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 非公開  
f102v 102 VERSO  Qaran slays Barman  カランがバルマンを斃す The Sarikhani Collection fitz / Hollis / Wiki 本のp137

 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)
●96 VERSO  Shah Nowzar embraces Sam  イランのノウザル王、サームを歓迎する 
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
ひげのないノウザル王が玉座から降りて半白髭のサームを抱擁して迎えています。
とりまきの従者たちは、それぞれの集団ごとに顔を見合わせていて、ノウザルへの反感を表現しているのかもしれません。

●98 VERSO  The first clash with the invading Turanians  侵略者トゥラン人との最初の衝突
〇Fujikaメモ:専門家による解説がないので、私が勝手に感想を書いてしまいます。
この絵は、たぶんものすごく手間暇はかかっているのだと思います。
数えきれないくらいの人物・馬が、ごっちゃごちゃに入り乱れて戦っています。
メインキャラどころか、イラン、トゥランもよくわからないくらい・・・。
象に乗っているのが総大将だとすると、左の白象の上がひげのある人物=アフラシヤブ、右の普通の象の上はひげのない人物=若いノウザル、でしょうか。
(贔屓チーム(イラン)に聖なる白象をもってきそうな気もするけど・・・)自身ありません。

●100 RECTO  Barman slays old Qubad  バルマン、老クバドを斃す
〇Fujikaメモ:
詳細画像がみつかりません。
クバドは白髪・白髭で描かれていることが多いようです。
兄弟のカレンの髪は白くない絵があったので、ここではクバドは兄としました。

●102 VERSO  Qaran slays Barman  (イラン軍の指揮官)カランが(トゥラン軍の)バルマンを斃す
この戦闘シーンは、不気味な夜色の色調で、写本の一連の絵の中でスルタン・ムハンマドのものと断定できる最後の絵であり、彩色には、第二世代の巨匠の一人である若い画家ミール・サイード・アリが協力したようである。多くの人物の顔や、馬やその装具の扱いには、若い画家の手が加わっていることがわかる。スルタン・ムハマンドが登場人物に必ず生命を与えるのに対し、優れたデザイナーであり、奇跡的ともいえるほど優れた職人であった若い男は、人物や動物を静物画として描いている。その後、ミール・サイード・アリーはインドに渡り、ムガル派絵画の創始者のひとりとなった。
太鼓が鳴り、トランペットが鳴り響く中、イラン軍とツラン軍が激突する。
3人のトゥラニア人が戦場から追い出される。彼らの服装はイラン軍と同様同時代化されており、サファヴィー朝時代の敵であるオスマン・トルコの頭飾りをつけている。

〇Fujikaメモ:
空には星と月。そして地面の色がほかにはない、明るい青緑色です。一度見たら忘れられない印象的な色です。
かぶりものから見て、左がイラン側、右がトゥラン側。
画面中央の、上(奥)でも下(手前)でも槍で突くシーンです。手前がカランがバルマンを突いているところ。奥側で逃げているまだらの馬二頭がとてもきれいで印象的です。こういう白茶や白黒の二色の大柄の斑のことをパイボールドpieboldというようです(ホルスタインとかも)。

■参考情報
ペルシャ絨毯産地の各都市
シャーナーメとは直接に関係はありませんが、全くなじみのないイランの都市名とその土地土地のすてきな絨毯が結びついて出てくるので、興味深いです。
まだ全部は見ていませんが、シャーナーメに関係ある地名も少しはありそう。

メトロポリタン美術館のイスラムの武器と鎧
本文は英語ですが写真が多数あります。
このシャーナーメに描かれている時代(16世紀)の武器、武具の実物が見られます。
やはり遺物として残りやすい金属製のものが多いですが、細工が綺麗・・。
布・革などの素材であまり残っていない弓矢や馬の鎧もきっと綺麗だったのだろうと思います。

シャーナーメの地図
19世紀のイランとトゥランの地図
19世紀のイランとトゥランの地図

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布の貼り箱

2023-03-22 | +食べるもの以外

とても綺麗な箱を頂いたのでご紹介します。

布の貼り箱

鮮やかな色の布製の貼り箱です。
上面部分には刺繡がしてあって、スポンジが入っているのかな、ふっくらしています。
側面はぴたっとした感じ。
(たとえ材料がそろっていたとしても、このようにカッチリ作るのはとても技術がいりそう!)

布の貼り箱

ミの方は黒い紙製なのですが、底にはフタと共布のふっくらしたクッションが組み込まれています。

布の貼り箱

フタのあざみの花は、刺繍糸が束ねてある状態で、縫い付けていないのでふぁさっと揺れるようになっています。

布の貼り箱

紙袋に入って頂きました。


この箱には実は次のような謎があるのです。

・ダンナサマが頂いた
・相手は仕事上の知人男性で数年に一度会うかどうか
・しかもそのひとははるばるやってきた外国人(マレーシア)
・(多分相手は、奥さん=私が箱好きとは知らない)

という状況なのです。
わたしが、母や叔母、親しい知人から貰うならば分かりますよね。
女の人同士って、相手の好み(箱好き、とか)に応じて中身が空になった箱やら缶やらリボンやら、プレゼントしたりします。

でも男性は?
確かにこの箱はとても素敵ですが、男性から男性への、仕事上の儀礼的な贈り物に、「箱」?
(厳密にいうと、箱は完全に空ではなくて、中には、非食品用のシリカゲルが入っていました)

私が想像するシチュエーションは次のようなもの。

①一度スーツケースに詰めてみたが、スーツケースの中で箱の中身がカタカタすることが分かったので、中身だけとりだして何かに包んでパッキングして、箱は箱、袋は袋でまとめておいた。
②そして、日本に到着し、打合せの日の朝、ドタバタしつつ手土産を準備。
③袋に箱を入れてスタンバイ。(箱の中身を出してしまったことを失念)
 ↓
④帰国後、スーツケースを片づけているときに、箱に入れて渡すつもりだった品物を発見。
「ということは、空箱を渡したということか!」と頭をかかえる。


こんな感じではないでしょうか。
スーツケースは細密充填状態になっていて、お土産を自分のシャツで包んだりもしていて、そこから各種手土産を過不足なく取り出す、というのは結構難易度の高い仕事です(台湾のホテルでベッドの上一面にお店広げまくってるので、よく分かります)。

一体何があったのか、(箱の中には何かを入れるつもりだったのか/箱がメインでよかったのか)真相が知りたい。。。
箱や紙袋を詳細に点検してみましたが、ブランド名やお店の名前などはなし・・。
全く親しくない間柄なので、聞く訳にもいかず、永遠の謎です・・・。

 

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チョコがけ2023

2023-03-15 | +チョコがけ

年末に一度作ったのと、あったかくなってしまったのとで、気力萎え萎えでしたが、一応、チョコ仕事をやりました。

作業のようす。(箱にしまっている途中で撮影したため空白が多い)

チョコがけ

この写真は1回目だったかな。
今年は、ピールは少な目で、ガナッシュを2種やってみました。

ホイップトガナッシュ(ブランデー)
ベルガモットガナッシュ
晩白柚(小さ目カット)
ポンデローサレモン(小さ目カット)
ダイダイ
バウムクーヘン(チョコがけ後、ブランデー注入)
フルーツケーキ(例のバターなしの)
ルマンドミニ


チョコがけ

できあがり例。
帯を、ゴールドで塗ってみました。

チョコがけ

説明書も、壁紙サンプルの端切れを使いました。
(箱と同じものだったり、ちょっと違うものだったり)

チョコがけ

中身。
ホイップトガナッシュやバウムクーヘンは大き目なので、1段積みです。
晩白柚やポンデローサレモンは、迷わずひとくちでいけるような、小さ目カットにしてみました。
爪楊枝方式だと、小さくてもコーティングも楽です。

チョコがけ

右のエリアの下段。
例のとてもずっちりバターなしフルーツケーキですが、チョコがけすると、まるで何もなかったかのようにそれっぽく。
下がルマンドミニ。もともとチョコ的なものがかかっていますが、美味しいチョコを更にかけるとまた一味違う感じに。


今年の新作のホイップトガナッシュは、山本麗子さんの本で見て、他の本ではほとんど見かけないもの。
普通のガナッシュを作り、それを泡立てるのです。
(作る途中いろいろあったので、今度別記事にしようかな)
絞り出すのでこんもり大きくなります。
ふつうのガナッシュはねっとりしていますが、これはぽっくり(?)。ポルテみたいな感じ。
食べるとくちどけがよくて、大きいけれど気にならず食べられます。
これが今年の一番のチャレンジだったのですが、差し上げた方からはあまりレスポンスなし。あれー。
ダンナサマは気に入ってくれた模様。


ベルガモットガナッシュは上の写真にないです。(あとで写真追加するかも)
丸口金で絞り出して、上からつぶすようにして平たくし、カットしました。
(サントノレ口金でうねうねと絞ったのも試したけれど、固さが固くなると難しい)
こちらは薄べったい形状。
チョコフォークにぎりぎり乗る大きさでハラハラしたので、もう少し長くすればよかった。
1個とっておいた貴重なベルガモットの皮を生クリームで煮て、あと酸味が欲しくてアプリコットジャムを入れました。
ジャムのせいかどうか、分離気味になりましたが、冷やす過程でよく混ぜたらなんとかなりました。



コメント (2)
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じゃばらママレード(母作)

2023-03-14 | +ジャム・ピール(果物系保存食)

今シーズンの実家のジャバラ、花は結構咲いていたのに、実の数は少な目でした。
お正月時点で、11、12月の暖冬実家のじゃばらが、まだほんのちょっと青いかな? という状態だったのでした。
で、私が3個くらいもらって帰り、残りは母が加工してくれました。
(私の方のは、果汁は果汁で使い、皮のみ刻んで煮て、砂糖と母作ゆずジャムを足して即席ミックスママレードに)

2月に実家に行ったとき、出来たものを貰ってきました。
花粉のこの時期、出番ですよね☆

じゃばらママレード

とっても綺麗な黄色。
そして、果汁たっぷりのジャバラの、全部を贅沢に使っているので、ゆるめです。

じゃばらママレード

たっぷりのクリアな液体に、果皮が浮かんでいます。
袋やスジの痕跡は全然見当たらない感じですが、袋は使ったのかな?果肉だけ?

じゃばらママレード

母は、作ったときのレシピを各瓶に貼っています。
確かにこうすると、次回作るときの参考になります。
これを解読するに、皮を剥いて刻んで・・・水晒しなし、というのは本当に水に漬けてもいないのか、ゆでこぼしていないという意味か・・。
袋 540g とあるので、袋を剥いて果肉だけ使ったわけではなく、袋も使ったということかな。
(分量は分かりますが、これでプロセスまで他人が解読するのはちょっと難しいですね)


ジャバラの皮ってかなり個性的な香りで、ママレードにはどうかなーと思っていたのですが、完熟だからか、果肉もたっぷりだからか、ほどよい個性で、美味しいです。
花粉症にも効くといいんだけど・・・。ずびずび。

(業務連絡:お母さんへ ごちそうさまです。美味しいですよ)


イギリスのマナーハウス主催の、「ダルメイン・ママレードコンテスト」というのがあるらしいです。
世界に門戸が開かれていて、日本や台湾からも続々と入賞している模様。(たしかジャバラママレードもあったような) (何千もエントリーがあって、どうやって審査するんだろうとも思います)
日本や台湾など温帯地域は、自分とこの柑橘でママレードが作れるという強みがありますよね。
イギリスは、ある意味ママレードの本場ともいえますが、柑橘自体は外国産ですし・・・。

コメント (3)
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実家の手すり

2023-03-13 | +実家・那須

突然あたたかくなってしまいました。
そして怒涛の花粉も。
心頭滅却していたら、もしかしてまた清潔で時間の止まったような、花粉のない冬が戻ってくるのではないか、と、しばしブログも書かずにふてくされて籠城(TV三昧?)していましたが、なんか、巷はもう花がいっぱい咲いちゃって。
梅は勿論、水仙が茶色だった地面に色をつけていて、見上げるとコブシが満開、モクレンもぽっかり開きかけです。
ほえぇ。
もう逆戻りはしないのね・・・。
あきらめて、ぼちぼち活動していきますかね・・・。花粉のばかぁ。ずびずび。

============

1月頃だったかな、実家に手すりをとりつけてきました。
今回は一階。
トイレや洗面所方向で、割と細かく方向転換する場所があるのです。

長~い棒と金物いくつか、工具を持って実家へ。
金物は、現場を見てから、実家近くのホームセンターで少々買い足しました。


まずは父に、実際のルートを通ってもらって、どのあたりに手をついているのか聞き取り調査。
(結構意外な場所を触っていることも分かったり)
で、それに基づいて場所を決め、仮止めしてみて、高さなどを決めました。
身長マイナス何センチ、などルールもあるのかもしれませんが、人により腰の曲がり具合や手を動かす範囲なども違うので、
やはり本人にテストしてもらうのが一番です。


それでは、手すりツアーを。

実家手すり

右側が階段、その末端に、階段に沿う角度で、斜めに小さな手すり。
そして左側のでっぱりに手すり。
右奥にも手すりがあって、それを右手で持って転回するとそこがトイレです。

一番奥、暗闇の左側にうっすら、もう1本の手すり。
これを左手で持って、左方向に転回すると、洗面所。
この手すりの壁を挟んで裏側、洗面所側にも、洗面所を出るときのための手すりがあります。

実家手すり

こちらがトイレの扉。
トイレに行くときは、この右の手すりを右手で持ちつつ接近していくことになります。

実家手すり

トイレの中にもつけました。
これはトイレ入ってすぐの右側の壁に、水平方向の壁。



実家手すり

こちらは便器付近の手すり。
よくあるように、縦と横の手すりを組み合わせてみました。


なんか、手すりの林のようになっています・・。

廊下が狭くなっちゃっているかも? とりあえずつけてしばらく使ってみて、いらない場所があったらとるかな?
と思っていましたが、父によると、
「いやー、これだけ沢山ついてると、全く悩むことなく次の手すりに手が届いて、便利。」
とのことです。

業者さんにつけてもらうと、一か所あたり〇〇円、だったりするのかな?
自分でできると、パーツ代だけで済むし、付け替えたり外すのも勿体なくないし、自由でいいです。
かつて父にDIYを習っておいてよかったです。


■メモ
次は金色のキャップを5個くらい買って持っていくこと。

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シャーナーメあらすじ:8.ロスタムの誕生

2023-03-06 | +シャー・ナーメあらすじ(挿絵付き)

白髪のザールとルーダーベの間に、息子ロスタムが生まれます。これはシャーナーメ中盤、ずっと活躍するヒーローです。
今回は、シャー・タフマスプ本ではなくて、他の写本から3つの挿絵を持ってきました。
挿絵がないと、文章を訳したり書いたりするやる気もでないということが分かったので、これからも足りない挿絵は他から借りてこようかと思います。
(シャー・タフマスプ本には白象退治の挿絵があるのですが、詳細画像で使えるものがなかったのです)

====================
8.ロスタムの誕生
====================

■登場人物
ザール:サームの息子で生まれつきの白髪。ザブリスタンの若い王。Zal
ルーダーベ:カボルの王女でザールの妻。Rudaba/Rudabeh
シンドゥクト:カボル王妃。ルーダーベの母。
ロスタム:ザールとルーダーベの息子。ルスタム/Rostam/Rustam
サーム:ザールの父でザブリスタンの先王。今は別の領地を治めている。Sam/Saam
ミフラーブ:ザールの領地内にあるカボルの領主。ルーダーベの父。
霊鳥シムルグ:ザールの幼少期の育ての母。

■概要
白髪のザールの妻ルーダーベは身ごもりましたが、大変な難産でした。
そこでザールは霊鳥シムルグを召喚し(シムルグと別れるときに、いざというとき助けに来ると約束した)、その助言で手術により息子を無事に授かることができました。
その赤子は生まれたときから途方もない大きさで、沢山の乳と食べ物を食べてぐんぐん成長して立派な体格になりました。
祖父サームは孫に会いにザブリスタンを訪問し、立派な孫に歓びました。
またその後、ロスタムは暴走する戦象をひとりで退治しました。
(なお、象退治のあと、ロスタムがシパンド山に行って蛮族を退治して、曾祖父ナリマンの敵を討つ場面もありますが、ここでは省略)

■ものがたり

□□ロスタムの誕生

ルーダーベの糸杉のようなほっそりした体型が変わり始め、腹は膨らみ、体は重く、薔薇色だった顔はサフランのように黄色くなってきました。
母シンドゥクトが訪ねました。
「可愛い娘、顔色が悪いわ。とても具合が悪そうです。」
ルーダーベは答えました。
「時が来たのに、私の中の重荷を産むことができないため一日中苦しんでいます。 私のおなかはまるで石を詰めたような、鉄の塊のような感じです。」
ルーダーベの苦しみは続き、眠ることも休むこともできませんでした。
ついにある日、ルーダーベは気を失ってしまいました。
侍女たちは悲鳴をあげ、シンドゥクトは取り乱しました。
ザールもなすすべがなく、彼女の枕元にやってきて涙を流して嘆きましたが、その時、育ての母、霊鳥シムルグの約束を思い出しました。
彼は気を取り直して少し微笑み、シンドゥクトに「心せよ」と告げ、火鉢を持って来て火をつけ、シムルグの羽を燃やしました。
するとたちまち空気が暗くなり、暗黒の雲から真珠の雨が降ってくるように鳥が現れました。シムルグが彼を助けるために来たのです。
ザールはシムルグの前に跪き、彼女を褒め称えました。
シムルグは彼に言いました。
「どうして私の獅子の目は涙で濡れているのでしょう。この銀の糸杉から、名声を求める子があなたのもとに生まれるのです。彼の声が鳴り響けば、豹はおびえて恐怖の中でその鋭い爪を噛み、戦場では鉄の勇気の戦士を震えさせます。糸杉の背丈、マンモスの力。彼の槍の飛翔は2マイルにもなるでしょう。
その赤子の誕生は自然なものではありません。善を与える方がそう望まれるのです。

彼をこの世に誕生させるためには、鋭いナイフと呪文に精通した呪術師を連れてこなければなりません。まず、ルーダーベを葡萄酒で酔わせ、彼女の心から恐怖と心配を追い払うのです。彼女は呪術師が呪文を唱え始めるのを見てはなりません。その者はルーダーベの腹を切り裂きますが、彼女は痛みを感じないでしょう。そして呪術師は赤子を引き出したあとに傷口を縫わなければならない。私が教える薬草を牛乳と麝香で練り、日陰で乾燥させなさい。これを傷口に塗って擦り込めば、一日で治るでしょう。そして私の羽で彼女の体を撫でると、その影が良き兆しをもたらすでしょう。
この大樹を与えたのは神であり、この大樹は日毎に大きな幸福をもたらします。いまこのような事態になっても悲しまないでください。あなたの尊い苗木は実を結ぶのです。」
彼女は翼から羽をむしり取って落とし、上空に飛んで行きました。
ザールはその羽を拾い、シムルグに言われたとおり、呪術師を探しに行きました。
シンドゥクトは、どうやって横から赤ん坊を出すのだろうかと気を揉み、涙を流しながらルーダーベに付き添いました。
ここにようやく腕のいい呪術師がやって来て、ルーダーベに葡萄酒を飲ませました。そして彼女の脇腹を切り裂き、赤ん坊の頭を開口部の方に向けると、苦痛を感じることなく赤ん坊を取り出しました。このような不思議なことは誰も見たことがないほど、呪術師は無痛で子供を取り上げたのでした。

BL3540
●ルーダーベが手術により子供を産む
(IO Islamic 3540, f. 54r, British Library)

その子は獅子のように立派な男の子で、大きくて凜々しく、見るからに愛らしい子でした。生まれて一日なのに、12ヶ月の子ほどの大きさでした。この巨大な赤ん坊を見た者は皆、思わず驚きの声をあげ、驚嘆して彼を見つめるのでした。
母親は一昼夜、ワインの効果で眠り続け、何が起こったのか知りませんでした。呪術師は彼女の傷を縫い合わせ、シムルグが説明した塗り薬を傷跡に擦り込みました。
彼女が眠りから覚めてシンドゥクトに話しかけると、居合わせた人々は神に感謝し、宝石や金貨を彼女に浴びせ全能の神を称えました。
彼女は自分の立派な赤ん坊を見て、その中に王としての栄光の兆しを見たので微笑み、
「私は危険から逃れ、私の苦しみは終わりました」と言い、その男の子をロスタムと名付けたのです。

彼らは、生まれたての赤子と同じ大きさの絹の人形を縫い、セーブルの毛皮を詰めました。その顔は太陽や宵の明星のように輝いていました。その上腕に龍を描き、手には獅子の前脚を描き、腕の下に槍を挟み、片手に棍棒、片手に手綱を握らせました。そして、召使いに囲まれた馬の上に座らせ、このロスタムの像を祖父サームのもとに送りました。
ザボレスタンからカボルまで祭りが行われ、平野はすべて喇叭の音と葡萄酒を飲む声で満たされ、王国のいたるところで百人の客を招いた宴会が開かれました。カボルではミフラーブがその知らせを喜び、貧者に銀貨を浴びせかけました。ザボレスタンには音楽家がいたるところにいて、平民と貴族は一つの布の縦糸と横糸のように親しげに混じり合って座っていました。

使者が赤ん坊のロスタムの姿をサームに見せると、サームの髪は喜びでツンツンと逆立つほどでした。
「この人形は私に似ているではないか。もし彼の体がこの半分の大きさでも、彼の頭は雲に触れるだろう。」
そして、使者を呼び寄せると沢山の褒美を与えました。サームは酒と楽人を呼び、貧者に銀貨を配り、マザンダランとカルグザランの地を飾り立て、太陽と月が驚いて見下ろすほどの宴会を開きました。
そしてザールの手紙への返答を使者に告げました。
まず創造主、そしてザール、ルーダーベの二人にもたらされた幸運を祝福しました。そして贈られたこの人形を愛し気に見つつ、
「息子をそよ風もあたらないほど大切にするように。
私は全能の神に、汝の種からなる息子を無事もたらすよう、昼も夜も密かに祈ったのだ。 この祈りが叶った今、この子が立派な勇士になるのを見る日まで自分が生きるよう祈るばかりだ。」

ロスタムに乳を与えるために、10人の乳母が用意されました。
やがて乳離れしたロスタムの食事はパンと肉で、大の男五人分を食べ、人々はその食欲に驚きました。 彼の身長が8(諸説あり、8スパンだとすると180cm、8歳の可能性もある)の高さになると、まるで立派な糸杉のようで、顔は星のように輝き、世間は驚きの目で見ていました。顔つき、体格、知恵、勇気など、サームそのもののようでした。

 

□□サームがロスタムに会いに来る 

「ザールの息子が獅子のように成長し、その戦士のような資質を持った若者を世界の誰も見たことがない」という知らせが勇者サームに届くと、サームの心臓は鼓動を早め、その少年に会いたいと思いました。彼は軍を指揮官に任せ、ザールの息子への愛情に導かれて、経験豊かな戦士の分隊と共にザボレスタンに向かいました。

ザールは父の接近を知ると、カボルの総督ミフラーブや、大勢の兵士たちと共に歓迎隊として出発しました。
大軍勢に囲まれて一頭の象が黄金の玉座を運び、その上に糸杉のような背丈と大きな肩と胸を持つザールの息子が座っていました。その頭には冠をかぶり、腰には帯を締め、体の前に盾を持ち、手には重い棍棒を持っていました。

サームの隊列が遠くに現れると、軍は2列に分かれ、ザールとミフラーブ―若者と熟練の戦士―は馬を降り、地面に頭を下げ、英雄サームに祝福を呼びかけました。
サームは象の背に乗った獅子の子を見ると、顔が花のようにほころびました。なんと立派に育ったことか。
彼は少年を象に乗せたまま近くまで来させ、その冠と王座をじっと見つめました。そして勇者サームは
「我が仔獅子、比類なき子に長寿と幸福を!」
と祝福の言葉をかけました。

BL3540
●ザールの一行がサームを出迎える
(Persian MS 910, f56b, The John Rylands Library, The University of Manchester)

ロスタムは象から降りてザールの鞍に口づけをし、新しい表現で祖父を褒め称えました。
「偉大なるわが主に栄えあれ。あなたという丈夫な根から、私ロスタムという新しい芽が生まれました。私はお祖父様の献身的な奴隷です。私が生きている間、美食、睡眠、快適さは私を惑わさないでしょう。兜、鎧、弓、鞍、馬、棍棒と剣、敵と戦うためのこれらのものが私の人生のすべてです。
偉大なる閣下、私の顔はあなたに似ていると言われます。願わくば、戦うときの決してたじろぐことのない力もあなたに似ていますように。」 

象もシンバルも静止して静かになったなか、サームは彼の手を取り、目と頭に口づけをしました。
そして一行は笑顔で語り合いながらザブリスタンの宮殿に向かいました。到着すると黄金の玉座に座り、幸せのうちに宴を開きました。宴はひと月の間続き、その宴席では音楽が奏でられ、皆が順番に歌いました。

壇上の一角にはザール、反対側には棍棒を手にしたロスタム、そして二人の間には王家の栄光を意味するイヌワシの羽を王冠に差したサームが座っていました。サームはロスタムのすばらしい体格を感嘆して見つめ、ザールに向かって言いました。
「百代を問うとも、このような生まれ方をした者の話は聞かない。彼ほどの美男子も、彼のような背丈と肩を持つ者も、この世にはいないだろう。 さあ、この幸福を祝い、憂いを忘れて葡萄酒を飲もう。この世界は隊商宿だ。古い客は去り、新しい客がその場所を取る。」

ミフラーブはたっぷり飲んで、大いに酔って語りました。
「ザール殿やサーム殿、イランのシャーも、王冠も恩寵も、どうでもいいのだ。
私とロスタム殿、そして私の剣と馬シャブディズ、どんな雲も我々を覆い隠さない。向かうところ敵なしだ。
私は先祖ザハクの流儀を復活させ、この足の下にある塵を純粋な麝香に変えよう。そして金に糸目をつけず、彼の武器を手に入れるのだ。」
もちろん彼は冗談で言ったのです。ザールとサームはその言葉に喜びました。

ひと月の滞在の後、サームは自分の領地に戻ることにしました。
出発の日の明け方、彼はザールに言いました。
「私の息子よ、公正で、イランのシャーに忠実であれ。富よりも知恵を選び、常に悪い行いから離れ、日々に神の道を求めよ。公の場でも私的な場でも、必要なことは一つであることを知るがよい。私がかつて犯した過ちとやり直しを見て、正しい道を歩んでくれ。」
こう言って、息子と孫に別れを告げ、その言葉を忘れないようにと諭しました。
鐘と喇叭が鳴り響くなか、サームは西に向かって旅立ちました。
息子と孫は、従順な気持ちで頬を涙で濡らしながら三行程を共にし、またシスタンに戻りました。


□□ロスタムが白象を退治する□□

ある日のこと、庭で酒宴が開かれ、ハープの弦が甘い音色を奏でる中、戦士たちは皆、陽気に騒ぎ、おおいに酔うまで水晶の杯で葡萄酒を飲んでいました。機嫌がよくなったザールは息子にこう言いました。
「我が子よ、太陽のように優美な子よ!汝の戦士のために栄誉の衣を用意せよ。高位の者には駿馬を与えよ。」
ロスタムは戦士たちに黄金とアラブ馬、そして他の贈り物も与え、皆は喜びに浮かれて帰って行きました。
その夜、ザールはいつものように涼しい東屋を探し、ロスタムは自分の部屋に引き返し、横たわって眠りました。
突然、ドアの外では、叫び声が上がりました。
「王の白い戦象が暴れて逃げた!民衆が危険にさらされている!」
それを聞いたロスタムは、祖父サームの棍棒を持ち出し、通りに向かって走り出しました。
門番は彼に反対しました。
「お止め下さい!この暗い夜に象が暴走しているのです。殿が行くことは認められません。」
その言葉に怒った無敵のロスタムは彼のうなじを叩き、彼の頭は転がってしまいました。
ロスタムが他の守衛を見やると、皆、背を向けて逃げて行きました。そこでロスタムは大胆に門に駆け寄り、激しい打撃で鎖やボルトを打ち壊し、勇ましく棍棒を肩にかついで風のように出て行きました。

彼は、山が轟き、その下の地面が煮え立つ鍋のように揺れるのを見ました。道にいる戦士や貴族たちが散り散りに逃げるなか、彼は海のように咆哮し、勇敢に立ち向かって行きました。
その獣は山のように彼に襲いかかり、鼻を持ち上げて激しく襲いかかってきました。
しかし、ロスタムがその頭に棍棒で一撃を加えた次の瞬間、巨大な象は力を失いうずくまりました。そして体全体を震わせると、鼻で弱々しく力のない一撃のそぶりを見せたあと、崩れ落ちました。

MS932-f64r
●白象に槌を打ち下ろすロスタム 
(Persian MS 932, f64a, The John Rylands Library, The University of Manchester)

こうして、あの咆哮する象は倒れ、無敵のルスタムは再び自分の場所に戻り、眠りました。

さて、太陽が東から昇り、麗しい娘の頬のように空が明るくなったとき、ザールはロスタムの昨晩の行いを聞きました。
荒れ狂う象に立ち向かい、一撃でその首を折り、その体を地面に投げ捨てたことを。
彼は叫びました。
「何ということだ。その強大な戦象は、かつて戦場で紺碧の海のように咆哮していた。その強い獣は何度突撃して敵の軍勢を打ち負かしたことか! しかし戦場で如何に征服しようとも、我が息子はそれに勝ったのだ!」

 




■シャー・タフマスプ本の細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル※ タイトル和訳 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
f092v 92 VERSO  Rustam slays the white elephant  ロスタム、白象を退治する  Tehran Museum of Contemporary Art, Tehran, Iran 詳細画像非公開Hollis  

 

■それ以外の写本からの細密画

サムネイル ページ番号 画のタイトル タイトル 所蔵館と請求番号 画像リンク先 備考
BL3540 f.54r The birth of Rustam. ロスタムの誕生  British Library, IO Islamic 3540 カタログ
f. 54r
 
BL3540 f.56v The young Rustam, crowned, armed, and mounted on an elephant, meets his grandfather Sam, Painter A. ロスタムが象の上から祖父に挨拶する  The John Rylands Library, The University of Manchester, Persian MS 910 カタログ
f. 56b
 
BL3540 f.64r Rustam kills Zal's white elephant. ロスタムがザールの白象を退治する  The John Rylands Library, The University of Manchester, Persian MS 932 カタログ
f64a
 

■細密画解説(本や所蔵美術館の解説より適宜抜粋)
●92 VERSO  Rustam slays the white elephant ロスタム、白象を退治する
〇Fujikaメモ: 
詳細画像がみつからなくて残念。

●ロスタムの誕生
〇Fujikaメモ:
このシーンで呪術師として出てくるのは(文面からは男性かと思ったのですが)この絵を見るとおそらく女性ですね。
粗末な服で、赤ちゃんを引っ張り出している年配の女性がその呪術師だと思われます。
(他の写本では、男性のような人が赤ちゃんをとりあげているのもありました。男性が後宮に入るのは相当ハードルが高そうですが・・)
出産は女部屋の内部でのイベントのようで、夫のザールは左側の塔の上にいて、立ち会うことはできないようです。

文章からすると出産時にはシムルグはいませんが、この絵にシムルグを描き込んでいるものもありました。
あと、(ザールがいて?)シムルグの羽根を描いていたり。
この写本には、シムルグの痕跡は何もない感じです。

●ロスタムが象の上から祖父に挨拶する 
〇Fujikaメモ:
そんなに名シーンではない気がしていたのでこれの挿絵があってびっくりでした。
跪いている二人のうち、ひげと眉が灰色(白)なのがザール、そうでない方がミフラーブでしょうか。
馬上で手をさしのべているのがサーム。
象の上のロスタムは、りりしく若々しいです。
文中では、ロスタムはあっという間に8スパン(180cm)に育ったとありますが、原典では、「8」とだけあって、「スパン」としたのはとある注釈者だそう。8歳の大きさ、という意味にもとれるのかもしれません。
この絵では、180cmではなく、もうちょっと子供らしいサイズ感です。
馬の蹄や横顔は割とリアルっぽいですが、象の足先がなんか肉球っぽくなってしまっているのが、かわいいです。

●ロスタムがザールの白象を退治する
〇Fujikaメモ:
これは、いろいろな写本に挿絵が描かれている名シーンです。
(象が可哀そうとかそういうことはここではおいておきましょう)
ロスタムがはだしで、とるものもとりあえず出てきた感じになっています。
他の写本では、象が鈴や布で飾られていたり、ロスタムがもっとちゃんとした服を着ていたりするものがあります。
あと、この絵は建築物が全く見えない屋外(郊外)ぽいですが、他のものでは、室内では?と思うような挿絵もありました。



■■他のシャーナーメ写本
ケンブリッジ大学のシャーナーメプロジェクトのロケーションインデックスで、各国の蔵書の概要が分かります。
ただし、オリジナルサイトへのリンクがないので、いくつか整理してみました。
(おそらくシャーナーメプロジェクトの方が成立が古いため)
基本的に、1500年代(16世紀)前後のものに着目しています。

■ブリティッシュライブラリーのシャーナーメ写本
挿絵があって、webで見られるのは次の二つのようです。
Add MS 18188
カタログによる解説:
「序文なしのシャーナーマ。Ghiyās al-Dīn Bāyazīd Ṣarrāfによって 891/1486 年に複製され、Turkman/Timurid 様式の 72 のミニチュアで描かれています。」
このカタログに挿絵のリストとリンクあり。
私の勝手な呼び名:「キリンブチのラクシュのシャーナーメ」

●IO Islamic 3540
カタログによる解説:
「かつてウォーレン・ヘイスティングス (1732-1818)が所有していた Firdawsī の Shahnāmah の精巧で華麗に装飾された写本。4つのイルミネーション。57 ミニチュア」
このカタログに挿絵のリストとリンクあり。
私の勝手な呼び名:「すっきり眉毛のシャーナーメ」

●そのほか、写本全体はデジタル化されていない挿絵について、キーワードで検索できます。
検索結果はダウンロード可ですが、高解像度のものは有償(ええっ!)。
British Library Images Online


■マンチェスター大学ジョン・ライランズ図書館のシャーナーメ写本
挿絵があって、webで見られるのは次の二つのようです。

Persian MS 910
カタログによる解説:
「100 のイラストを含む優れたコピー。16 世紀前半と後半の 17 世紀初頭のサファヴィー朝の画家の 2 つのグループによって完成された多くのシーンには、多くの歴史的な修復と合わせて、おそらくインドで行われたように思われる塗り直しの兆候が見られる。」
私の勝手な呼び名:「素朴だが後半充実のシャーナーメ」

Persian MS 932
カタログによる解説:
「この壮大な写本は、おそらく 1542 年にシラーズで完成し、ジョン ライランズ図書館に保管されている 9 部のうちの 1 部であり、38 枚の挿絵を特徴としており、そのうちのいくつかは通常の描写スキームから逸脱しています。ペルシア語翻訳者のターナー・マカン (1792–1836) は、以前この巻を所有しており、 1829 年にテキストの最初の重要なペルシア語版を出版したときに彼が参照したいくつかのコピーの 1 つです。」
私の勝手な呼び名:「白地面にかわいい花のシャーナーメ」

■ニューヨーク公共図書館
Spencer Coll. Pers. ms. 3
17世紀初頭。シラーズで作られたものか。
私の勝手な呼び名:「小さい挿絵のシャーナーメ」

■プリンストン大学のシャーナーメ写本
Islamic Manuscripts, Third Series no. 310(通称The Peck Shahnama)
カタログによる解説:
「45 の高品質のフルページのミニチュアと 998 H [1589 または 90] の日付のシーラーズ派の 3 つの見開きページの構成を含むシャーナーマの贅沢に装飾されたコピー。シーラーズでサファヴィー朝の王族のために作られたと思われる。」
挿絵の一覧は整理されていないようなので(書籍になってるかも)、見てもどのシーンかわからないものもあります。
このビューワーではフォリオ番号は分からないです。
左側に縦に並んだサムネイル群から挿絵を探すことができます。
うち12枚分の画像タイトルとフォリオ番号

私の印象では、物語、つまり人物表現に重きを置いて、不必要な背景の草花や調度品等は省略気味です。
シャー・タフマスプ本にある、「ここまでしなくても」という密度の高さはあまりなし。
噴水を囲む赤御影石の、小豆色に白い結晶が散らばる様子を、規則的な白点で表現してしまっているところは、師匠によるアシスタントの監督不足かと思ったり。

■ドイツのシャーナーメ写本
図書館横断東洋写本検索サイトQalamos による「Firdausī」の検索結果

Ms. or. fol. 359(ベルリン州立図書館蔵)
16世紀制作。
私が勝手に名付けたのですが、「小花柄シャーナーメ」。
絨毯や壁のアラベスク模様が、地色や描画色を変えつつ、ほぼ一種類の模様でまかなわれていて、それが小花柄のように見えます。
こういう柄が流行っていたのかしら?省力化? とはいえ、これがひとつの個性になっています。(下図、丸印四か所は柄が同じ)

Msorfol359-f105v

BSB Cod.pers. 10 (ミュンヘン、バイエルン州立図書館蔵)
1560-1750頃制作。
さまざまな時代の多くの (約 215) の素晴らしいミニチュアを含む非常に素晴らしいコピー。
215 のイラストを含むこの写本は、ペルシャの王の書であるシャーナーマの最大の絵のサイクルの 1 つ。さまざまな時期に働いていた何人かの画家がその細密画に関与した。したがって、ミニチュアはスタイルが均一ではない。4 つの異なるグループが識別でき、2 つの最も古いグループは 16 世紀のもの。最初のグループの細密画は、多くの人物を含む大規模な構成を示しており、鮮やかな色を使用して詳細に実行されている。2 番目のグループの細密画は、構図と人物画に関して品質が劣る。3 番目のグループは、17 世紀初頭に追加された、イスファハンの宮廷様式の 2 つの原寸図で構成されている。しかし、4番目のグループは、イランの伝統とは関係がないと思われるミニチュアで構成されており、インド起源の可能性がある。この写本の最良のイラストのいくつかは、1565 年以前にマシュハドのスルタン イブラーヒーム ミルザーの宮廷で描かれた可能性がある。

 

 

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チョコの箱(貼り箱):2023

2023-03-03 | +紙工作

12月に、台湾土産用に結構な量のチョコがけを作ったのでした。
なので何だか2月になってもチョコレート気分が盛り上がらず。
1月も2月も、街に出る機会が一度なく、心躍るバレンタインフェアに、一切縁がなかったのも原因かもしれません。

でも、やっぱちょっとぐらいは作ってみようかしら。
長年謎だったレシピを、試してみたい気がします(不穏な予感もするけど)。
とりあえずチョコレートを500g買って、あと、生クリームを買って、そしてそれから箱作り!
(生クリームをまず買うことで自分を追い詰めてみました)

箱は、気分が箱モードにならないと、かなりめんどくさいです。
しかも貼り箱、2021年に初めて作って3回目かもしれないけど、1年経つともうやり方忘れてしまって・・・。
Youtubeで復習して、あと糊も買ってきて、なんとか作りました。
(糊ベタベタの紙を抑えるのに、プラスチックの櫛がいいと今回発見!)

フタの方の箱はある程度用意されていたので、それに壁紙サンプルを貼って、あとミと仕切りなどなど。
始めてしまえば1日半ほどで結構作れます。

部屋を散らかしまくってるけど、片付いた部屋をキープするためにTV見てるだけより、いいよね。終わったら片づければよいのだ。

貼り箱

とりあえず、フタの箱が準備されていた、15個分。

右の列、華やかな柄で、元気が出ます。
壁紙サンプルなので、いい柄のところが来るとは限らない、というのが、左と中の列の上から2個目。花はなくて茎ばっかり・・・。

貼り箱
貼り箱

中の列の真ん中とその下は、白地に花模様で似た感じに見えますが、質感は全く異なります。真ん中は印刷ですが、その下は版画のように捺染?してあるのです。

 


写真うつりはいまいちですが、左列一番下のゴールドの濃淡のものも私は好き。

みなさんどれが好みでしょうか。


貼り箱

鏡の縁を塗った時のあまりの金色塗料があったので、ちょっと地味なものにゴールドを足してみました。

貼り箱

こちらも。
葉脈をちょっと塗って、あと、どんぐりも金色になりました。

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干柿ペースト入りフルーツケーキ

2023-03-01 | +お菓子(西洋)

年末だったかな、合間をみて、気合でフルーツケーキを作りました。
台湾の知人に配るおみやげのひとつとして。

フルーツケーキ

自分用においておいたものを、先日撮影。
実はこれにも、柿ペーストが入っています。

バターなしフルーツケーキの一回目の試作の際、試作分の量を減らし、余ったペーストを、迷いつつもフルーツケーキのほうに回したのでした。
作った直後に一切れ食べてみたところ、時折うっすら干し柿の風味がしましたが、その後ブランデーをしみ込ませて熟成させておいたところ、全体がよくなじんで、柿の風味は薄れてきました。
いろいろなドライフルーツがあいまって、なかなかいい風味。
混迷の形跡は見当たりません。

もし次またカット干し柿が余ったら、こっちだな・・・。
(まだあの2回目の傷がうずく・・・)

 

コメント (2)
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