沖縄に行かれた楽子さんから、珍しいお菓子を頂きました!
(楽子さん、ありがとうございました!)
謝花(じゃはな)きっぱん店の・・ |
|
きっぱん(橘餅)と、冬瓜漬(とうがんづけ)です。 |
上の白い袋入りのものが橘餅。
きっぱんは、約300年前に福州(いまの福建省。台湾の対岸あたり)から沖縄に伝えられたといわれているものです。
沖縄で作っているお店はもはや1軒のみで、売り切れることもあるので事前に予約が必要という貴重で高価なお菓子です。
食べてみました。
中味部分は、甘さはかなり控えめで、酸味もほとんど感じない程度。
一番感じるのが柑橘の皮特有のほろ苦さと香りです。
原料のみかんは、「九年母」(クネンボ/クニブ。大きめで熟すとオレンジ色)や「カーブチー」(みかんサイズで皮が厚い。酢用ではなくおやつ用の甘い柑橘)などの柑橘類だそうです。
人によっては苦手という人もいるようですが、柑橘大好きな私は、ほろ苦くてとっても好みの味です。
オレンジベースに緑がぽちぽちと散らばる色からすると、ほどよくオレンジ色に熟したクニブと、緑色の状態のカーブチーを使っているのではないかと思われます。
緑色の皮を使うことで、(グリーンレモンがレモンとは違う香りなのと同様に)独特のいい香りを生み出しているのではないかしら。
割としっかりめの、もっちりした歯ごたえです。
アイシングと同時に食べると、丁度良い甘さで、チーズやワインとも合いそうです。
フランス人やイタリア人に食べさせてみたい!
柑橘ピールを研究中の私には、このきっぱんはなかなか興味深いです。
調べてみたものの、詳細な製法は分かりませんでしたが、あちこちつなぎ合わせて想像すると次のような感じ。
(どこかに書いてあった部分には下線をひいてみます。残り部分は想像です。)
■■橘餅の作り方(想像)
(1)クネンボ(大きい橙色の柑橘)の表面のツルツルしたところを削り取る。
(2)クネンボを横半分に切り、ザルごしに果汁を絞る。(種が沢山ある)
カーブチー(みかんサイズ)も半分に切り、果汁を絞る。
(3)半割の柑橘から、じょうのうを取り除く(もしかしたら取り除かないかも)。
(4)カップ状の皮を、一度茹でこぼし、水洗いし、一晩(冷蔵庫で)水に晒す。
(5)晒しておいた皮を、細かく刻み(ピュレ状にはしない)、砂糖、絞った果汁、こんにゃく粉とともに長時間煮詰める。
(6)ほどよい固さに煮上がったら、あたたかいうちに(?)直径5cm程度の餅状に丸め、2日程度乾かす。
(7)ほどよく乾いたら、表面に砂糖衣を手で塗りつけ、桐箪笥に入れて1日程度乾かす。
(8)完成までののべ所要日数は丸5日間。
橘餅で検索したところ、製造に5日もかかる、ということに感動しているブログをあちこちで読みましたが、柑橘のピールやコンフィは基本的にそういうものなので、その点にはさほど感激しないです。
それに家庭では作れないと書いてあるものも読みましたが、手作りに慣れている人であれば、材料が手に入れば、モドキであれば作れそうな気がします。
例えば、ベジタリアンブロガーのヘロヨンさんは、夏みかんのワタ部分でワタ羊羹を作っていました(砂糖衣はなしですが)。橘餅を意識した訳ではないかもしれませんが、結構似ているのではないかしら。
でも、モドキは作れても、ホンモノとは違う(であろう)ところがやはり伝統の重み。
現当主は5代目で、まだ30代の女性(パンキュビッチ久乃さん)です。
イギリス滞在中に知り合って結婚されたイギリス人のご主人とともに、このお店を支えるために帰国されたとか。
沖縄で1個350円のお菓子を売るのは結構大変でしょうけれど、伝統を受け継ぐためにも頑張って欲しいものです。
このきっぱんは、美しいけれど進化の袋小路に入ってしまった絶滅危惧種を思い起こさせます。
メーカーが何件かあれば、伝統に縛られず応用品(例えば橘餅のチョコがけ等)を作ってみるお店も出てきて、相互に「新味」(庶民派)、「元祖」(伝統重視派)などとと競合し、販売を拡大することも出来るかもしれません。
でもたった1軒では。
この先、「自由な進化」はあまり出来ず、それゆえ細々としか作られないように思えます。
ある程度の「入手しにくさ」を保ち続けることが、生き残るための正しい戦略なのかもしれませんが。
一方で原料の九年母は、単にいい香りなだけでなく、機能面でも注目する成分を含むとか。
桔餅だけでなく、様々な製品(和菓子・洋菓子・お酒など)に活用されて、沖縄の名物になるといいな、と思います。
■■参考情報
(1)謝花きっぱん店HP
通販もありますがきっぱんのばら売りは通販ではなし。
(2)謝花きっぱん店の紹介 (沖縄情報webマガジン CALEND OKINAWA)
砂糖衣をまぶした橘餅をしまう桐箪笥や店主ご夫妻の様子など写真多数。
(3)きっぱんについての沖縄タイムス掲載記事 (謝花きっぱん店ブログ)
作り方が比較的詳しく説明してあります。
(4)沖縄のクニブ、カーブチーについて
九年母(クニブ)の語源はなんとサンスクリット語までたどりつくとか。
ライム一般がnimbuで、kuは指小辞の接頭語ということだそうです。びっくり。
(5)沖縄大百科 カーブチー
カーブチーは沖縄在来の固有柑橘の一つ。
大きさは温州みかんほどで皮が厚く、種が多い。汁は少ないが、酸味が少なく素朴な味わいが特徴。
「カーブチー」とは、「皮がぶ厚い」という意味。面の皮が厚い人のことを「カーブチージラー」と比喩することもある。また、秋の運動会の時期に穫れるので「運動会みかん」とも呼ばれている。
(6)沖縄柑橘データベース カーブチー クネンボ
クネンボは、室町時代後半に日本に導入されて以来、大きめの生食用柑橘として人気の品種で、江戸時代に紀州ミカンが普及するまでは、関東地方にまで栽培地域が広まっていったのだそうです。
その後は適地である暖地でのみ生産されて、なんと大正時代(!)まで沖縄(から本土へ)の主要な産品でした。1919(大正8)年に防疫のため沖縄から移出出来なくなり、その後生産が激減し、次第に別の品種にとってかわられ、各地に数本ずつ残る程度になったとか。
(7)ヘロヨン食堂 夏みかんのわたようかん
(8)台湾の金橘餅
台湾で「金橘餅」というと、金柑の甘露煮を干したもののようです。
福建省と台湾はつながりが深いため、探せば沖縄の橘餅に似たものが台湾にもあるかもしれません。
なにしろ、柑橘類の皮を剥いて中身だけ食べる、という食べ方ができなくなってしまったんですもの。皮こそ食べるべし、と思ってしまうんですもの。
興味深い記事を、さんきゅびっちでした。
きっぱん、ピール手作り派には興味深いですよね。
ピールと違い、皮のワタ状の組織を粉砕して煮固めているので、しあがりはもっちり、ではなくシッカリした感じになります。
かみしめる感じがあって美味しいものでした。
クネンボのピールやママレード、いつか作ってみたいですよね!