【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「恋の罪」

2011-12-18 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


主演は水野美紀かと思ったら、神楽坂恵だった。
人気小説家を夫に持つ貞淑な主婦が大学の女性助教授に惑わされて、闇の世界へ堕ちて行く。
主婦を演じるのが神楽坂恵。助教授を演じるのが冨樫真。彼女たちのかかわった殺人事件を追う刑事が水野美紀。
渋谷、円山町のホテル街で実際に起きた一流企業OL殺人事件からインスパイアされたっていうけど、場所が円山町なだけで、まったく別の物語。
父親とのトラウマから異常な行動に出る冨樫真、彼女に心の隙を突かれて堕ちて行く神楽坂恵っていう構図が、なんだかひどくわかりやすい。
いつもグダグダの映画をつくる園子温監督にしては、ずいぶんすっきりした図式の映画ね。
それだけに、表面的にはいつも通り目も当てられないような強烈な映像がふんだんに出てくるんだけど、衝撃度は意外に薄い。
彼の映画に慣れちゃったのかしら。
田村隆一の「帰途」を引用したりして、彼女たちの行動に文学趣味をまぶし、話を豊かにふくらまそうとしているんだけど、かえって安っぽい言い訳のようにも見える。
むしろ、神楽坂恵が鏡の前で練習する「いらっしゃいませ、おいしいですよ」。ああいうシーンのほうが人の業の奥深さを感じさせる。
説明になっていないからね。田村隆一の詩は説明になってしまっている。
刑事の水野美紀も不倫をしているんだけど、それが二人の女性の話とクロスしてこない。
殺人事件を追ううちに自身が迷宮に取りこまれてしまうっていうのが自然な展開なんだけど、そういうふうにはころがらない。
最後、取ってつけたようなシーンはあるけどね。
開巻直後の体を張った演技も、終わってしまえば、そこまでやることなかったんじゃないと思ってしまう。
監督に騙された?
普通の映画から見ればそうとうトチ狂った映画なんだけど、園子温監督にはもっともっとトチ狂ってほしいんだよな。



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