【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「未来を生きる君たちへ」

2011-08-16 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

NHKのテレビ番組みたいな日本題名も、英語題名の「IN A BETTER WORLD」も甘っちょろく感じるほどシビアな映画だった。
原題は「復讐」だもんね。
まさしく、暴力や憎しみの連鎖とその行きつく果てを描いたスサンネ・ビア監督の厳しくも切っ先鋭いドラマ。
先進国デンマークの一見平和な港町と、アフリカの不毛の大地のコントラストがまず凄い。
そこで展開される暴力の質はもちろん全然違うんだけど、デンマークとアフリカを行き来する一人の医師が介在することによって、天と地との開きがあるように見える暴力の質が実は同じ根っこを持っているということを感じさせる構成の妙。
デンマークで繰り広げられる暴力は学校のいじめとか隣近所のいさかいといった、社会的にはとても小さなできごとなんだけど、でもコミュニティの中ではとても重大なできごとで、一方、アフリカで繰り広げられる暴力は文字通り世界の悪がすべて象徴されるような残酷極まるできごとで、そのコントラストが凄いんだけど、それを等質な目線で捕えたところに震えが来ちゃったわ。
どんな世界にも暴力は存在すると暗示させる映画の構造にも目を見張るけど、それを描写する監督の硬派な演出力にも圧倒される。
アフリカの子どもたちの笑顔、デンマークの子どもたちのおどおどした目つき。彼らに大人たちは何を伝えられるのだろうという絶望と、かすかな希望。
とにかく、デンマークの子どもたちのたたずまいがいい。
いわゆる美男子系とちょっと崩れた系のコンビが、あの年代ならではの闇と純粋さを併せ持っているっていうところがね。
一方、彼らの父親でもある医師は、暴力はいけないというおとなの節度、絶対の信念を持っているのに、究極の選択を迫られる中で感情を爆発させてしまう。
それを人間的と呼ぶか非人間的と呼ぶか。とっても難しいところよね。
お前ならどうするって迫られるような、難しい線上を歩かされているような映画だよな。
子どもたちの行動にも一理あると思ったり、おとなたちの言動こそ正しいと思ったり・・・。
デンマークのできごとは最悪の一歩手前で止まるんだけど、アフリカのできごとは最悪の一歩手前で終わったと言えるのかどうか。
デンマークのできごとだって実はまだわからないわよ。車を爆発させられた男の反応が描かれていないんだから。
でもまだ救いはあるっていう終わり方だ。
かすかな願望ね。BETTER WORLDに対する。


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