風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

NHK交響楽団 第2000回定期公演 Aプロ @NHKホール(12月17日)

2023-12-31 01:54:43 | 日々いろいろ




この演奏会で、過去最多だった私の演奏会尽くしの一年も〆。

N響の記念すべき第2000回定期公演。第1000回は37年前だったといえばその稀少さがわかるというもの。
同じペースていけば、第3000回は37年後。その頃私はどうしているかな…。

マーラーは1番、2番、9番しか聴いたことがないので、今回聴く8番ももちろん初めて。
「一千人の交響曲」という大層な名前が付けられているけれど、初演時の演奏は実際に千人規模の編成だったとのこと。
もっとも今回のN響は300人くらい?だったようですが、それでも普段私が聴く演奏に比べれば十分に大編成で、舞台が人と楽器で埋め尽くされていました

この曲自体は予習で聴いたときは、第一部の大編成で主張される「神を称えよ!」が煩く感じられて辟易してしまいマーラーが嫌いになりそうだったのだけれど、実際に聴いてもその感覚が完全に払拭されたわけではなかったのだけれど、ところどころで聴こえてくる「マーラーな音」が楽しかった。
個人的には、この曲は第二部の方が美しさが感じられて好きだな。それでも予習のときは全く良さがわからなかったのだけれど。今日の演奏では、途中で(私が)中だるみしつつも、壮大なフィナーレの音の響きの美しさは圧倒的で、嫌な感覚を覚えることなく「音の宇宙」を実感することができました。
録音で聴きたい曲ではないけれど、生で聴くと楽しいですね。N響の弛緩することのない集中力のある演奏も、とてもよかった。なにより、苦手なこの曲を音楽的に楽しむことができたのは、ルイージの品よく開放的でドラマチックな音楽作りのおかげが大きかったのではないかと想像する。

第2000回という記念すべき公演をこうして聴くことができて、イベント好きとはいえない私も、なんだか幸せな気分になることができました。最後にホールを満たしたあの音の宇宙の色とともに、忘れない公演となりました。
まぁ、好きな曲か?と言われると、今もそうとは言えないけれど(マーラーに限らないけど、女性に無条件の愛と救済を求めるような夢見がちな歌詞にもあまり共感できない…)。
そうそう、バンダを照らす?左右のライトがここぞというときにオンになって、その効果も楽しかったです🎵

駆け足で感想をあげてしまったけれど、今年の感想を今年のうちにあげることができて、ほっとしました。音楽に浸りきることができたこの一年、本当に幸せでした。来年はどんな年になるのか想像がつかないけれど、良い年になるといいな。

皆さま、今年も当ブログにお越しくださり、ありがとうございました。

よいお年をお迎えください!

 

ソプラノ:ジャクリン・ワーグナー
ソプラノ:ヴァレンティーナ・ファルカシュ
ソプラノ:三宅理恵アルト:オレシア・ペトロヴァ
アルト:カトリオーナ・モリソン
テノール:ミヒャエル・シャーデ
バリトン:ルーク・ストリフ
バス:ダーヴィッド・シュテフェンス

合唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団

[Aプログラム]のマーラー《交響曲第8番「一千人の交響曲」》は、ファン投票により、3つの候補曲から選ばれた。名前通りの大編成を必要とするため、100年近い歴史を持つN響が演奏するのも、今回でようやく5回目である。戦後間もない山田和男(一雄)指揮の日本初演に続き、若杉弘、デュトワ、パーヴォ・ヤルヴィといった歴代のタイトル指揮者が、ここぞという時に取り上げてきた。マーラーへの思い入れの強さでは、ルイージも負けていない。彼の推薦する欧米のトップ歌手たち、そして大人数の合唱団がNHKホールに集結する。

実演でしか真価が伝わらない曲がいくつかあると思うが、この作品など、その最たるものだろう。マーラー自身は「これまでの交響曲は、すべてこの曲の序奏に過ぎない」と豪語し、初演も大成功を収めたが、ドイツの音楽美学者アドルノなどは「題材が崇高だからと言って、作品も崇高とは限らない」といった意味のことを述べているし、他にもこの曲に対する否定的見解は少なくない。確かに「聖なるもの」一辺倒で、猥雑な要素がない点は、マーラーの作品としてはかなり異色である。中世の讃歌(第1部)とゲーテの『ファウスト』(第2部)を無理につなぎ合わせたような構成も、一見不自然に感じられる。

しかし、圧倒的な音響空間に身を浸すことで、作品の全体像や、「宇宙の響き」を具現化しようとしたマーラーの意図に、多少なりとも迫れるのではないか。めったにない機会、生で聴くことを特に強くお勧めしたい。
N響HP








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クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル @サントリーホール(12月13日)

2023-12-31 01:36:30 | クラシック音楽




ショパン:
   ノクターン第2番 変ホ長調 Op. 9-2
   ノクターン第5番 嬰へ長調 Op. 15-2
   ノクターン第16番 変ホ長調 Op. 55-2
   ノクターン第18番 ホ長調 Op. 62-2
   ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 「葬送」 Op. 35


(休憩)

ドビュッシー:版画
シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 Op. 10
ラフマニノフ:13の前奏曲 Op. 32-12(アンコール)
ラフマニノフ:10の前奏曲 Op. 23-4(アンコール)


同プログラムを弾いた4日のSNSの感想で「ショパンが陰翳に乏しく流しているように聴こえる」というものを見かけたので、そしてツィメさんは時々そういう演奏をすることがあるので(そう聴こえることがあるので)少し心配していたのだけど、とんでもない。
今日のショパンは、ノクターンもソナタも、最初から最後までとても丁寧に真摯に弾いてくださっていました。
確かにOp62-2などはポゴレリッチの演奏などに比べるとサラサラと弾いているように聴こえるところもあったけれど、確信をもって弾いている音に、これはこれでツィメルマンの解釈なのだろうと感じることができました。

「ツィメルマンの音」で弾かれるドビュッシーもとても素晴らしかったけれど(ツィメさんはこういう曲もお得意ですよね!)、演奏会後に印象に残ったのは、やはりポーランドの音楽であるショパンとシマノフスキでした。
ポーランドの血の音というか、魂の音というか、そういうものを強く感じた。
(録音で弾いていなかった終曲の星がキラキラ見えるような高音のフレーズ部分を今日は弾いていたように感じたのだけれど、気のせいかな

アンコールのラフマニノフも素晴らしかった。4日のアンコールはop.23-4の一曲のみだったそうなので、今日は二曲弾いてくれて嬉しかったな。Op.32-12はシマノフスキの曲?と思ったら、ラフマニノフだった。
「ツィメルマンの音」で弾かれるラフマニノフがこんなに素晴らしいとは、意外でした。
濃厚なコッテリさがあるわけではないのに、アッサリ軽いわけでもなくて。うまく言えないのだけど、正面からの真っすぐな美しさと深みが真っすぐに心の奥に届く。
唯一無二のピアニストだな、と改めて感じました。
一昨年に続いてこんな演奏を聴かせてくれて、心から感謝です。

このリサイタルでは、彼のヒューマニストとしての側面も改めて確認した。ピアノ・ソナタ(ショパンのピアノソナタ2番)の前、「武器で物事を解決することはできない。にもかかわらず、EUはこの不必要な戦争をさらなる武器をもって解決しようとしている」とドイツの聴取の前で語ったのである。この夜の最後には、「戦争で犠牲になった双方の側の息子たちに、ロシアの作曲家の作品を」と言って密やかな小品を弾いた。ラフマニノフの前奏曲作品23の第4番「アンダンテ・カンタービレ」だった。

 クリスチャン・ツィメルマンというひとりのピアニストのリサイタルを聴きながら、現実の喜びや悲しみも含めて、自分が何か大きな世界につながっていることを実感させてくれるような稀有な夕べだった。

(中村真人:【海外公演レポート】ニュルンベルクのクリスチャン・ツィメルマン







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NHK交響楽団 第1999回定期公演 Bプロ @サントリーホール(12月7日)

2023-12-31 01:36:11 | クラシック音楽



ハイドン:交響曲 第100番 ト長調 Hob.I-100 「軍隊」
リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
アルヴォ・ペルト:アリーナのために(ソリストアンコール)

(20分間の休憩)

レーガー:モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ 作品132


私のハイドン好きを知っている音楽仲間がチケットを譲ってくださったので、有難く行ってまいりました。

改めて、ルイージは本当に良い指揮者ですね
ハイドンの「軍隊」はヤンソンス&BRSOで聴いて大感動した音楽なのでN響で感動できるかな?と実はちょっと心配だったのだけど、ルイージ&N響、素晴らしかった。
N響の音はもちろんBRSOのようなドイツ味たっぷりな音ではないけれど、ルイージの歌うハイドン、最初から最後まで引き込まれて聴いてしまいました。

リストの協奏曲を弾いたアリス・紗良・オットを聴くのは、昨年のパリ管以来。
彼女のピアノ、結構好きなんですよね、私。
あの軽やかな音の美しい響き、彼女の個性だと思う。
かつ低音もしっかり聴かせてくれるし、エキサイティングなライブの楽しさもしっかりくれる
ルイージ&N響の伴奏も、奥に引っ込むことなくしっかりピアノとの掛け合いを聴かせてくれて、大満足です。
ソリストアンコールの前にアリスが「音だけが音楽じゃない」のトークが始まったときに、アンコールはペルトだな、とわかりました笑(パリ管のときと同じトークだった)。

レーガーの「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」はルイージは初挑戦とのことだけど、素晴らしかった。モーツァルトの軽やかさと美しさから始まる、数々の変奏の楽しさ。構築的に歌い継がれていくそれに全く飽きる暇なく、最後のフーガまで連れて行ってくれました。ルイージって、美しいままドラマチックに突き抜けてくれるところがとても良い。そしてオケの音が開放的で自然。
これからまだまだこのコンビを沢山聴くことができるんですよね。幸せです


[Bプログラム]のレーガーは、今年生誕150年を迎えるドイツ後期ロマン派の作曲家。マーラーと親しく付き合い、《千人の交響曲》の初演にも立ち会ったという。
《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》は、有名な《ピアノ・ソナタ第11番》の第1楽章を主題に用いたもので、ブラームスの衣鉢を継ぎ、変奏曲を得意としたレーガーの真骨頂ともいえる作品である。おなじみの優美な主題とともに始まるが、それが途中で原形を留めないほどミニマムな単位に分解され、ついには耽美的な最後の変奏曲と、壮麗なフーガに行き着く。初演は第一次世界大戦の最中。“古きよきヨーロッパ”が失われることへの慨嘆と、旧世界へのノスタルジーが詰まっているかのようだ。記念イヤーにちなんで、ルイージはこの曲に初挑戦することを決意した。

レーガーが引用したモーツァルトの《ピアノ・ソナタ第11番》は、第3楽章のリズムから「トルコ行進曲つき」と呼ばれるが、前半の2曲では、トルコ軍楽隊ゆかりの打楽器が活躍する。
首都ウィーンがオスマン・トルコに包囲されたこともあるハプスブルク帝国。ハイドンが長く暮らしたハンガリーは、その領土の一部だった。トルコから伝わった大太鼓やシンバルは、常に身近に感じられる楽器だったに違いない。これらを使った《交響曲第100番「軍隊」》は、初演地ロンドンをはじめ、異国の文化を歓迎するヨーロッパの聴衆に大いに喜ばれた。
シンプルでごまかしの効かないハイドンの交響曲は、オーケストラにとっての試金石。昨シーズンは《第82番「くま」》を演奏したが、ルイージの在任中は、これからもコンスタントに取り上げるつもりである。

ハンガリー生まれのリストは、トルコ軍楽隊の楽器の模倣として使われ始めたトライアングルを、《ピアノ協奏曲第1番》で準主役に引き立てた。主題が巧みに変奏され、クライマックスに行き着く構造は、レーガー作品にも共通する。リストの《超絶技巧練習曲集》で華々しくデビューした人気ソリスト、アリス・紗良・オットが、久しぶりにこの曲に挑む。
N響HP





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K-BALLET TOKYO Winter 2023『くるみ割り人形』 @オーチャードホール(12月2日)

2023-12-30 17:44:41 | バレエ



時は19世紀初め。人形の国では以前よりねずみたちとの領地争いが起こっている。
ある日、ねずみの王様は人形王国に魔法をかけ、マリー姫をねずみに、婚約者の近衛兵隊長をくるみ割り人形に変えてしまう。
魔法を解く方法はただ一つ、世界一硬いクラカトゥクくるみを割るしかない。だがそのためには純粋無垢な心を持つ人間の力が必要だ。
人形の王から命を受けたドロッセルマイヤーはこの人物を探すため、人間界へと旅に出る。そこで出会った少女クララに待ち受けるものは……

久しぶりのKバレエ。
母親がテレビで熊川さんの特集番組を見て、観たい!とのことで、一緒に行ってきました。

実はくるみ割り人形のバレエを観るのは、今回が初めてです。
Kバレエ版はストーリーがオリジナルから変更になっていたり、音楽も多少いじっていたりと、ちょっと独特。
クリスマスの夜の幸福な夢の世界を存分に味わうことができました

舞台美術も素敵だったな~。
背景の部屋の窓が最初は夜なのだけれど、最後の翌朝の場面(クララが目覚める場面)では雪の積もった街の風景が見えていたり。
今回の席は舞台を斜め横から見えるR側のサイド席(バルコニー席ではなくサイド席)だったのだけど、多少の見切れはあったものの、ダンサー達の表情まではっきり見えて、背景美術もちゃんと見えて、とてもよかったです。あちらの世界への入口になっている時計がL側にあったので、それをちゃんと見られたのもよかった。

キャストも皆さんよかったです。特に世利さんのクララと杉野さんのドロッセルマイヤーのコンビにほっこりしちゃいました。
杉野さんのドロッセルマイヤー、カッコよくて、でも不思議な雰囲気も出ていて、素晴らしかった

塚越さん指揮のオケもとてもよかったな。
先日N響で全曲を聴いたときは「バレエなしで音楽だけも、世界を想像できていいな」と思ったものだけれど、こうしてバレエ付きで観ると、やっぱりバレエありは楽しいですね!チャイコフスキーの音楽の楽しさ&美しさと総合芸術であるバレエの素晴らしさを改めて実感しました。

カーテンコールの最後にバンって大きな音と同時に舞台左右からテープがとんで、メリークリスマス&よいお年を!的なメッセージが掲げられたのも、幸福な気分にさせていただきました(ロンドンで観たプリシラを思い出した)。その前だったか向かいのL側の扉から熊川さんが出ていく姿が見えて(いつから鑑賞されてたのだろう?)、それも素敵なクリスマスプレゼントになりました。一緒にいた母も喜んでた


指揮:塚越恭平
管弦楽:シアター オーケストラ トウキョウ

マリー姫:飯島 望未
くるみ割り人形/王子:石橋 奨也
クララ:世利 万葉
雪の女王:成田 紗弥
雪の王:吉田 周平
ドロッセルマイヤー:杉野慧 

キャスト表









Tetsuya Kumakawa K-BALLET TOKY Winter 2023『くるみ割り人形』

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ヴァレリー・アファナシエフ ピアノリサイタル @フィリアホール(12月1日)

2023-12-30 17:28:43 | クラシック音楽



・ポロネーズ第3番 イ長調 op.40-1「軍隊」

・ワルツ イ短調 op.34-2
・ワルツ 嬰ハ短調 o.64-2
・ワルツ ロ短調 op.69-2
・ポロネーズ 第2番 変ホ短調 op.26-2

(休憩)

・ポロネーズ 第1番 嬰ハ短調 op.26-1
・マズルカ ロ短調 op.24-4
・マズルカ 変イ長調 op.41-4
・マズルカ 変ニ長調 op.30-3
・マズルカ 嬰ハ短調 op.30-4
・マズルカ ハ長調 op.56-2
・マズルカ ヘ短調 op.63-2
・マズルカ 嬰ハ短調 op.63-3
・マズルカ イ短調 op.68-2

2021年11月のリサイタル以来、2年ぶりに聴くアファナシエフ。
今回初めて行った青葉台にあるフィリアホールは決して大きなホールではないけれど、それでも半分くらいの入り。

先に関西で聴いた方達のSNSの感想から不穏な気配はあったので、覚悟して聴きに行きました。
もともと独特な音のピアニストではあるけれど、正直なところ、最初のポロネーズ3番の冒頭から「うーん・・・・・・」と・・・。
2年前には独特な中にもアファナシエフにしか出せない魅力を強く感じることができたのだけれど、今回はそれを感じることも難しかった。
舞台に出てくるときに一人で歩くことも難しそうだったので、ご体調が悪そうなのは確か。
今回の来日を最後にするつもりとご本人は仰っているようだけれど、体調も関係しているのだろうか。
ただ前回は殆ど楽譜を見ながら弾いていたけれど、今回は全て暗譜。

3曲目辺りからは音楽が流れ始め、音に力強さが出てきました。
ワルツの暗みは、まさにアファナシエフ。
特に前半最後のポロネーズ2番は、音と音の間の存在感も含めて(”間”も音楽だよね!)、彼独自の世界を聴かせてくれました。

今日のプログラムで一番「アファナシエフ」を感じることができたのは、後半最後のイ短調のマズルカ。これは文句なしに素晴らしかった。これが聴けただけでも、今日来てよかったと心から思いました。アファナシエフもとても丁寧に弾いていて、アファナシエフでしか聴くことができないショパンだった。
アファナシエフはプログラムでショパンの音楽をダンテの煉獄編に喩えていたけれど、彼の弾くショパンは確かにそういう音楽だと私も感じる。

ただ前回のリサイタルでもそうだったけれど、アファナシエフって、一曲一曲の最後の音の処理をあまり大切にしないのよね・・・。前回も最後の音の響きが残っているうちに次の楽譜を捲っていたりしたけれど、今回もやはり音が残っているうちに腕まくりしたりしていた。まぁこれも彼の個性なのでしょう。

今日のピアノ、高いド?の音のときにいつも耳障りな細い金属音が小さく聞こえたたけれど、あれはなんだったのだろう。結構気になってしまった。アファナシエフにはあの音は聞こえなかったのだろうか(高音って年をとると聞こえなくなるというし・・・)。

アファナシエフ自身は今日の演奏会のことをどう思っているのだろう。
決して「弾けている」とは言えない今日の演奏。でも素晴らしかった最後のマズルカ。
アンコールがなかったのは、きっと最後のイ短調のマズルカの演奏に満足したからだろうと私は感じました(前回の茅ヶ崎でも、素晴らしいブラームスを弾いた後のアンコールはとてもやりたくなさそうに見えたもの)。
「ピアニストがピアノを弾くというのは、どういうことなのだろう」と、そんなことを考えさせられたリサイタルでした。
フレイレのことを思い出したり。
生の演奏会は本当に人生の色々なことを教えてくれますね。





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レザール・フロリサン 《ヨハネ受難曲》 @東京オペラシティ(11月26日)

2023-12-30 16:41:29 | クラシック音楽



ウィリアム・クリスティ指揮

クリスティのもと開いたフランス古楽界の花。
美しくやわらかなハーモニーで描く「救済」のメッセージ。



古楽器オケによるバッハはフライブルク・バロック・オーケストラとバッハ・コレギウム・ジャパンでしか聴いたことがなかったけれど、このレザール・フロリサンもまた全く違った個性で素晴らしかった。
予習で聴いた重々しい迫力あるリヒターの音源に比べると、こちらは華やかな柔らかさがフランスフロリサンって感じ
なのに不思議と生々しくリアルなんですよね。それは古楽器オケの特徴でもあるけれど。

ソリストの人達の歌声も、とてもリアルに胸に迫ってきました。なのに、ちゃんと美しく音楽的。
特にエヴァンゲリストのバスティアン・ライモンディの若く繊細で、かつ包容力と温かみを感じさせる声に強く引き込まれました。
あと、ヴィオラ・ダ・ガンバの音色が雄弁で、人の声のようでとてもとても美しかった。

R側の席だったので、イエスの御姿は最後まで見えず
でも歌声はしっかり聴こえたので問題なしです。

クリスティはマケラと同じく赤いソックスをはいていて、お洒落でした♪
またぜひ来日していただきたいなぁ。


ウィリアム・クリスティ(指揮)
バスティアン・ライモンディ(テノール/エヴァンゲリスト)
アレックス・ローゼン(バス/イエス)
レイチェル・レドモンド(ソプラノ)
ヘレン・チャールストン(アルト)
モーリッツ・カレンベルク(テノール)
マチュー・ワレンジク(バス)
レザール・フロリサン(管弦楽&合唱)


結成から44年。熟成の高みにあるクリスティ&レザール・フロリサンの特別な一夜
いよいよその“季節”がやって来る。ウィリアム・クリスティとレザール・フロリサンによる“バッハの大宗教曲の季節”である。2016年9月に彼らはパリのフィルハーモニーでヨハン・ゼバスティアン・バッハの《ミサ曲ロ短調》を録音した。ルネサンス期からバロック期にかけての膨大なレパートリーを経験して来た両者だからこそ可能な、緻密にして壮大なバッハの宗教曲の世界。ありきたりに言えば彼らの「熟成」のレベルの高さに、しばし言葉が見つからなかった。
そしてこの晩秋に日本を再訪する彼らはバッハの《ヨハネ受難曲》を携えて来る。古楽界最高の実力を備えた奏者だけでなく、いまヨーロッパで注目を集める若手歌手を揃えた歌手陣は、クリスティの厳しい相馬眼にかなった人材。いずれもヘンデル、モーツァルトのオペラや宗教曲のソリストとして活躍中である。福音史家を担うバスティアン・ライモンディも宗教曲だけでなく、モーツァルト、オッフェンバック、ムソルグスキーなどのオペラでも活躍している。その幅広い可能性をクリスティは高く評価しているのだろう。
2016年の《ミサ曲ロ短調》の録音の際、クリスティ自身が幼い頃のバッハ体験についてコメントしている。クリスティの母親はニューヨークの教会の聖歌隊指揮者であり、その母親の指揮する《ミサ曲ロ短調》の合唱曲を聴いて以来、クリスティにとって特別な作品となったと言う。おそらく、バッハが残した「受難曲」もクリスティにとっては《ロ短調」に並ぶ特別な作品であったはずだ。1979年に結成されたレザール・フロリサンが21世紀のいま開こうとしているバッハの新しい扉。たった1日のみの日本公演は、まさに記念碑的なものとなるだろう。

片桐卓也(音楽ライター)




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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 @サントリーホール(11月24日)

2023-12-30 01:35:43 | クラシック音楽



モーツァルト:交響曲第29 番 イ長調 K.201
ベルク:オーケストラのための3つの小品 Op.6
(休憩)
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98


シェフのキリル・ペトレンコと初来日のベルリンフィル。
私にとっては、人生初のベルリンフィル。
ペトレンコを正面から見放題席(P席)だったので、丁寧な指揮姿も楽しめました。
ブラ4の最後、顔を真っ赤にして指揮してくれてた

ただ、、、ペトレンコが作る音楽については、個人的に好きか嫌いかは、もう少し保留にしたいところではありました。
天下のベルリンフィルに対して素人のくせに偉そうすぎますね・・・すみません
音楽は完全に主観で聴いている人間なので、ご容赦いただければ。


【モーツァルト:交響曲第29 番 イ長調 K.201】
冒頭から想像を遥かに超えたスーパーオーケストラの音で。
技術的に「巧い」だけではなく、ちゃんと「音楽的にめちゃくちゃ上手い」。楽器の音というより音楽の音というか。
あんなオケの音、初めて聴いた気がする。
悪い意味での機能的オケではなく、ちゃんと個々の奏者の個性も出ているし、熱もあるし。
辛口(というのかな)な解釈だったけど、それはそれでよかったと思う。
三楽章は楽しい音がした。
でも、この曲はもう少し無邪気っぽい朗らかな音の演奏にの方が好みかも。

【ベルク:オーケストラのための3つの小品 Op.6】
ベルクの現代的な鬱屈した感じというか、マーラーぽさにはこのコンビの音は合ってる気がした。
大編成だけど音の飽和を気にせずめいっぱい響かせてくれて、迫力ありました。
凶暴だし色っぽさもあるし。
指揮者もオケも完璧なのだけど・・・。
どこか「オケを締め付けてる(コントロールしてる)音」がするというか
自然な呑気さというか、伸びやかさが感じられないというか。音が冷たいわけではないのだけれど。
うーん・・・

(20分間の休憩)

【ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98】
丁寧な緻密さも、幾度もはっとさせられる雄弁さも、響きのバランスも、美しさも、フィナーレへのドライブ感も、奏者の熱も全く文句ないのだけれど、、、、最後の最後の一歩が何故か私の魂の芯に響くことがなかったんですよね・・・。
音に「人間的な可愛げ」のようなものを感じることができなかったというか・・・。
完璧な指揮者が完璧なオケを振っているような音がする、というか(オケが上手すぎるから、余計に可愛げがなくなる
音楽に詳しい知人曰く、我儘なウィーンフィルとは異なる優等生的な音はベルリンフィルの個性とのことだけれど。

二楽章などは泣きそうになる瞬間もあったけれど、私には「音楽」を聴いているような感覚が最後まで得られなかったのです。
それぞれの出す音はあんなに音楽的なのに。

正直なところ、昨年のティーレマン&シュターツカペレ・ベルリンのブラ4の方がずっと心動かされたな・・・。
あの演奏は全然ブラームスほくはなかったし、ティーレマンが可愛げのある人だとは全く思わないのに。
作為系のラトルだって、完璧さが出ていない分だけ可愛げがあるような気がする(ベルリンフィルとのコンビは聴いたことがないけれど)。

そもそも3曲しか聴いていないのに、偉そうに言うなという感じですね。
私はいい加減なので、次回聴く機会があったら大感動してるかもです。
オケも前のめりで弾いてくれていて、他のオケからは絶対に聴けないベルリンフィルの良い意味で威圧的な音を堪能できたし、そういう音を引き出すペトレンコが優秀な指揮者なのであろうことはよくわかりました。
なにより、一度聴いてみたかったベルリンフィルの音を聴けたことは、心から嬉しかった










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シモン・ボッカネグラ @新国立劇場(11月23日)

2023-12-30 01:24:24 | クラシック音楽




ネットの評判がとてもよかったので、予定になかったけれど行ってしまいました。
オペラに嵌るようになって、出費がヤバイ・・・
でも、行ってよかった
とてもとても感動しました。

逆さ火山とその下のマグマのような血のような効果、とても良かった。
赤と黒の組み合わせってそれだけで強い印象を残すので、ちょっとズルいなとも思ったけど…笑。

ヴェルディの音楽は激的なだけじゃなくて美しいね
悲惨な場面でも軽やかな音楽だったり。
大野さんの指揮はあいかわらずとても雄弁。そしてあいかわらずとても丁寧

どの歌手も素晴らしかったけれど、特にシモンに心動かされたなあ・・・。
最後に亡くなるあたりでは、涙が出そうになった。
「全ての喜びは幻想だ」
最後の静かで澄んだ清らかなオケの響き、素晴らしかったです。

人はみんなそれぞれ苦しみや悲しみをかかえて生きている。
運命の中で生きている。
音楽はそういうものを全て美しく昇華してくれる。
争いさえも。

「シモン・ボッカネグラ」特設サイト(新国立劇場)

スタッフ
【指 揮】大野和士
【演 出】ピエール・オーディ
【美 術】アニッシュ・カプーア
【衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照 明】ジャン・カルマン
【舞台監督】髙橋尚史

指揮
大野和士

演出
ピエール・オーディ

美術
アニッシュ・カプーア

キャスト
【シモン・ボッカネグラ】ロベルト・フロンターリ
【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】イリーナ・ルング
【ヤコポ・フィエスコ】リッカルド・ザネッラート
【ガブリエーレ・アドルノ】ルチアーノ・ガンチ
【パオロ・アルビアーニ】シモーネ・アルベルギーニ
【ピエトロ】須藤慎吾
【隊長】村上敏明
【侍女】鈴木涼子
【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
共同制作:フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル
Co-production with Finnish National Opera and Ballet, Teatro Real Madrid





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NHK音楽祭2023『くるみ割り人形 全曲』 @NHKホール(11月20日)

2023-12-30 00:56:25 | 日々いろいろ




この感想は年末に書いているのでだいぶ回復しているけれど、この演奏会の日はコロナ後遺症のダルさで体調最悪で・・・。
直前まで行くかどうか迷ったけれどチケットを捨てられず(我ながら救いようがない…)、重い身体を引きずりつつはるばる渋谷まで行ったのでありました。
演奏会前に渋谷のマークイズで食べた温かいお蕎麦に少し体力をもらえました

そもそもこの日のチケットはフェドセーエフが聴きたくて取ったものだったのに。
直前で来日できないことが発表されて、代役はジョン・アクセルロッドさん。初めて聴く指揮者さんです。

曲が曲なので、体調が悪くてもゆったりと楽しむことができました。
アクセルロッドは全体的にかなり速めだったけど、思いのほか丁寧に振ってくれて嬉しかった

クルミは改めて素敵な曲がいっぱいだな~
花のワルツや金平糖の踊りの曲が有名だけど、私はその後のパ・ド・ドゥの音楽がとても好き(アクセルロッドはこの曲もかなり速めでしたけど)。
数年前の12月にゲルギエフ&マリインスキーがアンコールでこの曲を演奏してくれたのを思い出すな。。。
年末にクルミを楽しめる環境というのは、なんだかんだいっても幸せなことですね。

1幕最後の雪のワルツの児童合唱(東京少年少女合唱隊)も、とてもよかったな
カーテンコールのとき、アクセルロッドが合唱隊の子供達を優しく気にかけていて、その光景にもほっこりさせてもらえました

幸せな時間をありがとうございました、アクセルロッドさん&N響の皆さん


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井上道義&読売日本交響楽団 @東京芸術劇場(11月18日)

2023-12-30 00:27:53 | 日々いろいろ



復活?復活と言うのは、キリストの事で死んだのに生き返るということ。安易に復活復活と言うなかれ。有り得ない出来事なのだから。マリアの聖霊受胎も同様、人間界ではありえない事。でもマーラーのいう復活は輪廻転生の事。三島由紀夫などもこの東洋思想には激しく憧れを抱いていたようだ。最近?では新井満「千の風になって」がそれだが、これなら復活しなくても死んでも好きな人の近くに生き続けることが出来そうで『安心』するってもんだ。(嫌いな人は風を感じない・・・ふふふ)
(井上道義)

ソプラノ:髙橋絵理
メゾソプラノ:林眞暎
合唱:新国立劇場合唱団

群響とのショスタコ4番が素晴らしかったので、こちらも行ってみました。
井上さんの都響との最後の共演のマーラー2番『復活』。
私はマーラーは1番と9番ばかりを聴いていて(たまたま)、それ以外を聴くのは初めて。

今日の演奏が全体的に滑らかな音作りだったせいもあるけれど、群響のあの驚異的な集中力&熱量の高さに比べると、今日の読響は割と日常モードの音に感じられました。

とはいえ、井上さんは改めていい指揮者ですねえ。
どの楽器からも、どのフレーズからも常に「井上さん」の音がする。
どの指揮者も多かれ少なかれそうだけれど、井上さんは特にそう感じる。
彼の中で表現したい何か、世界がはっきりとあるのだろうと思う。

そこに人工的な作為を感じさせないのは、同時にちゃんとショスタコやマーラーという作曲家の存在がその音から強く感じられるからだろうと思います(これらの作曲家は彼に合ってますね)。
また、押しつけがましさが全くないのもいい。常に自然で丁寧。
この強い個性、いまの時代にとても貴重な指揮者さんだと思いますし、私は好きです。

彼岸の響きはあまり感じなかったけれど、人間マーラーや井上さんの生き様のようなものを強く感じて、この生々しさといいますか、リアルさが妙に耳に残りました。

2番、美しい曲ですね。
他の作曲家もそうだけれど、あちらこちらで1番や9番に通じる音が聴こえてきて、マーラーの個性ににやにやしちゃいました。
井上さんもプログラムでコメントされていたけれど(冒頭に載せた文)、この2番の歌詞はもちろんキリストの復活を表面的には表しているのだろうけれど、それよりもマーラーの個人的感情の表れのように感じられました。井上さんは輪廻転生と仰っているけれど、特に今日の演奏からは、私は「この世界での輪廻転生」という風に感じられたな。もう一度生きるために生まれる、みたいな。・・・ってどこかで聞いた言葉だなと思ったら、みゆきさんの歌詞だ

それにしてもマーラーもショスタコもあんなにとっちらかった音楽なのに、無駄な音というのが一つもない(ように聴こえる)んですよね。
面白い作曲家ですねえ。

※ソリストさん達は、悪くはなかったけれどイマイチに感じました。。




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