鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその787~マイ国家

2013-08-13 12:12:03 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「マイ国家」です。

久しぶりに星新一を読みたくなり、選んだのが本書。
表題作は、マイホームを“マイ国家"として独立宣言した男の話です。

春にTVで「どくとるマンボウ ユーモア闘病記~作家・北杜夫とその家族~」というドラマをやっていました。
その中で、北杜夫がマンボウ・マブゼ共和国を建国し、日本から独立宣言したシーンがありました。
北杜夫は「マイ国家」をヒントに独立宣言したのではないでしょうか?

一人もしくは少人数が独立宣言をしたときに国家として認められるのか?
そもそも国家の定義とは?
マイ国国王と彼の領土に迷い込んだ銀行マンの論争は明らかに国王の勝ちでした。

この論争については、かわぐちかいじ著「沈黙の艦隊」の中で丹念に描かれていました。
そのため「マイ国家」を読んでも新鮮さを感じませんでしたが、作品発表当時、その発想は驚きをもっては迎えられたことでしょう。

「マイ国家」が他の作品よりページ数が多いのは、「人民は弱し 官吏は強し」に詳しい、国と大手製薬会社たちに潰された星製薬時代の経験から、国家の理不尽さに触れたかったことが理由かもしれません。
もし「沈黙の艦隊」を読む前なら、とても面白く読んだことでしょう。

さて本書には表題作以外に短編が30編収録されています。
初版は1968年だそうですが、45年も経っているとは思えない、新鮮ささえ感じる作品集です。
人の心理って変わらないものと、あらためて実感しました。
印象的だった作品をいくつか挙げます。

「儀式」 宇宙人が侵略基地を建設するときに必ず行わなくてはならない儀式がある。本人たちが無意味だと思っているその儀式には絶大な効果があった。
「いいわけ幸兵衛」 いいわけ名人の平社員 幸兵衛はなぜかどんどん出世していき、ついに社長にまで上り詰める。彼のいいわけ名人ぶりがその後の意外な局面で生きてくる。
「刑事と称する男」 裏を考えながら読んでいたのにもかかわらず、その裏、そしてさらにその裏をかかれてしまい、見事な結末に舌を巻く。
「特殊な症状」 精神科医に解明できない特殊な症状の夫婦。症状を解明するため医師が住宅に忍び込んだことから事態は急展開を迎え、張り込んでいた刑事が終止符を打つ!
「国家秘密」 何のとりえもない小国を繁栄させた国王の秘策とは? ナルホド、国王すごい!という納得のラストは秀逸。 
「服を着た象」 「お前は人間だ」と催眠術をかけられた象が企業経営に大成功する話。「人間とは?」を常に考えることが成功につながるという教訓!

今まで星作品では「声の網」「人民は弱し 官吏は強し」「ノックの音が」の3冊がお気に入りでした。
今回の作品もお気に入りの仲間入りを果たしました。


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