猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ローサは密告された

2017-10-02 22:23:34 | 日記
フィリピン映画「ローサは密告された」を観にいった。

ローサ(ジャクリン・ホセ)はマニラのスラム街で雑貨店を夫ネストール(フリオ・
ディアス)と共に経営している。と言ってもネストールは店番もせずにこそこそと
麻薬をやっている毎日だ。店を切り盛りするのはローサ。彼女には4人の子供がお
り、彼らは家計のため、本業に加えて少量の麻薬を扱っていた。ある日、密告か
らローサ夫婦は逮捕される。初めは麻薬は自分たちのものではないと言っていた
夫婦だが、証拠を突きつけられて言い逃れできなくなる。そんな彼らに巡査は「
20万で手を打ってやる」とささやく。そんな大金はないとローサが言うと、「そ
れなら売人を売れ。でなければ刑務所行きだ」と迫る。ローサは売人のジョマー
ルを売るが、捕まったジョマールが持っていた10万、ジョマールの妻が見逃し料
として払う5万、あとの5万をローサたちに要求してきた。警察署にやってきたロ
ーサの子供たちは、両親の釈放のために金を集めることを決意する。

フィリピン映画は初めて観た。とても見応えがありおもしろかった。ローサ役の
ジャクリン・ホセは第69回カンヌ国際映画祭でフィリピン初の主演女優賞を受賞
した。
冒頭から激しい雨のシーン。マニラの街の混沌とした雰囲気は、台湾映画や香港
映画のそれともまた違う。ローサがスーパーで買い物をした時、小銭が足りない
とレジ係に言われてお釣りを全部もらえなかったり、タクシーが家の前まで行っ
てくれなかったり、日本では考えられないことが続き、カルチャーショックを受
けた。ローサは雑貨店を経営しているが、それだけでは家族6人の生活は苦しく、
こっそりと麻薬も売っている。ところがある日警察が突然やってきて、ローサと
夫のネストールを逮捕し連行してしまう。驚く子供たち(と言っても末っ子以外
はもう大きい子たちだ)。
ドゥテルテ大統領就任後、薬物犯罪への厳しい取り組みが行われ、麻薬に関わる
者は警察や自警団により殺され、恐れをなして自首する者がドッと増え、刑務所
の収監人数を大幅に超えているということくらい私でも知っている。ドゥテルテ
大統領、極端なことやっているなあ、と思ったものだ。フィリピンの貧困率が約
22%というのには驚かされる。だからそれだけ薬物犯罪に手を染める国民が多い
のだろう。
フィリピン警察の腐敗もショッキングである。押収した麻薬を横流ししたり、売
人を恐喝したりして私腹を肥やしているのだ。容疑者への暴力もいとわない。ロ
ーサも20万払わなければ終身刑だと脅される。この20万というのが20万ペソな
のか日本円の20万なのかがちょっとわからなかったが(私がうっかり見逃したの
かもしれない)、いずれにしてもスラム街で暮らす者にとっては大金だろう。ロ
ーサの子供たちは家のテレビを売ったりして必死にお金を工面する。特に次男の
エピソードは悲しい。
この映画はフィリピンの貧困や警察の腐敗を描いているだけでなく、家族の絆を
描いた映画でもある。フィリピンの出口はどこにあるのだろう。




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コメント (4)
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