気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

夏野 大室ゆらぎ

2017-08-10 11:36:21 | つれづれ
春の雨ゆふべに飢ゑてゆでたまごふたつを蛇のやうに吞み込む

けだものの骨かと見えて川砂のうへに砕けてゐる蛍光灯

薄暮光けふは世界に触れ過ぎた指が減るまで石鹸で洗ふ

牛小屋の裏の茱萸の木、横坐りしてゐる牛の乳ゆがみをり

焚けば減る嵩や野づらに古だたみ四五枚ほどが焼かれてをりぬ

左目は本を読む目で右の目は遠くを見る目、左目使ふ

花のうへに花は積まれて腐りつつ土手へとつづく日ざかりの道

定型に身を委ねれば幾許かわれを失ふよろこびはあり

洗濯機に呼ばれて立ちぬ壇ノ浦新中納言いまはのときに

墓山の向かうにものを焚くけむり、朱欒(ざぼん)かかへて風狂のひと

(大室ゆらぎ 夏野 青磁社)

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短歌人同人、大室ゆらぎの第二歌集を読む。

大室さんとは親しくさせていただいているが、プライベートなことは話さない人なので、よくわかっていない。不思議なひと。歌が上手い。
歌の舞台は、荒れて人の気配のなくなった原っぱのようなところだ。牛小屋くらいはあるらしいが、犬を連れてゆらぎさんがそこを散歩する。ときに山羊と遊んだりしながら。一方、家では読書家であり、ギリシャ、ローマの古典などを読む。人間よりも動物が好き。こんな人物評をしても歌の面白さは伝わらない。わたしの力で解説など出来るわけもなく、ただただ味わいたい。

散相(さんさう)のわれの眼窩を這ひ出して百年後に咲くゆふがほの花


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