気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

金剛葛城山麓日誌 米田郁夫 本阿弥書店

2021-02-01 00:51:51 | つれづれ
<つぼさか>と道標示すその先は藪へ入り行く人生に似て

羊歯の葉を揺らし吹きくる谷風に憩へばいつかわれもさみどり

陽のあたるここは天国まどろめばほのほの笑まふ山茶花の紅

夕暮れも田に働きし母思ふ「おかえり」と待ちくれしことなし

雪の上のひづめの跡は山へ向く下(しも)へ向くあり大・小のあり

陽を受けてうつむきに咲くらふばいの黄にちからあり静かなれども

白南風(しらはえ)にまろく転がる梅の実を拾ひ来て見す術後の妻に

感情のおもむくままに生きむとしつひになしえず陽は傾きて

あへぎつつ登り来たりて壺阪の五百の羅漢に父を探せり

黄泉に入る道のぞかせて参道の杉の古木の深きその洞

(米田郁夫 金剛葛城山麓日誌 本阿弥書店)

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コスモス所属。奈良県御所市に生まれ住み続ける。真面目な人柄、自然の中で生きる姿が端正な文体で詠われている。テレビで「ポツンと一軒家」をみていて、きっとこういう土地で懸命に働いてきた方だろうと想像してしまった。人間が真っ当だから歌も真っ当で安心して読める。読後感が爽やかだ。