気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

短歌人5月号 同人のうた その3

2016-05-23 14:20:27 | 短歌人同人のうた
ギプスの中で冬眠中の右下肢を春の光にふふふと差し出す
(古川アヤ子)

平凡に生くるが佳しと雪片を手に受けしかばあはあはと消ゆ
(小川潤治)

上弦の月かかりいる真夜中のピアノにのこる小さき指紋
(梶田ひな子)

草色の陶器のように変わりたりクリスマスローズの固き花びら
(齊藤和美)

一族の唾液がまじり合いながら食器洗浄機内は嵐
(八木博信)

話しおれば冬のこころに小(ち)さき風の生まれて鈴のごとき音せり
(平林文枝)

暗がりへかへらむ風の尾の白さ冬まひるまの三熊野をゆく
(大谷雅彦)

冷蔵庫に卵ならびゐる平安をくずして朝のだし巻きたまご
(藤本喜久恵)

おるがんの辺りにうたひしことありや正岡律の歌ごゑおもふ
(紺野裕子)

カーペットの蔓草模様にまぎれたるグリンピースのみどりやいずこ
(今井千草)

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短歌人5月号、同人1欄より。

小雨ふる夕べ机辺に身を置きて静かなり二月余滴のひと日
(近藤かすみ)