1985年の日本児童文学者協会新人賞を受賞した短編集「銀のうさぎ」に収録されています。
農家の人たちが、出かせぎで都会の工事現場で働き、日本の高度経済成長期を支えていたころの話です。
主人公の小学三年生の男の子の両親も、三才の妹を連れて出かせぎに行っています。
雪に閉ざされた留守宅を守るのは、じいちゃんとばあちゃんです。
主人公も五才の弟の面倒をよく見ています。
正月が近づき、両親(少なくともかあちゃんと妹)が一時帰省してくるのを、主人公と弟は文字通り指折り数えて待っています。
そこに、主人公あてにかあちゃんから手紙が届きます。
いつ帰ってくるのかが書かれていると思って、喜び勇んで読み始めた主人公に、手紙は意外な知らせを伝えます。
仕事の都合で、とうちゃんだけでなく、かあちゃんも帰れなくなったのいうです。
ショックを受けて家を飛び出した主人公を、ばあちゃんがやさしくむかえてくれます。
その晩、並んだふとんの中で泣き出した弟を慰めようとして、主人公は一枚の写真を取り出します。
それは、家族全員(とうちゃん、かあちゃん、じいちゃん、ばあちゃん、主人公、弟、妹の七人)が写った「夏の写真」でした。
そして、主人公は弟を喜ばせようとして、いろいろな楽しそうなこと(そり遊び、かまくらなど)を語ります。
ようやく泣き止んで寝入った弟の横で、自分も泣き出しそうになるのをしかりつけながら、今度こそ両親が帰ってくる春までの四か月を指折り数え始めます。
当時(それよりも少し前かもしれません)の農村の子どもたちの置かれている状況を、作者持ち前の詩情(特に雪やそり遊びのシーン)を込めて鮮やかに描いています。
かあちゃんからの手紙を読むシーンは、ケストナーの名作「飛ぶ教室」で主人公のマルチン・ターラーが母からの手紙(クリスマスに帰省するためのお金が工面できなかったので、そのまま寄宿舎ですごしてほしいと書いてありました)を読むシーンを彷彿とさせます。
このような社会性を持った作品を含む無名の新人のデビュー作を短編集で出版できる当時の児童文学の出版状況は、本当に豊かだったんだなあと改めて思わせられます。
この本を作者にもらったのは、表紙の裏の署名を見ると1984年12月23日だったので、当時一緒に参加していた同人誌の忘年会の席だったでしょう。
帰りの電車の中でこの短編を読んで、あたりをはばからずに泣きだしてしまった(特に弟が「夏の写真」をぺろぺろなめるシーンでは声をあげて泣いてしまったかもしれません)ことを今でもはっきりと覚えています。
今回、久しぶりに読んでみても、やっぱり涙を抑えることができませんでした。
農家の人たちが、出かせぎで都会の工事現場で働き、日本の高度経済成長期を支えていたころの話です。
主人公の小学三年生の男の子の両親も、三才の妹を連れて出かせぎに行っています。
雪に閉ざされた留守宅を守るのは、じいちゃんとばあちゃんです。
主人公も五才の弟の面倒をよく見ています。
正月が近づき、両親(少なくともかあちゃんと妹)が一時帰省してくるのを、主人公と弟は文字通り指折り数えて待っています。
そこに、主人公あてにかあちゃんから手紙が届きます。
いつ帰ってくるのかが書かれていると思って、喜び勇んで読み始めた主人公に、手紙は意外な知らせを伝えます。
仕事の都合で、とうちゃんだけでなく、かあちゃんも帰れなくなったのいうです。
ショックを受けて家を飛び出した主人公を、ばあちゃんがやさしくむかえてくれます。
その晩、並んだふとんの中で泣き出した弟を慰めようとして、主人公は一枚の写真を取り出します。
それは、家族全員(とうちゃん、かあちゃん、じいちゃん、ばあちゃん、主人公、弟、妹の七人)が写った「夏の写真」でした。
そして、主人公は弟を喜ばせようとして、いろいろな楽しそうなこと(そり遊び、かまくらなど)を語ります。
ようやく泣き止んで寝入った弟の横で、自分も泣き出しそうになるのをしかりつけながら、今度こそ両親が帰ってくる春までの四か月を指折り数え始めます。
当時(それよりも少し前かもしれません)の農村の子どもたちの置かれている状況を、作者持ち前の詩情(特に雪やそり遊びのシーン)を込めて鮮やかに描いています。
かあちゃんからの手紙を読むシーンは、ケストナーの名作「飛ぶ教室」で主人公のマルチン・ターラーが母からの手紙(クリスマスに帰省するためのお金が工面できなかったので、そのまま寄宿舎ですごしてほしいと書いてありました)を読むシーンを彷彿とさせます。
このような社会性を持った作品を含む無名の新人のデビュー作を短編集で出版できる当時の児童文学の出版状況は、本当に豊かだったんだなあと改めて思わせられます。
この本を作者にもらったのは、表紙の裏の署名を見ると1984年12月23日だったので、当時一緒に参加していた同人誌の忘年会の席だったでしょう。
帰りの電車の中でこの短編を読んで、あたりをはばからずに泣きだしてしまった(特に弟が「夏の写真」をぺろぺろなめるシーンでは声をあげて泣いてしまったかもしれません)ことを今でもはっきりと覚えています。
今回、久しぶりに読んでみても、やっぱり涙を抑えることができませんでした。
銀のうさぎ (新日本少年少女の文学 23) | |
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新日本出版社 |