現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

村中李衣「ラッパ ― ようこの場合」小さいベット所収

2017-10-12 17:49:02 | 作品論
 小学校四年生のようこは、右ひざの手術で入院しています。
 おかあさんは妹が今年生まれ、おとうさんは九州に単身赴任中なので、なかなかお見舞いに来られません。
 同じ部屋の赤ちゃんのえみはよく泣きます。
 えみのベッドは、えみのママが毎日必ず新しいおもちゃを持ってくるので、おもちゃだらけです。
 ようこのベッドには、きりんの<ながなが>がいるだけです。
 看護婦たちの会話から、ようこは自分がもう歩けないものと思い込みます。
 しかし、太りすぎのために後から入院してきた順子ねえちゃんが、その誤解を解いてくれます。
 歩けないのは、ようこではなくえみだったのです。
 やけになったえみのママは、酒に酔って無断でえみを連れ出します。
 ようこは、順子ねえちゃんと一緒に病院を抜け出して、えみを探しに行きます。
 えみの好きなラッパを吹いて、なんとか二人を探し出して、無事に病院に連れ帰ります。
 こうして、三人の入院生活はまた始まりました。
 他者を理解することで、ようこは自分を見つめなおします。
 そのことで、今まで逃避していた自分の病気と向き合えるようになったのです。
 作者は、ある時は厳しく、ある時は暖かく子どもたちを見つめています。

 
小さいベッド (偕成社の創作(21))
クリエーター情報なし
偕成社

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