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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

6/30(土)華麗なるコンチェルト/上村文乃、弓 新、上原彩子がチャイコフスキーの3大協奏曲を披露

2018年06月30日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
華麗なるコンチェルト・シリーズ 第6回
《熱狂のチャイコフスキー 3大協奏曲!》


2018年6月30日(土)14:00〜 横浜みなとみらいホール S席 1階 C1列 9番 4,875円(セット割引)
チェロ:上村文乃*
ヴァイオリン:弓 新**
ピアノ:上原彩子***
指 揮:永峰大輔
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33(フィッツェンハーゲン版)*
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35 **
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 ***

 神奈川芸術協会が主催する「華麗なるコンチェルト・シリーズ」の第6回開催を聴く。今回はチャイコフスキーの「三大コンチェルト」ということで、上村文乃さんの独奏チェロによる「ロココ風の主題による変奏曲」、弓 新さんの独奏ヴァイオリンによる「ヴァイオリン協奏曲」、そして上原彩子さんの独奏ピアノによる「ビアノ協奏曲 第1番」というプログラム構成である。指揮は永峰大輔さん、管弦楽は神奈川フィルハーモニー管弦楽団である。

 今回の開催は、第5回の石田泰尚さん、そして第7回の清水和音さんと第8回の長谷川陽子さんの4回分がセットで発売されたのだが、神奈川芸術協会の会員に優先的に先行発売されたため、会員でない私は発売日にセット購入したにもかからわず希望するような席が取れなかった。単券ではなおのこと前の方は取れない。だから珍しく、最前列・左ブロックの中程、ソリストを横から見るような位置になってしまった。人気アーティストが揃って登場し、協奏曲の名曲の数々がプログラムされるということで大変売れ行きが良かったようである。

 今回だけは3名のソリストの共演というカタチになっていて、もちろん3名とも何度も聴いている人たちではあるが、直接的な知り合いは上村さんだけだった。彼女の「ロココ〜」はまだ聴いていなかったと思うので、楽しみにしていたものである。

 1曲目は「ロココ風の主題による変奏曲」。この3曲の中では室内楽的なコンパクトさを持った曲。弦楽と木管を中心にしたオーケストラは、小編成というわけではないが、淡々としていて抑え気味になる。元々そういう曲なのだ。一方で、チェロ問い楽器はけっこう指向性が強いので、できればセンターで、ソリストの正面方向で聴きたかった。
 それでも、上村さんのチェロは音量がとても豊かで、音色も艶やかで濃厚である。音程も極めて正確、リズム感も良く、カンタービレがよく効いた、よく歌う演奏に終始した。全体的にはテンポはやや速めで、キレが良く、若さと瑞々しさに溢れた演奏だった。装飾的な速いパッセージも的確かつサラリとこなし、むしろ旋律を大らかに歌わせている。その押し出し方も程良い程度で、オーケストラとのバランスも申し分ない。かといってアンサンブルをまとめようとしている様子でもなく、あくまでソリストとしての主張は十分に発揮できていたと思う。懸念を払拭するように、チェロの音はまったく問題な聞こえていた。
 最終変奏とコーダ以外は粛々とした静かな曲にも関わらず、大きな咳をする人がかなり多く、聴いていてもかなり耳障りに感じた。価格の安いコンサートだからというわけでもなかろうが、聴衆マナーにも苦言を呈したい。出てしまう咳は仕方がないとしても、少しは遠慮するという誠意を持てないようなら、クラシックのコンサートには来て欲しくない。

 2曲目は「ヴァイオリン協奏曲」。弓さんは安定的で高度な技巧を持ったヴァイオリニストで、全体を通して速めのテンポを取り、比較的インテンポで、軽快にスイスイと曲が流れていく感じだ。テクニックは正確で、速いパッセージでも、重音奏法やフラジォレットなどもストレスを感じさせない上手さがある。音色にも豊かさがあり、若々しくて男性的な、爽やかな演奏だと思う。そういった演奏のキャラクタであるから、逆の言い方をするなら、少々アッサリしていて、あまりコクがないといか・・・・。しかし、あれもこれも求めるのは酷であろう。彼の持ち味は、他の人にはなかなか出せない清々しい個性が感じられる。一服の清涼剤のような、爽やかな「ヴァイオリン協奏曲」であった。

 休憩を挟んで後半は「ピアノ協奏曲 第1番」である。上原さんの協奏曲を聴くのは久し振りのような気がしたが、改めてこの名曲を聴くと、やはり上原さんは上手い! 冒頭の和音で3拍子を刻むところから、音楽がしなやかに歌っている。序奏における華麗な技巧も素晴らしいし、ソナタ形式の主部に入ってからの縦横無尽に跳ね回るピアノを聴いていると、ひとつひとつの音符や、小さなフレーズも細やかなニュアンスで丁寧に描かれている。そして全体の流れも極めて良い。例えばオーケストラ側が一定のテンポで主旋律を演奏している間に、彼女のピアノは自由にテンポを変化させ、つかず離れずの絶妙のタイミングで、装飾的なフレーズを歌わせるのである。そういうところで演奏に濃厚な色彩感を作りだしているともいえるが、意識しないで聴いていると、心地よく音楽が流れていくだけ。そういった自然さも上手さのひとつなのだろう。
 この曲の壮大でドラマティックなオーケストレーションに対して、上原さんのピアノはパワーでも負けない。時には腰を浮かせて前掲で立ち上がるように鍵盤に体重を乗せて、重低音を轟かせるのも、彼女のお馴染みの光景だ。女性的な繊細さで消え入るようなピアニッシモから(しかし鮮やかに聞こえる)、地響きのような轟音まで、実に幅広いダイナミックレンジを持ち、音はあくまで澄みきっていて、しかもロマンティックな情感たっぷりに音楽を作っていく。ディテールまでしっかりと作られたこういう素晴らしい演奏を聴くと、国内の音楽コンクールで優勝するクラスの音大生や音高生の演奏が(その時は良く思えても)急にもの足りなく感じてしまう。上原さんはやはり格が違いすぎる。

 ついでだから、神奈川フィルについても一言。まあ、こうした企画コンサートで、しかも主役はあくまでソリストなのだから、あまりやる気も出ないというのも分からないでもないが、いささか緊張感に乏しく、縦の線が乱れることもしばしば、ソリストにも合わせていけないというのは如何なものか。指揮者にも問題があるのかもしれないが、こういう演奏を聴かされるととてもじゃないが、定期会員になりたいという気にはなれない・・・・。もう少し頑張って欲しい。

 終演後は楽屋に訪問して上村さんにだけはご挨拶をした。彼女は現在もスイスのバーゼル音楽院に留学中なので、演奏会がある度に帰ってくるというような状況だ。そうした訳だから、年に数回、聴く機会を持てる程度になってしまう。できるなら、もっと聴ける機会を増やしていただけると嬉しいのだが、まだまだ勉強中というのでは仕方のないことなのだろう。




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