Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

5/14(土)松山冴花&津田裕也デュオ・リサイタル/越谷サンシティ/自由に羽ばたく大らかな感性

2011年05月15日 03時43分19秒 | クラシックコンサート
第133回 サンシティ・ティータイム・コンサート/松山冴花&津田裕也デュオ・リサイタル

2011年5月14日(土)14:00~ 越谷サンシティホール・小ホール 指定 2列 24番 3,300円
ヴァイオリン: 松山冴花
ピアノ: 津田裕也
お話し: 岡部真一郎
【曲目】
ドヴォルザーク: ロマンス へ短調 作品11 B.38
グリーグ: ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 作品45
佐藤聰明: 歪んだ時の鳥たちII
ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47「クロイツェル」
《アンコール》
ドヴォルザーク: ユモレスク
サラサーテ: サパテアード

 ここのところ松山冴花さんのコンサート・レビューが続いている。松山さんのような海外に活動拠点を置いている演奏家の方たちは(彼女はニューヨーク在住)、帰国する際にツアーを組んだり、複数のコンサートに出演したりするので、好きなアーティストの帰国時には、どうしてもコンサートが続いてしまうのだ。5月に入ってから、「ラ・フォル・ジュルネ」で5/35/5のリサタイル2回、5/8は新交響楽団との共演、そして今日はちょっと地方になるが、津田裕也さんとのデュオ・リサイタルである。
 越谷サンシティホールで開催される「クラシック・ティータイム・コンサート」のシリーズは、500席弱の小ホールを使用して、なかなか魅力的な内容のリサイタルや室内楽コンサートを企画してくれる。私は地元ではないが、1時間強で行ける距離なので、休日の午後を有意義に過ごさせていただくことができ、何度か通っている。休憩時間にワン・ドリンク付きというのも気が利いているし、毎回終演後には必ずサイン会があるので、演奏家の方たちと交流が図れて楽しい。岡部真一郎先生のプレ・トークと、休憩後には出演者へのインタビューなども、和気あいあいとした雰囲気でとても楽しめるコンサートである。ところが、地方公演の悲しさ…。今日は200人くらいしか入っていなかったのではなかろうか。松山さんと津田さんのデュオ・リサイタルなら、私なら万難を排しても駆けつけるが(ちょっと大袈裟)、岡部先生もトークでおっしゃられていたように、コンサートの内容は世界レベルなのは間違いなく、複雑な心境でもある。

 今日のプログラムは、前半は民族色豊かな音楽を並べた。1曲目はドヴォルザークの「ロマンス」。津田さんの繊細なピアノ序奏に続いて、松山さんの豊潤なヴァイオリンが歌い出す。相変わらず揺れ幅が大きく、瞬間の煌めきが特徴的だ。
 続いてグリーグの「ヴァイオリン・ソナタ第3番」。あまり演奏会では聴く機会のない曲だ。北欧らしい透明感のある自然描写的な要素と、民族的に楽想が交差する曲である。今日の演奏では、津田さんのピアノが自然描写的な美しい空気感を描き、松山さんのヴァイオリンが民族的(人間的)に血の熱さを浮き出させているように感じた。もっとも第1楽章はソナタ形式であり、第1主題と第2主題の対比など、二人の演奏には純音楽的にも幅広い表現力があり、ダイナミックで堂々たる演奏だった。第2楽章、緩徐楽章でも、津田さんのピアノの繊細な音色が素敵だ。対して、松山さんのヴァイオリンは奔放に歌う。さすがに共演を重ねているだけあって、息もピッタリだが、これはどうみても津田さんがうまく合わせている。第3楽章は、民族的な色彩の強い楽想になるため、松山さんの踊るような鋭いリズム感が、曲に力強い生命感を与えている。ロマンティックな第2主題も感傷的にならない強さがあり、曲を骨太な印象に仕上げていた。

 後半の演奏前に、岡部先生による二人へのインタビューがあった。来場者からの質問なども公開され、楽しいお話しが続く。松山さんから見た津田さんの印象が「優しい子やなぁ」。屈託のない松山さんと「優しい」津田さんの力関係(?)を見事に表していて、会場の笑いを誘った。私の書いた質問もちょっと採り上げていただいたが、それは使用楽器について。ヴァイオリンは1827年製のヴィヨーム(Vuillaume)、弓はトルテだとか…。う~む。フランスものですか。もちろん音を生み出すのはあくまで弾き手次第ではあるが、あの豊潤な音色は…、イタリアものでなかったことに妙に納得してしまった。

 後半は佐藤聰明の「歪んだ時の鳥たちII」から。始めて聴いた曲だが、実に不思議な世界観を持っている。ピアノは分散和音とトレモロを変化させながら続ける伴奏に徹し、その上に乗るヴァイオリンは、日本旋法のような旋律を尺八のようなフレージングで弾いていく。夢見心地の雲間に浮かぶ鳥たちのような、曖昧で漠然としながら何とも言えない浮遊感が漂い、確かに標題から想起されるイメージがそこにある。この曲も、津田さんの繊細なピアノの伴奏が素晴らしく良い。
 最後は、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」。二人の3枚目のCD「Duo vol.3」にも収録されている。このCDは先日の「ラ・フォル・ジュルネ」の会場で購入して、偶然出会った松山さんにサインしていただいたもので、すでに難度も聴いていた。しかし、ナマの演奏は全然違う。CDの方は確かに完成度が高く、音のバランスも良い。一方、ライブではパッションが違う。とくに奔放な揺れ幅を持つ松山さんのような演奏家だと、ライブだとガツンとくる突っ込みがあったり、主旋律がたっぷり歌わせるルバートが入ったりと、なかなかスリリングな所がある。もちろん二人の息はピッタリで、まったく破綻する様子もないが、津田さんのさりげないサポートが松山さんから大らかなベートーヴェンを引き出しているように聞こえた。
 演奏自体は、見事としか言いようがない。明快でスケールの大きな演奏だ。同時に豊穣な音色に包まれた、豊かな音楽。それでいて小さなフレーズに至るまで、細やかな味付けがされているし、全体の構成もガッチリした構造感を打ち出している。しかしながら、ドイツ的でもなく、古典的でもなく、ベートーヴェンの標準的な演奏からは少し遠いかもしれない。しかしこれは今現在の「松山冴花+津田裕也」的なベートーヴェンであり、何より感動を呼ぶ演奏なのであった。
 個性的と言えばかなり個性的。既成概念のワクには収まらない器の大きさを感じる。ヒラメキの音楽のようにも聞こえるが、確かな技術に裏付けられてのこと。いかに難度の高いパッセージであっても極めて正確な音程と抜群のリズム感で、サラッと弾いてしまう。だがむしろ、彼女の最大の持ち味は、緩徐楽章のようなゆるやかな音楽の表現力にあると思う。立ち上がりをキリッとさせるのに伸びやかに歌わせる独特の節回しが、美しい旋律を単純に美しく演奏させない。芯があるのに柔らかい。実に豊かな音楽なのである。これはもうBrava!!と言わざるを得ない。
アンコールは2曲。ドヴォルザークの「ユモレスク」は、子供の時から聴いているような名曲が、プロ最前線の演奏家の手にかかると、こうも艶やかに、豊かに聞こえるか、と感心してしまう。
 サラサーテの「サパテアード」は超絶技巧曲。コンサートの最後を締めくくるにふさわしい、派手な曲だ。松山さんは、シレっとした顔で、あっさりとこの曲を弾いてしまうから、スゴイ。

 終演後には恒例のサイン会。2枚目のCD「Duo vol.2」を購入してお二人にサインをいただいた。今回はちょっとズルをして、古いCDを持ち込んだ(画像)。松山さんが1999年にニューヨークで開催された「カール・ニールセン国際ヴァイオリン・コンクール」で2位入賞を果たした時のライブ録音盤である(当時18歳!!)。ジャケットを出したら松山さんも「オー!!」と声を上げ、写真を見て「細い!!」。もう12年くらい前のことになる。このCDは私のお薦めの1枚で、ニールセンのヴァイオリン協奏曲を聴きたくなったら、この盤をぜひ!!
 今日のサイン会は写真もOKということだったので、ニッコリ笑顔で1枚カシャリ。もう1枚、ツーショットの写真も撮らせていただいたが、こちらの方は非公開。お宝にします。松山さん、ありがとうございました。

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