Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

5/26(土)東京シティ・フィル/ティアラこうとう定期/宮本文昭と小林美樹のブルッフVn協奏曲と「新世界より」

2012年05月27日 02時57分42秒 | クラシックコンサート
東京シティ・フルハーモニック管弦楽団 第29回ティアラこうとう定期演奏会

2012年5月26日(土)15:00~ ティアラこうとう・大ホール S席 1階 D列 21番 3,500円(実質2列目)
指 揮: 宮本文昭
ヴァイオリン: 小林美樹
管弦楽: 東京シティ・フルハーモニック管弦楽団
【曲目】
ウェーバー: 歌劇『オイリアンテ』序曲 作品81
ブルッフ: ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
ドヴォルザーク: 交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

 今日は、東京シティ・フルハーモニック管弦楽団の「ティアラこうとう定期演奏会」に足を運んだ。これまで、東京シティ・フィルを聴く機会はそれほど多くなかった、というよりは積極的に聴きに行ったことはほとんどなかった。ところが、今年2012年2月、「都民芸術フェスティバル」のオーケストラ・シリーズで、宮本文昭さんの指揮するのを聴いて、失礼ながら想像していたより遥かにエキサイティングな演奏に感銘を受けたものである。その後4月にこのオーケストラの音楽監督に就任するということだったので、早速に今日のコンサートのチケットを確保したという経緯があった。もう一つは、ヴァイオリン界に詳しい友人のKさんが今一番お勧めのヴァイオリニストとして小林美樹さんの名を挙げていたこともあり、彼女の演奏も是非聴いてみたかったので、いつものように前の方の席を取った次第である。

 1曲目はウェーバーの『オイリアンテ』序曲。これはあまり聴く機会のない曲だ。全編が軽快な曲想のためか、オーケストラの音量が思ったより小さめに感じられた。いかにもロマン派のオペラらしい曲なので、もう少しダイナミックに、ワクワク感を出して欲しかったところだ。とはいえ、第2主題(?)のヴァイオリンの等は繊細で透明感があったし、アンサンブルも緻密で、洒落た演奏だと思った。このホールの音響のせいだと思うが、2列目で聴いている割には、各楽器の音の分離が良くなく、全体にモワーっと音が混ざっている感じ。とくに管楽器群が抑え気味に演奏されていたので、余計にそう感じられたのかもしれない。

 2曲目はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。大好きな曲のひとつだ。ソリストの小林美樹さんの演奏を聴くのは初めてだったので、期待が高まる。初めて見る小林さんは、比較的大柄な女性で、白っぽいドレスで登場。入念に調弦しているのが好ましい。
 短い序奏ですぐにソロ・ヴァイオリンが入ってくる。初めの印象は、よく音が出ている、楽器が鳴っている、だった。この曲は若い奏者が勢いで弾くくらいの方が躍動的で良いと思うのだが、小林さんの演奏はまさにそんな感じだ。ためらいがなく、ストレートで、しかも明快である。低音部から高音部まで、音に濁りがなく、音程も正確。早い装飾的なパッセージも難なくこなす。音色には、溌剌とした若さが感じられ、明るく伸びやかである。
 さらに特筆すべきは、とてもキレ味の鋭い演奏だったことだ。アクセントが前の方にある感じの立ち上がりの鋭い音で、音楽をクッキリと描いて行く。その辺りも若さに満ちているといえばその通りなのだが、やはり彼女の特性とみるべきだろう。なかなか魅力的な演奏である。少なくとも、ブルッフにはピッタリだ。
 第2楽章の抒情的な旋律に対しては、ppの繊細な歌わせ方からも非凡にものを感じさせる。また音に濁りのない低音部の豊かな響きも、ロマンティックな曲想を描くのに適している。
 第3楽章になると、さらにリズム感の良さが加わってきて、どちらかというと、オーケストラを引っ張っていく感じ。これも突っ込みの鋭い演奏がそう感じさせたのだろう。オーケストラとの掛け合いのリズム感も見事で、丁々発止のやり取りがスリリングであった。コーダに入ってからのテンポアップとフィニッシュまでの高揚感は、この曲の協奏曲としての魅力を十二分に発揮できていたと思う。小林さん名Brava!!を贈ろう。
 一方で、宮本さんのオーケストラ・ドライブも素晴らしかった。『オイリアンテ』序曲とは打って変わって、メリハリがはっきりして、テンポ感にも推進力がある。第1楽章はやや遅めのテンポで始まったのに徐々にテンポが速くなっていく。第3楽章では、むしろやや早めのテンポで、怒濤のように突き進んで行った。ソロ・ヴァイオリンとの「対話」が徐々にヒートアップして行き、フィニッシュに向けては先を争ってゴールに駆け込むようなエキサイティングな演奏を聴かせた。けっこう大音量でオーケストラを鳴らしていたのに、要所をうまく押さえ込んでソロ・ヴァイオリンを際立たせていて、全体としてはダイナミックな演奏になっていた。宮本さんもBravo!!

 後半は「新世界から」。あまりにも名曲過ぎて新鮮味には欠けてしまうが、やはり今日のメイン曲ということで、演奏自体はかなり力の入ったものになった。前半の2曲とは、音の出方が違う。本気モードの演奏ということだろう。宮本さんの今年度のテーマが「完全燃焼」ということであり、まさにそれを体現したといえそうだ。テンポの設定も、全体に躍動感を強く感じさせるやや早め。勢いのある流れの中で、個々の主題をしっかりと歌わせるのは、ご自身がオーボエ奏者だったことも影響していよう。ダイナミックレンジを広く取り、全合奏のffではパワーを爆発させるが、弦楽器が必死になって管楽器に負けないように音を絞り出している。結果的にはバランス良く、オーケストラがひとつにまとまっていた。
 聴かせ所のひとつである第2楽章のコールアングレも、ほどよく牧歌的な音色で細やかなニュアンスが郷愁を誘う。この辺りは宮本さんの指導がうまく成果を上げているようだ。一方金管群も、ご愛敬程度に不安定な箇所もあったが、すべて許容範囲内としよう。トランペットの華やかな音色、トロンボーンの馬力のある音、ホルンもまろやかな音を出していて、概ね良好、といったところだ。弦楽は、ヴァイオリンがとくに澄んだ音色でアンサンブルもしっかりしていて安定感があった。一方、ヴィオラが弱く感じられたのが残念だった。ただでさえ音が奥に向かって出てしまうヴィオラに対して、ホールの音響が足を引っ張っていたのではないかと思われる。
 演奏全体は、迫力もあったし、ダイナミックでもあり、オーケストラの魅力を発揮していたと思う。宮本さんの「完全燃焼」する熱意が、素晴らしい演奏を引き出していたのだろう。演奏後のカーテンコールの様子を見ても、指揮者とオーケストラの関係は良好なスタートとなったようで、メンバーの皆さんも達成感のある表情だった(同じ錦糸町に本拠地のあるもうひとつのオーケストラで先日感じた失望とは大違いだ)

 全曲が終わった後、宮本さんの挨拶があった。オーケストラ運営の窮状を語り、ぜひ多くの人にコンサートに足を運んで欲しいとのことだ。今日のような素晴らしい演奏を聴かせていただいた後だけに、できることなら定期会員にもなりたいところではあるが、何しろ他のいくつかのオーケストラやオペラの団体などからも同じような呼びかけをもらっていて…コチラもいっぱいいっぱいな状況だ。現在私は5つのオーケストラの7つのシリーズの定期会員になっているのだが、それだけでもコンサートの日程がけっこう重なってしまい、どうにも動きが取れなくなってしまっている。とはいえ、東京シティ・フィルもこれからもっと聴きたいオーケストラになった。このブログをお読み下さっている方も、東京シティ・フィルを聴きに行きましょう! きっと素敵な音楽を聴かせてくれると思いますよ!!

 さてそれとは別に、終演後は恒例のサイン会。もちろん小林美樹さんである。演奏が終わって1時間も経っているのに着替えもせずにステージ・ドレスのまま登場し、サイン会が始まった。彼女のCDはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番とプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番を収録したもので2011年11月のリリース。協奏曲の共演はもちろん東京シティ・フィルで、指揮は飯守泰次郎さんである。実はこのCD、かなり以前に既に購入済みで何度も聴いていたのだが、今日は持って行かなかったので、サイン欲しさに会場でもう1枚購入してしまった…。いい年をしてこういうミーハーなところは抜けないが、それでも演奏家の皆さんのお役に立てれば…という思いもあるのだ…。まあ、もう1枚の方には次の機会にでも…。

 最後に。東京シティ・フィルの「ティアラこうとう定期演奏会」では、開演前にホールの2階ロビーでプレ・コンサートが開かれる。これは間近でナマ演奏が聴けるので、間に合うように会場入りした次第。曲目と演奏者は以下の通り。
 【1曲目】G.ボッテジーニ: 2台のコントラバスのためのグランデュエット第1番より第1楽章
   1stコントラバス: 蓮池 仁 2ndコントラバス: 瀬野 恒 
 【2曲目】椎名林檎/松原幸広編: カーネーション(NHK/朝の連続テレビ小説のテーマ曲)
   1stヴァイオリン: 高木 聡 2ndヴァイオリン: 吉田 巧 チェロ: 薄井信介
 コンサートの本番前の緊張する一時に、このようなプレ・コンサートを開いていただけるのも、私たち聴衆にとっては嬉しい企画である。手の届きそうな距離で聴くがっきの音色には、また格別の良さがあるものだ。

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