Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/5(土)せんくら2013/松山冴花・川久保賜紀・横山幸雄・林美智子/豪華な出演者の音楽祭を楽しむ《1》

2013年10月06日 01時34分33秒 | クラシックコンサート
仙台クラシックフェスティバル2013(第8回)

2013年10月5日(土)仙台市内4会場10ホール

 今年で第8回を迎える「仙台クラシックフェスティバル2013」。仙台はただ音楽を聴くという目的で訪れるにはあまりに遠く、これまでほとんど考えたこともなかった。ところが今年の開催では、出演者やプログラムの内容を見て、その豪華さに驚かされた。もともと管弦楽のプログラムでは、地元の仙台フィルハーモニー管弦楽団が登場するだけだが、器楽、室内楽、声楽などの分野で、主に中小のホールを使用して、かなり充実したプログラムが組まれていた。もっとも個人的な好みがかなり色濃く反映されているにしても、本ブログにもたびたび登場する(つまり私の好きな)アーティストの皆さんがいっぱい出演することになっていたのである。
 まず、ヴァイオリンの川久保賜紀さんは、ピアノの横山幸雄さんとのデュオでリサイタルと、仙台フィルとの共演でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を弾く。横山さんは単独のリサイタルを2回。ヴァイオリンの松山冴花さんは津田裕也さんとのお馴染みのデュオで2回のリサイタル。津田さんは堀米ゆず子さんともデュオを組む。他にもヴァイオリンでは、前橋汀子さん、川畠成道さん、西江辰郎さんなどが、ピアノでは舘野泉さん、小山実稚恵さん、及川浩治さん、金子三勇士さん、小川典子さん、三舩優子さん、イリーナ・メジェーエワさんらの有名どころがズラリと並んでいる。他にも、チェロの長谷川陽子さん、ギターの鈴木大介さん、チェンバロの曽根麻矢子さん、フルートの高木綾子さん、サクソフォーンの須川展也さんらも出演する。声楽の方では、ソプラノの鮫島有美子さん、市原愛さん、メゾ・ソプラノの林美智子さん、テノールの中鉢聡さんなど。林さんは作曲家の加藤昌則さんとお馴染みのデュオを組む。もちろん、これらの皆さんはほんの一部であり、プロだけでなくアマチュアの皆さんも含めての錚々たる人たちが音楽祭を彩ることになる。
 会期は昨日、2013年10月4日(金)~6日(日)の3日間で、有料公演は全部で83公演、仙台市内の4カ所の会場の併せて10のホールを使用して開催される。1公演は45分というのが基本。1公演の入場料金は1,000円~2,000円でほとんど大部分は1,000円。ただしこれは前売りチケットの値段であり、当日券はプラス500円ということだ。とにかくお手頃価格で、国内外で活躍している一流アーティストの演奏を楽しむことができるのである。
 プログラムの内容には、「ラ・フォル・ジュルネ」のようなテーマ性はないようで、アーティストの好みによるマニアックな曲から誰でも知っている名曲までバラエティに富んでいるので、クラシック音楽の初心者からマニア系の私たちまで、楽しめそうだ。

 「せんくら」には初参戦なので勝手がよく分からないところもあるが、今日は早起きして東北新幹線「はやぶさ」に乗り午前11時頃には仙台に到着。地下鉄の一日乗車券600円(土日祝日/平日は820円)を買って行動開始、ホテルに荷物の一部をあずけて、最初の会場入りしたのは12時半近かった。

■公演番号28 13:30~14:45 日立システムズホール仙台・交流ホール 自由席 1列左ブロック 1,000円
ヴァイオリン: 松山冴花
ピアノ: 津田裕也
【曲目】
ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」
ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ 第2番
《アンコール》
 エルガー: 愛の挨拶

 最近すっかりスリムに変身した松山さん。ベートーヴェンの「春」の出だし、第1楽章の第1主題などはややマイルドになったような感じで、暖色系のな優しい音色でちょっと驚いた。とはいうものの松山節は相変わらず健在で、自由度の高いのびのびとした演奏には違いない。ベートーヴェンの方がスタンダードで大人しく、ブラームスの方が松山節が強く出ていたようである。一方の津田さんはバックに回ってしっかりとサポートしていた。気儘な自由人(?)の松山さんの演奏をサポートするのは大変そうだが、長年のデュオはお互いを信頼しきっているようで、聴いていても安心感がある。かつて仙台コンクールで優勝したこのお二人のデュオは、この「せんくら」には欠かせない必須のアイテムである。

■公演番号48 16:15~17:00 イズミティ21・小ホール 指定席 1列 14番 1,000円
ヴァイオリン: 川久保賜紀
ピアノ: 横山幸雄
【曲目】
ファリャ:『7つのスペイン民謡』より
     「ムーア人の織物」「カンシオン」「ポロ」「アストゥーリアス地方の歌」「ホタ」
横山幸雄: ヴァイオリン・ソナタ

 松山さんに続いて川久保さんの演奏が聴けるなんて、まるで夢のよう。こんなことは昨年2012年の「ラ・フォル・ジュルネ」以来である。前半に演奏されたファリャの『7つのスペイン民謡』は今年の1月、川久保さんとギターの村治佳織さんとのデュオによる全国ツアーでも演奏されていたので、お馴染みの曲になっている。川久保さんは相変わらずエレガントで、レガートの美しい流麗な演奏。とはいえラテン系の音楽も得意の川久保さんだけに、熱い血潮を抑えた表現やリズム感などに、この人ならではの良さがある。
 横山幸雄さん作曲のヴァイオリン・ソナタは、私にとっては今回の「せんくら」紀行の最大のイベントであった。この曲の存在自体があまり知られていないのが残念だが、私はこのお二人の演奏で聴くのは2回目である。この前に聴いたのは、2009年9月に千葉市で開かれたデュオ・リサイタルでのこと。一度聴いただけで、この曲自体の素晴らしさは誰でも分かると思う。ロマン派的に曲想で「急-舞-緩-急」の4楽章形式となっていて、30分に及ぶ大曲。横山さんの作曲というだけあって、ピアノのパートは高度な技巧を要するショパンのようにロマンティック、もちろんヴァイオリンのパートも様々な演奏技法が盛り込まれてかなり難易度も高そう。お二人の演奏は、息もピッタリと合っていて、世界のトップクラスの演奏家が創り出す、他では聴くことのできない曲の素晴らしい演奏に、会場からBravo!!の声が盛大に飛び交った。
 後でサイン会の時にお伺いしたのだが、この曲は楽譜がまで出版されていないのだという。人づてにこの曲を知って希望された方には楽譜を貸し出しているとか。もっともっと世に出ても良い素敵な曲だと思う。

写真は2013年7月20日、秦野市のコンサートの時のものにサインをいただいたもの。

■公演番号49 18:45~19:30 イズミティ21・小ホール 指定席 1列 15番 1,000円
ピアノ: 横山幸雄
【曲目】
ショパン: スケルツォ全4曲
ショパン: 舟歌 嬰ヘ長調

 続いては、横山さんのソロ・リサイタル。今回の「せんくら」では、横山さんはショパンをテーマに3回のリサイタルを行う。それぞれ、バラード全4曲と幻想曲ヘ短調、スケルツォ全4曲と舟歌嬰ヘ長調、アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズとポロネーズ3曲というプログラムである。本公演は第2回にあたり、スケルツォの全4曲。45分間通しで、かなり重厚なプログラムだ。
 横山さんの演奏は、素晴らしいの一言に尽きる。解釈や表現については、聴く人の好みもいろいろあるから、彼への評価もいろいろあるとは思うが、とにかく素晴らしい。何より凄いのは、ためらいのカケラもない、自信に満ち溢れた演奏だと言うことだ。楽曲の解釈や微細な表現等についてもある種の確信を持っていて、一切の妥協はなく、それをステージで、「どうだ!」とばかりに披露する。正確無比の超絶技巧と力感溢れる演奏には、唖然とさせられるほどの説得力がある。良いも悪いも、好きも嫌いも超越した、一人の演奏家の全人格が音楽に乗り移った演奏を目の前で聴いて、それを否定する要素は何一つ見つからなかった。
 演奏中の集中した表情、こめかみに流れる一筋の汗。カーテンコールの時のクールな微笑み、女性ファンに流し目をくれて、足早に去っていく・・・・。憎たらしいほどカッコイイではないか。


■公演番号26 20:15~21:00 日立システムズール・シアターホール 指定席 1階 I列(6列目) 14番 1,000円
メゾ・ソプラノ: 林 美智子
ピアノ: 加藤昌則
【曲目】
武満 徹/野平一郎:「小さな空」「昨日のしみ」「○と△の歌」
武満 徹:「歌うだけ」
加藤昌則:「旅のこころ」「夕方の三十分」
プーランク: 歌曲集『月並み』より「パリへの旅」「ホテル」
ヴィウルド:「カディスの娘たち」
サティ:「ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)」
ビゼー: 歌劇『カルメン』より「ハバネラ」
《アンコール》
 武満 徹:「翼」

 本日最後の公演は、林さんと加藤さんによる、お馴染みの持ち歌をプログラムしたものである。前半は日本の歌曲、といっても武満徹さんの有名な作品と加藤さんの作曲によるものだ。東京近郊で行われる林さんのリサイタルは、ここ数年ほとんどすべて聴いているので、そういう意味では新鮮味はないが、それでも林さんの演奏会はいつでもどこでもほのぼのとした雰囲気につつまれ、笑い声が多く聞こえる。聴いている私たちの日頃の緊張がほぐれていくような効果があるから、何度でも聴きたくなるのだ。曲間のトークで、楽曲の簡単な解説をしてくれるので、初心者にも親しみが持てるようになるし、今日はとくに分かりやすい選曲だったと思う。
 そして今日はとくに林さんがお茶目ぶりを発揮してしまった。加藤さんが林さんのために書いたという傑作「夕方の三十分」では歌詞を間違えて初めからやり直したり、トークで曲順を間違えたり・・・・。それでもかえって和やかな雰囲気になって、肩の力の抜けた、素敵な夕べのコンサートになった。
 また、加藤さんのピアノも素敵だ。横山さんとは真逆のキャラクタともいうべき演奏。優しい音色で聴く人を包み込むような暖かみがある。BGMのようなさりげなさでありながら、ソフトなタッチが生み出す和音が美しく、そして「場の世界観」を描き出すのがとてもうまい。林さんとのコンビネーションのピッタリである。



 今日は以上の4公演を聴いた。会場間の移動は地下鉄を使うのだが、余裕を持って聴く公演を選んだつもりだったが、実際にはけっこう忙しく、少々疲れた。
 各会場毎に、客用の休憩スペースやお土産売り場、出演者のCD販売コーナーなどもあり、CDを出している出演者は公演後にサイン会を開く。東京のコンサートと違って、長蛇の列ができるという程でもないので、のんびりとした雰囲気で、ファンとの交流会のようになり、楽しい。
 サイン会は川久保さんと横山さんのデュオの会と、林さんと加藤さんの会に顔を出して、色紙にサインをいただいた。写真撮影にも皆さん気軽に応じて下さるので、地方のコンサートはやっぱりほのぼのムードでとても楽しかった。

 気がつけば午後9時半になっている。その足でホテルへ向かい、ブログの速報版をアップして、明日に備えることに。明日は5枠のコンサートを聴く予定になっている・・・・。


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2 コメント

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Unknown (yurihina)
2013-10-06 12:13:33
私は東京から聴きに参りました。贅沢三昧のプログラムですね。
特に川久保賜紀さんと横山幸雄さんのヴァイオリンソナタ)は素晴らしい大曲と思います。初めて聴きましたが、また聴きたくなりました。横山さんの自作曲ということも更に驚きました。仙台を機にこれからももっと演奏されてほしいと思います。
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横山さん作曲のヴァイオリン・ソナタ (ぶらあぼ)
2013-10-07 00:58:23
yurihina様
コメントをお寄せいただきありがとうございました。横山幸雄さん作曲のヴァイオリン・ソナタは、私は聴くのは2回目でした。本当に素敵な曲ですよね。サイン会の時にお二人に、この曲をもっと世に出して欲しいと要望しておきましたが、楽譜はまだ出版されていないそうです。
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