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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

2/17(金)南西ドイツ放送響2日目/萩原麻未/よく回る指の超絶技巧と緩徐楽章の表現力も豊かなラヴェルP協

2012年02月20日 02時14分53秒 | クラシックコンサート
東芝グランドコンサート2012
南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデン&フライブルク


2012年2月17日(金)19:00~ サントリーホール・大ホール S席 1階 12列 17番 11,000円(会員割引)
指揮: フランソワ=グザヴィエ・ロト
ピアノ: 萩原麻未*
管弦楽: 南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデン&フライブルク
【曲目】
ラヴェル: ピアノ協奏曲 ト長調 *
《アンコール》
 サン=サーンス: トッカータ*
マーラー: 交響曲 第5番 嬰ハ短調
《アンコール》
 プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』から「騎士たちの踊り」

 東芝グランドコンサート2012「南西ドイツ放送交響楽団バーデン=バーデン&フライブルク」の東京での2日目は、ゲストに萩原麻未さんを迎えて得意のラヴェルのピアノ協奏曲とマーラーの交響曲第5番という、華やかで贅沢なプログラムである。3日前の2/14のプログラムからも分かるように、今回の来日ツアーの選曲はバラエティに富んでおり、主席指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトさんの幅広いレパートリーと音楽性が窺える。

 さて、今日のプログラムでは、後半のマーラーが長いので、前半は短めのラヴェルのピアノ協奏曲のみ。従って、ステージ上には最小からピアノがセットアップされていた。ちなみに使用ピアノはヤマハのCFXであった。ソリストに迎えられた萩原麻未さんは、皆さんご承知のように、2010年のジュネーブ国際コンクールのピアノ部門で優勝を飾り、現在売り出し中のピアニストだ。昨年2011年11月に日本でのデビュー・リサイタルを聴きに行ったが、その時の印象は多彩な音色と軽快な超絶技巧…であった。ジュネーブ国際コンクールでもファイナルで弾いたラヴェルのピアノ協奏曲をナマで聴けるということなので、今日はいつもと違ってホール中央付近に席を取ってみた。

 さて、パチンという鞭の音で曲が始まると、意外な感じがしたのだが、ピアノの音が小さくてよく聞こえない。もともとオーケストラの編成がかなり小さめの曲なのに、ピアノのアルベッジョなどがオーケストラに飲まれてしまっていてかすかにしか聞こえないのである。これはいかにも残念。昨年のリサイタルの時もピアノはヤマハで、2列目で聴いたにもかかわらず、音が小さく感じたくらいだから、もともとガンガン弾くタイプではないのかもしれない。いずれにしても、ホールのセンター付近のS席でピアノが聞こえにくいのはちょっと…。もちろん第2主題等の明確な成立が現れる部分になると、輝きを増して,跳ねるような軽快なタッチが素敵だ。もともとこの曲の独奏ピアノは伴奏的な分散和音や装飾的な部分が多い。ピアノが前面に出るようでなかなか出てこない曲であるだけに、オーケストラとのバランス感覚が難しいのだろう。オーケストラ部分はいかに小編成とはいえラヴェルらしく、ハギレ良いリズムと色彩的な華やかさがある曲であり、フランス出身のロトさんがドライブする南西ドイツ放送響は小気味よい演奏であった。
 第2楽章はピアノ・ソロで始まるので、ここはじっくりと美しく感傷的な旋律を聴かせてくれた。このような単純な旋律が淡々と続く緩徐楽章をさりげない感性で詩情豊かに演奏するところはさすがである。
 また第3楽章になるとテンションが上がってきて、弾むようなピアノが一段と輝き出す。ここまでくると、ピアノの音量はあまり気にならなくなった。オーケストラとの間の一体感が増し、縦横無尽に駆け巡るビアノがますますキラキラと輝いてくる。結果的に見れば、萩原さんのピアノは超絶的な技巧に加えて音自体が透明で輝いている。色彩的で奔放なオーケストレーションによく合った演奏スタイルだといえそうだ。今回、音量が足りないという印象であったが、例えば2階席で聴いた場合はどうだったのだろうか、気になるところだ。
 アンコールに応えて弾いてくれたのは、サン=サーンスの「トッカータ」。練習曲 作品111-6だろうか。もとより超絶技巧曲だが、萩原さんはものすごいスピードで聴いている聴衆を唖然とさせた。おそろしくよく回る指だ。しかも音がとてもキレイ。やっばり、Brava!!である。

 後半は、マーラーの交響曲第5番。いわずと知れた名曲なので、曲の説明は割愛させていただくとして、この曲は先月2012年1月に外山雄三さんの指揮で東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で(1日に2度)聴いたばかり。さて今日はどのような演奏を聴かせてくれるのか。
 前半のラヴェルが室内オーケストラなみの小編成であったのに対して、さすがにマーラーは大編成である。サントリーホールのステージがオーケストラのメンバーでいっぱいになっている。やはりこのボリュームだけあって、オーケストラがドーンとなった時の圧倒的な迫力はなかなかのものだ。
 冒頭のファンファーレからトランペットが艶のある音を聴かせる。葬送曲ではあるものの、音質が明瞭なのはオーケストラの技量が高いからだ。とくに金管群は機能性は抜群で、艶やかで色彩感豊かな音色、弱音でも安定した音程、強音の圧倒的な大音量、各パートのバランスなど、どちらの方角から見てもなかなか隙がない。木管群も豊潤な音色で質感が高い。弦楽も金管の咆哮に負けないパワーと厚みがあるし、弱音時の透明感も繊細で素敵だ。
 演奏は基本的にはゆったりしたテンポであるが、リズム感が良く決して重くはならない。くっきりと明瞭なサウンドもそれを手伝っている。全合奏のffの大音量に至るダイナミック・レンジは広く、非常にダイナミックで劇的な効果を生み出していた。もちろん第4楽章のアダージェットは弦楽のアンサンブルがひたすら美しく…。全曲を通しても非常に魅力的な演奏だったと思う。
 ラヴェルの協奏曲がこぢんまりとしながらもカラフルな輝きに満ちていたのに対して、マーラーの方は濃厚な音色で豪快にぶちかます。曲によってアプローチを変えて、その曲の本質を描き出していくのは、なかなか見事な方法論だと思う。古楽から現代音楽まで幅広いレパートリーを持つロトさんならではのことだ。
 アンコール前のロトさんのご挨拶は、今日は「Danke schön」と「アリガトウゴザイマス」だった。曲はプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』から「騎士たちの踊り」。フル・スケールのオーケストラを意識した選曲だ。やはり豪快な演奏だったが、ロトさんのレパートリーの広いところ見せることになった。

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