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2/15(水)読響サントリー名曲シリーズ/超絶技巧のクラリネット奏者フロストと豪放なヴァンスカのシベリウス

2012年02月18日 01時39分47秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第546回サントリー名曲シリーズ

2012年2月15日(水)19:00~ サントリーホール・大ホール S席 1階 3列 27番 4,090円(会員割引)
指 揮: オスモ・ヴァンスカ
クラリネット: マルティン・フロスト*
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
グリーグ: 付随音楽『ペール・ギュント』から抜粋
      「朝の気分」
      「オーゼの死」
      「イングリッドの嘆き」
      「アニトラの踊り」
      「アラビアの踊り」
      「ソルヴェイグの歌」
      「ペール・ギュントの帰郷」
      「山の魔王の宮殿にて」
アホ: クラリネット協奏曲(日本初演)*
《アンコール》
 伝承曲(ヨーラン・フロスト編曲): クレズマー舞曲*
シベリウス: 交響曲 第2番 ニ長調 作品43

 読売日本交響楽団のサントリー名曲シリーズ。今月はオスモ・ヴァンスカさんの指揮による北欧プログラムである。ヴァンスカさんはフィンランド出身で、同国のラハティ交響楽団の音楽監督を1988年から2008年まで務め、とくにシベリウスの演奏での世界的な評価を得ている指揮者である。

 1曲目はグリーグの『ペール・ギュント』から有名な曲を抜粋で8曲。グリーグの管弦楽曲としては代表的な曲ではあるが、抜粋とはいえ、これだけまとめて聴くのは久しぶりだ。ヴァンスカさんは、けっこう思い入りたっぷりに,旋律を歌わせていく指揮者で、読響ののダイナミックなサウンドをうまく使っていた。今日のオーケストラの配置は、ヴァイオリンを対向に、第1の後ろにチェロ、その奥にコントラバスを配置。ヴィオラは第2の後ろとなるので、弦楽は右側が薄くなる。従ってホルンが右奥になっていたと思うが、席の位置関係でよく見えなかった。
 北欧の音楽は、澄んだ音色による自然描写の空気感が特徴的。しかも『ペール・ギュント』のような劇付随音楽では、情景の描写力が演奏の課題となるだろう。今日の読響は、弦楽のアンサンブルがやや荒っぽく、音に濁りがあったのが残念だ。

 2曲目は、フィンランドの現代の作曲家、カレヴィ・アホ(1949~)のクラリネット協奏曲。ソリストはスウェーデン出身のマルティン・フロストさん(1970~)。ヴァンスカさんは積極的にアホの作品を採り上げ、世界に紹介しているのだという。今回の読響への客演でも、3つのコンサートで、それぞれ「クラリネット協奏曲」「ミネア」「チューバ協奏曲」を採り上げる(いずれも日本初演)。クラリネットについてはほとんど知識がないのだが、そんな素人にもフロストさんはとにかく上手いというのは分かる。超絶技巧の持ち主であることは間違いなく、この曲の世界初演もフロストさんによる(2006年/ロンドン、オスモ・ヴァンスカ指揮BBC交響楽団)。曲はもちろん現代音楽であり、無調、変拍子で複雑に錯綜した曲だが、前衛的というほどでもなく、聴きやすい曲ではある。ただし、独奏クラリネットも、指揮も、そうとう難しそうだ。5つの楽章から成るが、全楽章が続けて演奏された。複雑な変拍子のリズムに乗って、低音から高音まで目まぐるしく駆け巡るクラリネット…、その演奏技巧が凄まじい。旋律というよりは音の奔流だ。これほどたくさんの音がよくも出せるものかと、フロストさんの華麗なテクニックに圧倒されてしまう。おそらく会場にいた人が皆、同様の感想だったに違いない。オーケストラ関係者以外の人はこの日初めて聴いたはずだか、皆、拍手喝采であった。
 アンコールも用意されていた、「クレズマー舞曲」という伝承曲をフロストさんの弟のヨーラン・フロストさんが編曲したもので、もちろん独奏クラリネットとオーケストラのための協奏的な小品である。こちらも過激なテクニックで聴衆を翻弄する楽しい作品、そして演奏だった。

 後半は、おなじみのシベリウスの交響曲第2番。曲の説明は必要ないだろう。何度聴いたか分からないくらいだし、また何度聴いても良い曲である。
 さて今日の演奏はというと…。まず、ヴァンスカさんは全体的に遅めのテンポで、大河の流れのごとく、堂々たる構えを見せる。全休止や休符の取り方に間を取り、劇的に盛り上げていくのが上手い。馬力のある世も今日サウンドも轟音を轟かし、迫力満点、豪快なシベリウスとなった。
 ヴァンスカさんはフィンランドでもシベリウスの第一人者なのだというから、楽曲の解釈や表現手法などについては、素人が狭い音楽体験の中でしか持てない個人的な好みでとやかく言うべきでもなさそうだ。本家の音楽を是とするとすれば、あとはオーケストラの演奏(表現)能力の問題になる。
 今日の読響の演奏は、まず弦楽の音の濁りが気になった。編成が大きいこともあるだろうし、練習が十分でなかったのかもしれない(何しろアホの初演曲が3曲もあったから)。しかしシベリウスではここは譲れないところだ。ピーンと張りつめ極北の空気感があってこそ、力強い民族的に熱情が対比的に表現され、豪放な中にもガラスのような繊細な心情が見え隠れするシベリウスだからである。一方、その豪放の部分に関しては、読響の力量が遺憾なく発揮された。サントリーホールを揺るがす、全合奏の時の爆発的な音量は読響ならではのものだ。少々荒っぽいが、その圧倒的な迫力の前には多少のことには目をつぶって、豊かな音の洪水に身を委ねる方が良い。とくに、第3楽章の終盤から第4楽章の冒頭までの盛り上げ方は、ヴァンスカさんの思い入れたっぷりの描き方と読響の輝かしいサウンドがマッチして、劇的な効果を生み出していた。待ち続けて、待ち続けて、待ち続けた上での到達点。目映いばかりの恍惚感がそこにあった。…まあ、そういう風にできている曲なので、当たり前と言えばそれまでなのだが…。

 今日は、名曲シリーズには珍しい初演曲があったりして、北欧プログラムとはいっても、なかなか聴き応えもあり、また面白いコンサートでもあった。良くも悪くも読響らしさが出ていて、十分に楽しめたコンサートであった。次回の3月の名曲シリーズは他のコンサートと重なってしまったために、オペラシティ名曲シリーズに振り替えてもらったので、今シーズンのサントリー名曲シリーズをこの席で聴くのは最後となる。4月以降の来シーズンでは、同じ3列目だが、センター付近に席替えをしたので、もっと良い条件で聴けるようになるので、来年度も楽しみにしている。

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2 コメント

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スクロヴァチェフスキ (アリエッタ)
2012-02-19 12:02:46
3月の読売はオペラシティでスクロヴァチェフスキさんを2回聴く予定です。楽しみですね♪
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来月のスクロヴァチェフスキ (ぶらあぼ)
2012-02-20 17:28:04
アリエッタ様

私はベートーヴェン・プロはオペラシティ名曲に振り替えましたが、チャイコフスキー4番の方は3/20のみなとみらいに行く予定です。スクロヴァチェフスキさん、元気に来てくれるといいですね。風邪なんかひかないようにお祈りしましょう。
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