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弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

特許法改正・みんなの党柿澤未途議員の国会質疑

2011-06-09 19:59:27 | 知的財産権
このブログ6月1日記事「特許法改正案 国会で可決」において、通りすがりさんから以下のコメントをいただきました。

《改正の審議とこのブログ (通りすがり) 》2011-06-02 00:57:45
『審議の過程を追っていましたら、2011年 5月27日経済産業委員会の柿澤未途議員の質疑内容の「シフト補正」の部分は、このブログの「特許法の改正の進捗状況」を種本に作られたようですね。衆議院TVを見て、びっくりしました・・・』

私は衆議院TVでもその発言をフォローしましたが、以下のように会議録も公表されました。

衆議院経済産業委員会の会議録議事情報一覧
第12号 平成23年5月27日(金曜日)
平成二十三年五月二十七日(金曜日)午前九時開議
 出席委員
  委員長 田中けいしゅう君
  相原史乃君 ・・・ 柿澤未途君 ・・・
    …………………………………
 経済産業大臣       海江田万里君
 政府参考人(特許庁長官) 岩井 良行君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)
 不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)(参議院送付)

柿澤委員 ・・・
先ほど来、ダブルトラックですとか、さまざまな専門用語が飛び交っていて、私は通常、経済産業委員会を担当していませんので、本当にこの間、特許法を勉強するのが大変だったんですけれども、二〇〇六年の特許法改正で、シフト補正の禁止というのが導入されています。この特許法、本当に専門用語が多くて往生するんですけれども、このシフト補正というのは何かといえば、これは特許請求の範囲に記載された発明のポイントを変えてしまうというものであります。
現行の法律の条文を素直に解釈すると、これはいわゆる単一性の問題で、場合によっては、どんな補正を行ってもシフト補正に該当してしまうのではないか、こういう話もある。審査基準で法を緩く解釈して、ここはいいですよという、ある種のお目こぼしでしのいでいるなんという話もあるんですけれども、本来でいえば、こういう裁量的なやり方でシフト補正に該当するかどうかが決められるような実態があるとすれば、これは余り好ましいことではない、こういうふうにも思います。
 ・・・
特許庁としては、シフト補正と単一性について再検討を始められるというようなことも少し動きとしてあるやに聞いておりますけれども、二〇〇六年にこのシフト補正の禁止というのが行われて、それがもたらした影響についてどう見ているのかということをお伺いしたいと思います。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。
  ・・・
一方で、御指摘がございましたように、このシフト補正の禁止につきましては、ユーザー側から、どの程度の補正であれば発明の内容を大きく変更しないものとして許されるのかという判断が難しいのではないかという御懸念や、厳格に運用されると発明を適切に権利化することが困難になってくるのではないかという懸念が今も示されておるということは、私どもも承知をしてございます。
  ・・・
しかしながら、今のような問題がございますので、具体的な事案の蓄積をしていくにつれ、特許庁といたしまして、効果と懸念の部分をよく調査いたしまして、まず実態の把握をした上で、必要があれば必要な対応をしていくというふうに考えている次第でございます。
----------------------

次に、このブログでの議論の経緯は以下の通りです。4月18日「特許法改正の進捗状況」に対して、同じ4月18日に通りすがりさんと私との間でコメントやり取りがありました(下記)。

《次の法改正は? (通りすがり) 》2011-04-18 01:17:09
『特許庁は、シフト補正と単一性の再検討を始めるようですね。(もっとも報告書が来年2月だと、審議会開催や、審査基準や法の改正は、いつになることやら・・・。奇しくも同じ3月11日に行われた、弁理士会特許委員会の審査基準改訂の要望もきっかけの一つ???)
次の法改正は、これなのでしょうか?
2011.4.15
発明の特別な技術的特徴を変更する補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究についての一般競争入札公告

《シフト補正と単一性の法改正 (ボンゴレ) 》2011-04-18 21:44:50
『通りすがりさん、情報ありがとうございます。
次の法改正に向けて動き出しているのですね。
シフト補正と単一性の現行法については、条文に欠陥があると思っています。
請求項1に特別な技術的特徴がないと認定された場合、法律を素直に解釈すると、どんな補正を行ってもシフト補正になってしまいます。審査基準では法律を緩く解釈する「お目こぼし」で凌いでいますが、それは異常事態です。
お目こぼしと言うことは、「これでも大目に見てあげているのだ」ということで、ユーザーから見たら厳しすぎる運用でもそれを改善することができません。

ぜひ法改正して欲しいところです。』

太字のところを比較してみると、たしかに柿澤議員はこのブログのコメントをご参照いただいたように見えますね。取り上げていただき、ありがたい限りです。

私がコメントで述べた『請求項1に特別な技術的特徴がないと認定された場合、法律を素直に解釈すると、どんな補正を行ってもシフト補正になってしまいます』に関しては、このブログの「平成18年法改正説明会」(2006-07-23)で述べています。
『[特許請求の範囲]
請求項1:発明A
[明細書]
発明A
発明A’(Aを減縮した発明)
発明A+B(構成Aに構成Bを付加した発明)
(知りたい点)
請求項1の発明に新規性なし、との拒絶理由通知を受け、その拒絶理由については承服する場合に、①発明A’に訂正する補正は認められるのか、②発明A+Bに訂正する補正は認められるのか、という点です。

改正特許法17条の2第4項によると、
「補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」
とあります。
特許法37条と特施規25条の8によると、
37条の発明の単一性の要件を満たすためには、「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」ことが必要であり、「特別な技術的特徴」とは「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう」と規定しています。

上記の例で、発明Aは新規性が否定され、この点について承服しているのですから、発明Aには特別な技術的特徴がないことになります。
そうとすると、厳密に考えると、どんな補正をしても補正前の発明と補正後の発明とが37条の単一性の要件を満たすことはあり得ないではないか、ということになってしまうのです。

上記のような質問をした人がおられまして、それに対する特許庁の回答は、「シフト補正禁止の運用はあまり厳密にしないように」との方向付けもされているので、そのような方向で審査基準を作成していくことになる」というような回答でした。要するに現在のところはまだ何ともいえません。』

そしてその後、審査基準の案が2007年1月に発表になり、3月に審査基準が確定し、4月の出願からシフト補正禁止の適用を受けることとなりました。
請求項1の発明が特別の技術的特徴を有していない場合の取り扱いとしては、「請求項1に直列につながる下位の請求項については審査してあげる。ただし、補正ができるのは、『下位の請求項のうちで特別な技術的特徴が発見された最初の請求項、特別な技術的特徴が発見されなかった場合には最後の請求項に記載した事項をすべて含み、それにさらに限定を付加する場合のみに認められる』ということになりました。
これが「お目こぼし」です。昨日「お目こぼし」についてで記事にした、江戸時代のお代官様の裁量権が有する絶大な権力を思い浮かべてしまいます。

しかし、これでは窮屈すぎます。そこで、「これこれのような場合には上記のお目こぼしから外れるけれど補正を認めてほしい」という事例についてパブコメで意見を出したり特許庁説明会で質問したりしましたが、認めてもらえませんでした。
これが「これでも大目に見てあげているのだ」ということで、ユーザーから見たら厳しすぎる運用でもそれを改善することができなかった事例です。

その間のこのブログでの記事を以下にまとめておきます。
シフト補正禁止の審査基準案 2007-01-04
シフト補正禁止の運用 2007-01-06
シフト補正禁止の運用(2) 2007-01-08
審査基準案に意見提出 2007-01-23
新審査基準発表 2007-03-25
特別な技術的特徴 2007-03-27
審査ハンドブック 2007-03-29
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国際調和か、お目こぼしか (通りすがり改め「TB」)
2011-06-10 01:00:26
(何度も訪れて「通りすがり」のままというのもなんですので、これからは「TB」(←通りすがりの弁理士)にさせてください)
 実は私は、「お目こぼし」で却って良かったんじゃないかと思っています。
 もともと4項改正の立法趣旨は「1.国際調和」と「2.出願間の公平(=反お目こぼし)」でした。たとえば過去にボンゴレさんが紹介された特技懇に審査官が書かれた記事などをみても、「2.出願間の公平」は、改正当初は大切に扱われていました。
 ところが最近では(最も直近では、弁理士会特許委員会の4月の答申)「現在の審査基準は 1.国際調和 に反している」、との声が日増しに高くなってきていました。
 今の審査基準では、どうしても上記2つの趣旨を両立させることができないのです。
 「ならば、審査基準を修正すればいい」と、私などは簡単に思うのですが、
結局、特許庁は面子を重んじて審査基準をそのままにし、
「1.国際調和(=EPと日本の審査はほぼ同様)」を重視して、
「2.出願間の公平(=反お目こぼし)」はあきらめる方針に転じた、
つまり
・「お目こぼし」を大々的に行うようになった。
のが、現在の状況のように思います。
 審査基準どおりの厳しい補正の制限をされるよりは、たとえ建前として「お目こぼし」の理由付けであったとしても、「1.国際調和(=EPと日本の審査はほぼ同様)」を重視する運用となって、とりあえず良かったと思っています。
返信する
法改正か審査基準か (snaito)
2011-06-10 19:02:21
TBさん、コメントありがとうございます。

まず、「出願間の公平(=反お目こぼし)」というのがよくわかりませんでした。
「反お目こぼし」ということは、「条文に忠実に」だと思います。何で条文に忠実でないと出願間の公平が損なわれるのか。お目こぼししつつ出願間の公平を維持することは可能にも思われますが。

『審査基準どおりの厳しい補正の制限をされるよりは、たとえ建前として「お目こぼし」の理由付けであったとしても、「1.国際調和(=EPと日本の審査はほぼ同様)」を重視する運用となって、とりあえず良かったと思っています。』
私は、現行の審査基準がお目こぼしだと考えているのです。現行の審査基準よりもさらに緩い運用がされているということですね。具体的にはどのような点でしょうか。

『過去にボンゴレさんが紹介された特技懇に審査官が書かれた記事』というのを見つけることができませんでした。済みません。具体的な記事の日付などを教えてください。

特許法17条の2第4項で私がまずいと思うのは、「第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明」として37条の条文を安易に用いてしまったところです。そのおかげで、請求項1に特別の技術的特徴が認められない場合、お目こぼしをしない限り、あらゆる補正が許容されなくなります。

私が認めてほしいと思っているのは以下のような場合です。
[特許請求の範囲]
請求項1 発明A
請求項2 発明A&B
[明細書]
発明A’が開示されている。

請求項1に特技特が認められないとき、現行審査基準では請求項2のA&Bの特定事項をすべて具備した発明に限り補正を認めています。
私の希望は、例えば発明A’が発明Aを限定的減縮したものとなっているのであれば、A’に減縮する補正を認めてほしい、というものです。
パブコメなどで要望しましたが無視されました。
返信する
後半から書きます (TB)
2011-06-10 21:11:26
 すみません。snaitoさんの意図とずれたことを書いてしまったようです。
 ずれていない後半から書きます。

1.「発明A’が発明Aを限定的減縮したものとなっているのであれば、A’に減縮する補正を認めてほしい」
の件、特許庁は常々「EPとほぼ同様」と答えています。今では運用では許容されているケースが多いと考えていますがいかがでしょうか?(新規性が無くても、OAにおいて「・・・に関する留意点」(前の「補正の示唆」)を行わない⇒4項違反を通知しない)
 ちなみに最近、弁理士会の委員会からも要望が出されており、EPやUSとの詳細な比較がされています。
 日本弁理士会電子フォーラム

TOP > 弁理士会からのお知らせ > 答申書・報告書 > 実務系(特実意商) >
11/04/14
答申書「発明の単一性違反と補正の制限についての調査及び研究」

「さらに、以上の検討の結果(特に、欧州の審決『T 274/03』の考え方を受けて、以下を提言した(2011.3.11提出:添付資料参照)。
・・・・・
従って、国際調和という観点から、出願当初の独立請求項において挙げられていた構成要件を更に限定するように明細書からの特徴を付加する補正については、第17条の2第4項の要件を適用することがないようにするべきである。」

2.特技懇の記事の件
 すみません。ずっと前にここで見たように思っていたのですが、勘違いでしたか。
 記事自体は下記のものです。

特技懇 246号
”平成18年改正法の施行に伴う「分割・補正等」の審査基準の改訂について” 佐久 敬
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/246kiko.pdf
とりあえず、後半部分について(後は夜中にでも続きを書きます)

返信する
残りについて (TB)
2011-06-10 23:34:23
 続きを書きます。

「反お目こぼし」ということは、「条文に忠実に」だと思います。
⇒私もそのつもりでした。TB

何で条文に忠実でないと出願間の公平が損なわれるのか。お目こぼししつつ出願間の公平を維持することは可能にも思われますが。
⇒そうですね。そうとも考えられますね。
 ただ、私は
「お目こぼし」≒「裁判では負けると思っているが、あえて実施していること」
と捉えました。(ここが見解のずれはじめでしょうか?)
 すると「全員がお目こぼしをすることはありえない」⇒「不公平な運用」
となるのではないでしょうか?TB

私は、現行の審査基準がお目こぼしだと考えているのです。
⇒私は「お目こぼし」を、
「基準から外れているのに、
 法的な裏付けがなく例外的に運用すること全て」
 として使いました。
 ですから、審査基準の「基本的な考え方」からの「例外」も「お目こぼし」だし、
「例外の例外」もお目こぼし。
審査ハンドブックでの審査基準からの「例外」も「お目こぼし」・・・
 ただ実は、私は「審査基準の法解釈がそもそも間違っている」とも考えています。
 ですので、
「法解釈を誤った審査基準の厳しすぎる運用からのお目こぼしは、
実は法の正しい運用になっていることが多い」
とも思っています。TB

現行の審査基準よりもさらに緩い運用がされているということですね。具体的にはどのような点でしょうか。
⇒4月に改訂された、審査ハンドブック63.03の運用です。
旧2010.4.
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/handbook_shinsa/63.pdf
新2010.4.
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/handbook_shinsa/h23_63.pdf

 弁理士会の会員限定フォーラムの電子会議室には、
次のような質問が載っていますが、
特段の反対意見は出なかったようです。TB

> 「拒絶理由通知において補正の示唆(ハンドブック63.09)が無い場合
> には、基本的には代理人は17条の2第4項(シフト補正禁止)を考慮する必
> 要はない。」と理解していてもよろしいのでしょうか?

> より具体的には、例えば「請求項1にSTFが無い懸念があっても、審査官か
> らの補正の示唆が無い場合には、(新たな独立請求項を立てるような大幅な補
> 正はともかく)請求項1から減縮補正するような軽微な補正は(たとえ直列的
> 従属請求項の全ての要件を含まない補正であっても)、従来通り(EP等の諸
> 外国と同様に)認められる」ということを意味しているのでしょうか?

 snaitoさんは「お目こぼし」をとても悲しんでいるように見えました。しかし「公平で合理的な正しい規則」からの「お目こぼし」は問題ですが、「不公平で不合理な誤った規則」からの「お目こぼし」は、「なんら恥じる必要は無い」と思います。TB
返信する
後半について (snaito)
2011-06-11 00:13:19
TBさん、詳細な説明をして戴き、ありがとうございます。

私も「後半から書きます」からコメントさせて戴きます。

私自身、2007年4月以降出願の中間処理をほとんど経験していないものですから、シフト補正に関する審査動向を把握していません。
また、TBさんが紹介された最近の弁理士会の報告書も読んでおらず、不勉強がばれてしまいました。

> 「発明A’が発明Aを限定的減縮したものとなっているのであれば、A’に減縮する補正を認めてほしい」
の件、特許庁は常々「EPとほぼ同様」と答えています。今では運用では許容されているケースが多いと考えていますがいかがでしょうか?

そういう実務傾向が見えてきているのですね。それは良かったです。
2007-03-25に
http://blog.goo.ne.jp/bongore789/e/78cff0edd2ebd1244da2ec5ce2e531ff
で書いたように、私はシフト補正禁止に関する審査基準案発表時にパブリックコメントに応募したのですが、下記の件については無視されました。
『1.意見の第1は、請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有していなかった場合の補正範囲についてです。
請求項1:A
請求項2:A+B
明細書中に「Aは好ましくはA’、より好ましくはA”」と記載されています。
請求項1、2ともに審査され、請求項1に特技特がないと判断されたとき、請求項1のAをA’、あるいはA”に訂正する補正は認められません。
「これでは不便ではないか」ということでパブコメで意見を出したのですが、確定版審査基準ではこの意見は採用されていませんでした。』

また、2007年3月23日に、東商ホールで開かれた弁理士会の「特許委員会公開フォーラム」に参加し、同じ質問をしました。
そして、「これでは不便ではないでしょうか」とコメントしたところ、回答に立った方は「不便といわれても・・・」とおっしゃっていましたが・・・

フォーラムでの説明によると、審査基準作成に際しては、弁理士会が当初から特許庁に意見を進言していたというのです。そのようないきさつを考慮すると、「不便といわれても」といわれても・・・、とこちらが思ってしまいました。

それに引き比べ、今年4月の弁理士会報告書では
「さらに、以上の検討の結果(特に、欧州の審決『T 274/03』の考え方を受けて、以下を提言した(2011.3.11提出:添付資料参照)。
・・・・・
従って、国際調和という観点から、出願当初の独立請求項において挙げられていた構成要件を更に限定するように明細書からの特徴を付加する補正については、第17条の2第4項の要件を適用することがないようにするべきである。」
と提言されているということで、やっと大きな流れが生まれてきたな、と感慨無量です。

特技懇の記事は了解しました。多分ここではまだ取り上げていないと思います。今回読んでみることとします。
返信する
残りについて (snaito)
2011-06-11 16:30:07
TBさん、こんにちは。

「残りについて」についてコメントします。

TBさんのスコープについて了解しました。以下、私のスコープを紹介します。今回のシフト補正禁止に限定し、さらに4年前の状況を中心としています。(「特技特」=特別な技術的特徴)
《請求項1に特技特がないと認定された場合》
[法律]=「請求項1に特技特がなかったら、どんな補正をしてもシフト補正になり、補正できない。」=厳しすぎる
[審査基準]=「請求項1に特技特がなくても、直列の下位クレームを審査し、特技特が発見されたクレームまたは最下位クレームの発明特定事項のすべてを含むクレームに補正することは許す」=【お目こぼし】
[あるべき姿]=「請求項1に特技特がなくても、請求項1の技術事項をさらに減縮する補正は認めるべき」=【お目こぼし】の更にお目こぼしになるので、(少なくとも4年前は)認められなかった。

私のスコープにおいて、「審査基準」=「お目こぼし」であり、審査基準通りに運用されれば出願間の公平は保たれることになるでしょう。

シフト補正禁止違反は、その性格上裁判沙汰になることは稀であると考えられます。

この4月に改訂された審査基準については、当時の通りすがりさんにご紹介いただきながらまだ勉強しておらず、恥じ入る次第です。何しろ原発事故に目を奪われていたものですから。

審査官から補正の示唆がない場合について、私は2007年4月以降出願案件でおもしろい経験をしました。確か3年前の話で、まだ審査官もシフト補正禁止の運用に慣れていなかった頃です。
拒絶理由通知に対して補正の示唆がなかったので、審査官に電話しました。審査官はハンドブックの補正の示唆について知らなかったみたいです。一度電話が切れた後に審査官から電話がかかり、「補正の示唆をしなかった以上、本件でシフト補正禁止を適用する拒絶理由はうちません」とおっしゃり、ありがたく拝受しました。
個別例外的な取り扱いだと思っています。

法律が厳しすぎる場合、私は「お目こぼし」の審査基準を否定するものではなく、歓迎します。しかし、お目こぼしである以上、どうしても厳しめの運用にならざるを得ないだろうと懸念します。実際、私が「請求項1が特技特を有しない場合でも請求項1を減縮する補正を認めてほしい」とした要望は、4年前には認められませんでした。
従って、「早いとこ法律を正しい姿に改正してくれ」と考えます。
返信する
ありがとうございます(&蛇足) (TB)
2011-06-11 19:32:21
 匿名での投稿に過ぎないのに、丁寧に対応していただきありがとうございます。

 蛇足ですが、少しだけ。

[あるべき姿]=「請求項1に特技特がなくても、請求項1の技術事項をさらに減縮する補正は認めるべき」
 にはまったく同意します。(法改正でも、法解釈の変更でもどちらでもいい)

 「TBさんが紹介された最近の弁理士会の報告書も読んでおらず」
の件、普通は弁理士フォーラムに記事がアップされたらメールが来るのに、この件では来ませんでした。また、印刷物での郵送もこれからのようです。弁理士の中でも、読んでいない先生の方が多いように思います。(大きな実務変更につながるのに、不思議なことです)

 「4月に改訂された審査基準⇒審査ハンドブック」
 結局、法律や審査基準はそのままで、審査ハンドブックのみを変更して「お目こぼし」をしやすくした、という妙な状況のママなのです。先生の「早いとこ法律を正しい姿に改正してくれ」に激しく同意します。
返信する
Unknown (とおりすがり2)
2011-06-12 08:31:40
[あるべき姿]=「請求項1に特技特がなくても、請求項1の技術事項をさらに減縮する補正は認めるべき」

そういう法律または運用になった場合、請求項1を非常に広いクレームにしておけば、どんな新クレームでも作成可能になり、シフト補正禁止をまるっきり有名無実化できてしまいそうですね。
返信する
シフト補正禁止をどこまで認めるべきか (snaito)
2011-06-12 11:07:12
とおりすがり2さん、コメントありがとうございます。

このような議論をどんどん深めることが重要だと思います。

私は4年前に現行審査基準に対するパブリックコメントを提出した際には、
『せめて、「請求項1に特別な技術的特徴が認められない場合」であっても、元の請求項1を減縮する発明(限定的減縮のみに限っても良い)に補正することは認めるべきであると考える。』
としました。
「限定的減縮のみに限っても良い」としたのは、とおりすがり2さんが心配するような事態を最初から排除しても良いですよ、という意味でした。

ただし、特技特を有しない請求項1の補正範囲を限定的減縮に限定したのでは、不便な事態というのが存在するかもしれません。そこはまた「じゃあ、こういう場合はどうするのか」と意見を出してもらうことで、議論が深まるでしょう。

なお、現行審査基準でも、特許請求の範囲を請求項1のみとしておけば、とおりすがり2さんが心配するような補正は可能です。
実際、企業の知財部員によっては、シフト補正禁止の実施に伴い、請求項1のみで出願することに決めている人もいます。
返信する
シフト補正禁止の「有名無実化」の件 (TB)
2011-06-13 01:41:14
 横からですが、成り行きから少しコメントさせて下さい。
 「シフト補正禁止」は、特許庁の審議会等で検討されて、改正につながったのですが、当時の委員の方の前提は「平成15年の単一性規定第37条の改正前」でした。従って、「特別な技術的特徴(STFor特技特)」が請求項1にあろうとなかろうと、一連の議論には全く関係なかったのです。(ちなみにその後の国会では、「シフト補正禁止」は特に議論されずに成立)
 その意味でも、上記の「あるべき姿」の議論は「シフト補正禁止をまるっきり有名無実化」とはならないものと思います。(単に「大きく発明を変更する補正」の中に、「減縮補正」が入っているかどうか、の議論に過ぎません。来年2月の特許庁委託研究の報告結果を、楽しみにしている理由でもあります。)
 
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