弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

知床遊覧船とアマチュア無線

2022-05-11 21:24:09 | 知的財産権
日常的にアマチュア無線使用、電波法に抵触も 観光船「KAZU 1」運航会社
5/10(火) 日テレNEWS
『北海道の知床沖合で観光船が沈没した事故で、運航会社が船との連絡手段として、本来は業務での使用が認められていないアマチュア無線を日常的に使っていたことがわかりました。』
『一方、不備が指摘されている連絡手段について、観光船「KAZU 1」の運航会社は、事故以前にも日常的にアマチュア無線を使っていたことが関係者への取材でわかりました。
アマチュア無線を業務で使うことは電波法で禁じられています。
国交省は、小型旅客船への緊急対策として、全国の事業者に運航基準の徹底と、常時通信可能な通信設備の確実な積載を求めることを表明しました。』

知床連絡船事故とアマチュア無線の関係について、やっとニュースが出始めました。
私が「知床遊覧船の通信手段 2022-04-30」で記事にしたように、沈没したカズワンはアマチュア無線機器を搭載し、当時知床連絡船の事務所はアンテナが折れていて無線が繋がらなかったが、同業他社の人がその人の施設に設置したアマチュア無線機器でカズワンの船長と連絡が取れ、その同業者が118番通報した、という事実が報道されていました。その後、「アマチュア無線」というニュースが出なくなっていたのですが、今になって再度出始めました。

「携帯電話」「衛星携帯電話」も無線による通信ですが、ここで「無線」という場合、携帯や衛星携帯は意味せず、狭い意味での「無線通信」が該当します。会話を行う双方が、特定の周波数で電波通信を行うトランシーバーを設置し、トランシーバー間で直接に通話を行うやつです。携帯のように間に基地局を介さず、衛星携帯のように間に人工衛星を介していない点で相違します。
アマチュア無線も、「無線」の一種です。ただし、操作できる人はアマチュア無線技士資格取得者に限られ、会話の内容に業務連絡を含むことはできません。従って、カズワンが事務所との業務連絡にアマチュア無線を用いていたのであれば、明らかに違法です。
しかし、アマチュア無線というのは魅力なのですよね。簡単に入手でき、しかもトランシーバーが安価です。違法に手を染めたくなる気持ちはわかります。

合法的な無線通信手段は、おそらく「国際VHF」と呼ばれている無線の規格でしょう。船舶側が「船舶局」、陸側が「海岸局」として認められる必要があります。5W規格の船舶局の運用には3級海上特殊無線技士(3海特)、海岸局、25W規格の船舶局の運用には2級海上特殊無線技士(2海特)の資格が必要です。

今から20年ほど前、私が山口県で暮らしていた頃、私が関係していたヨットハーバーで、無線機器を正規のものに整備しようとの話が持ち上がりました。そのヨットハーバーを拠点とするヨットクラブで、海上のモーターボート(指導・救助船)と陸側の待機所(ヨットハーバー)の間での無線通信を目的とします。まずは、海に出る関係者の全員が3海特の資格を取得しました。全員が1ヶ所に集まり、1日の講習と検定試験で資格を取得することができます。次に、ヨットハーバーを運営する団体の職員2名が2海特の資格を取得しました。ヨットハーバーに設置予定の海岸局を運用するためです。
ところが、海岸局の設置がなかなか進みません。ヨットクラブ側としては、自分たちのヨットクラブの仲間内での通信を目的としています。ところが、聞いてみると、海岸局というのは、私的な集団が仲間内で使うような運営は許されず、設置する海岸を含む沿岸での半ば公共で用いる無線局が要請されていたようなのです。ヨットハーバー側にはもともとそんなつもりはありません。行政側と連絡を取りながら計画を進めていたはずなのですが、行政もその点に気づくのが遅かったのかもしれません。
結局、私が関係していた期間内には、そのヨットハーバーに国際VHFの海岸局、船舶局は開設されませんでした。3海特、2海特の資格だけは取得したのですが・・・。
ちなみに私も1日の講習で3海特を取得し、「これだったら勉強すれば上の資格も取得可能だ」と気付き、勉強して資格試験を受け、1海特を取得してしまいました。

船舶と陸側との間で正規の無線を運用しようとすると、以上のようなめんどうなことが待っているようです。こっそりとアマチュア無線に手を出してしまう気持ちもわかるというものです。

私は子供の付き添いで、ジュニアヨットの大会出場のために各地のヨットハーバーを回りました。琵琶湖大会では、地元の琵琶湖ジュニアヨットクラブが世話をしてくれました。使っていた無線機器は、市民バンドでした。これなら合法です。しかしうわさでは、市民バンドというのはトラック野郎に独占され牛耳られている、ということでしたが、実態はどうなのでしょうか。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 知床遊覧船事故 | トップ | 第2次上海事変と南京事件 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

知的財産権」カテゴリの最新記事