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弁理士の日々

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シフト補正禁止の運用

2007-01-06 15:08:05 | 知的財産権
前回、シフト補正禁止の審査基準案について紹介しました。
私が持っていた一番大きな疑問点は解消したのですが、新たな疑問点がいくつか湧いてきました。

[補正前の特許請求の範囲]
請求項1:発明A
請求項2:発明A+B(構成Aに構成Bを付加した発明)
[発明の詳細な説明]
構成Aを下位概念の構成A’とすると好ましい点が記載されている。

拒絶理由通知で、請求項1は新規性なしあるいは進歩性なしとして拒絶され、請求項2には拒絶理由がつきませんでした。
出願人は、請求項1を発明A’に減縮する補正を行えば特許になると考えました。そのような補正は許可されるでしょうか。

ところが今回の審査基準によると許可されない可能性があるのです。
ポイントは、「発明Aが特別の技術的特徴を有するか否か」という点にあります。
もし請求項1の発明Aが特別の技術的特徴を有しないとすると、今回の審査基準案の4.3.1の手順で、補正前の請求項の発明の中から特別の技術的特徴を有する発明を探すことになります。ここでは、発明の単一性の要件に関する審査基準の4.2も用います。その結果、請求項2がそれに該当します。そうすると、審査基準案の4.3.1に記載されているように、補正で追加が許されるのは、請求項2の発明特定事項をすべて含む同一のカテゴリーの発明に限られます。つまり、A+Bをさらに減縮するかさらに何かを付加する発明しか補正で付加できないというのです。
そうすると、発明A’、即ちBを含まない発明に補正することができないということになります。

これは大問題です。
本当にこのように運用されるのだとしたら、出願時のクレーム立てを考え直さないといけません。上記の例であれば、
[出願時の特許請求の範囲]
請求項1:発明A
請求項2:発明A’
請求項3:発明A+B
のように、減縮する可能性のある発明を最初からクレームアップしておかなければならない、ということになってしまうのです。

もちろん、「補正前の請求項1の発明Aは、進歩性はないものの特別な技術的特徴は有する」と判断される場合もあり、その場合は補正で請求項1を発明A’に訂正することは可能ですが、特別な技術的特徴を有するか否かは審査してみないと分からないのですから、出願時の手当を怠ることはできません。

「これは問題ではないか」ということでパブコメで意見を言わなければいけませんね。
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Unknown (Nbenrishi)
2007-01-07 08:55:05
ボンゴレ様。Nbenrishiです。明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。シフト補正の審査基準案の解説ありがとうございました。

 ボンゴレ様の指摘通り、請求項2として「発明A’」を挙げるのか「発明A+B」を挙げるのかで、直列的な従属系列の方向が変わり、審査を進める対象が変わるので、従属項に挙げる順番も気を使うことになりますね。

 またこの審査基準案の2つの図の例を見る限り、請求項の補正をする場合、拒絶理由通知前に審査をされた請求項数の大きい(一番限定された)請求項の発明特定事項をすべて含まなければならず、審査に係る当該一番限定された請求項から後で不要と判断した発明特定事項を外す補正はそもそも最初の拒絶理由時から許されないので、請求項の記載に今まで以上に気を使うようになりますね。

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請求項の立て方 (ボンゴレ)
2007-01-07 11:21:50
Nbenrishiさん、明けましておめでとうございます。

Nbenrishiさんのおっしゃるとおりです。請求項を増しても問題は解決しないですね。
[出願時の特許請求の範囲]
請求項1:発明A
請求項2:発明A’
請求項3:発明A+B
として、発明Aに特別の技術的特徴が認められなかったら、請求項3は審査対象から外されてしまうので、結局は発明A+Bについては分割出願せざるを得なくなります。

Aがダメだったときに、まず特許を取りたいのがA’なのかA+Bなのか、そこまで考えて出願時の請求項立てを考える必要がありそうです。

しかし、これほどまでに出願を細切れにしなければならない必然性が本当にあるのか、出願人にあまりにも負荷と費用を負担させすぎているように思います。
ここは積極的に庁に対して意見を表明する必要がありそうです。
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