私は2008年頃、中村哲さんの以下の本を読んでアフガニスタンの実態について理解していました。
カラー版 アフガニスタンで考える―国際貢献と憲法九条 (岩波ブックレット)
この本を読んだ第一印象は、外国から首都カブールを通して見えるアフガニスタンと、国土の大部分を占める山間部に直接暮らして見えるアフガニスタンとは、その姿が全く異なっている、ということでした。
「アフガニスタンは、国土のまんなかにヒンドゥークシュ山脈という巨大な山塊を抱えた、文字通り『山の国』です。国土の面積は日本のほぼ1.7倍ありますが、そのおおかたは山岳地帯です。しかも6千メートル、7千メートル級の山々が林立しているのです。したがって、谷も非常に深い。ですから、昔から交通の便が悪く、よくいえば割拠性が強く、地域の自主性のもとにそれぞれの地域をそれぞれの勢力が治めていました。」
「それぞれの共同体、部族共同体の中を律する要の役割を、イスラムが果たしているのです。」
「割拠・乱立する地域共同体が、共通の不文律でもってアフガニスタンという天下を形作っている、といえます。」
そこでまず、アフガニスタンの国全体を理解するためには、ヒンドゥークシュ山脈を含めたアフガニスタンの地勢を見る必要があります。ウィキペディアから、地勢図を転載しました(下図)。
Creative Commons
アフガニスタンには、最大人口のパシシュトゥン人を筆頭に、タジク人、その他の多くの民族が分布しています。アフガニスタン各地での動きを理解する上では、アフガニスタンの民族分布を把握する必要があります。同じくウィキペディアから転載しました。
PD-USGov-Military-Army
アフガニスタンに関するニュースでは、州の名前で報道されます。アフガニスタンの州の分布を参照する必要があります。同じくウィキペディアからの転載です。
GNU Free Documentation License
以上の準備を済ませた上で、最近のアフガニスタンのニュースを見ます。
アフガン第1副大統領が「暫定大統領」宣言 闘争準備か 8/19(木) 朝日新聞
『アフガニスタンの第1副大統領として政権を支えていたアムルラ・サーレ氏が、全国で唯一、イスラム主義勢力タリバンによって制圧されていない北東部パンジシール州に身を潜めていることが、複数の住民への取材でわかった。タリバンが権力を掌握した後、サーレ氏は政権の崩壊を認めず、ツイッターで「暫定大統領」に就任したと宣言。同州に避難した軍兵士や地元軍閥らと武装闘争の準備を急いでいるとみられる。』
パンジシール州についてウィキペディアでは、
『パンジシール川(カーブル川支流)が流れるパンジシール渓谷は、カーブルの北150 km、ヒンドゥークシュ山脈の裾にある。
本州の中心地、パンジシール渓谷は、ジャマーアテ・イスラーミー(イスラム協会、後に北部同盟)のアフマド・シャー・マスード将軍の根拠地(タハール州と並んで)として知られた。マスードの指揮の下、パンジシール渓谷はソビエト連邦軍にもターリバーンにも制圧されなかった唯一の地域であった。』
とあります。上の各図によると、パンジシール州はヒンドゥークシュ山脈南麓の大渓谷地帯に位置し、タジク人が中心であり、2001年のタリバン政権時代には北部同盟の版図になっていたことが分かります。今回も、この大渓谷に立てこもったサーレ陣営は結構しぶといかも知れませんね。ただし、マスード将軍あっての強力陣営だったかも知れず、今回マスード将軍の息子が加わったとしてもどれだけ強力かは未知数です。
軍閥が反攻、タリバンから一部地区奪還 石像の破壊も 8月22日 朝日新聞
『アフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンの支配に反発する動きが目立ち始めた。北部では軍閥がタリバンを追い出し、一部の地区を奪い返した。支配地域の奪還は、タリバンが権力を掌握して以降、初めてとみられる。各地で市民のデモも起きている。
地元メディアによると、北部バグラン州で21日、地元軍閥が一斉攻撃を仕掛け、タリバンから3地区を取り戻したという。SNS上では、軍閥メンバーとみられる男たちが、崩壊した政権が使っていた黒、赤、緑の3色の国旗を屋根の上に飾る動画が拡散した。
東隣にあるパンジシール州の住民によると、同州では第1副大統領として政権を支えていたサーレ氏や、タリバンの猛攻から逃げてきた政府軍兵士ら数千人が地元軍閥に合流し、武装闘争の準備を進めている。』
バグラーン州は『ヒンドゥークシュ山脈の北側にあたる。』(ウィキペディア)とあります。民族分布図を見ると、バグラーン州はパシュトゥーン人が多く住んでおり、タリバーンの中心はパシュトゥーン人です。2001年当時も、決して北部同盟の版図ではなかったようです。軍閥はどれだけ持ちこたえられるでしょうか。
上の地勢図で見ても、サーレ陣営が立てこもるパンジシール州と、軍閥が立ち上がったバグラーン州とは、その間にヒンドゥークシュ山脈があり、両者の連携は難しそうです。
カラー版 アフガニスタンで考える―国際貢献と憲法九条 (岩波ブックレット)
この本を読んだ第一印象は、外国から首都カブールを通して見えるアフガニスタンと、国土の大部分を占める山間部に直接暮らして見えるアフガニスタンとは、その姿が全く異なっている、ということでした。
「アフガニスタンは、国土のまんなかにヒンドゥークシュ山脈という巨大な山塊を抱えた、文字通り『山の国』です。国土の面積は日本のほぼ1.7倍ありますが、そのおおかたは山岳地帯です。しかも6千メートル、7千メートル級の山々が林立しているのです。したがって、谷も非常に深い。ですから、昔から交通の便が悪く、よくいえば割拠性が強く、地域の自主性のもとにそれぞれの地域をそれぞれの勢力が治めていました。」
「それぞれの共同体、部族共同体の中を律する要の役割を、イスラムが果たしているのです。」
「割拠・乱立する地域共同体が、共通の不文律でもってアフガニスタンという天下を形作っている、といえます。」
そこでまず、アフガニスタンの国全体を理解するためには、ヒンドゥークシュ山脈を含めたアフガニスタンの地勢を見る必要があります。ウィキペディアから、地勢図を転載しました(下図)。
Creative Commons
アフガニスタンには、最大人口のパシシュトゥン人を筆頭に、タジク人、その他の多くの民族が分布しています。アフガニスタン各地での動きを理解する上では、アフガニスタンの民族分布を把握する必要があります。同じくウィキペディアから転載しました。
PD-USGov-Military-Army
アフガニスタンに関するニュースでは、州の名前で報道されます。アフガニスタンの州の分布を参照する必要があります。同じくウィキペディアからの転載です。
GNU Free Documentation License
以上の準備を済ませた上で、最近のアフガニスタンのニュースを見ます。
アフガン第1副大統領が「暫定大統領」宣言 闘争準備か 8/19(木) 朝日新聞
『アフガニスタンの第1副大統領として政権を支えていたアムルラ・サーレ氏が、全国で唯一、イスラム主義勢力タリバンによって制圧されていない北東部パンジシール州に身を潜めていることが、複数の住民への取材でわかった。タリバンが権力を掌握した後、サーレ氏は政権の崩壊を認めず、ツイッターで「暫定大統領」に就任したと宣言。同州に避難した軍兵士や地元軍閥らと武装闘争の準備を急いでいるとみられる。』
パンジシール州についてウィキペディアでは、
『パンジシール川(カーブル川支流)が流れるパンジシール渓谷は、カーブルの北150 km、ヒンドゥークシュ山脈の裾にある。
本州の中心地、パンジシール渓谷は、ジャマーアテ・イスラーミー(イスラム協会、後に北部同盟)のアフマド・シャー・マスード将軍の根拠地(タハール州と並んで)として知られた。マスードの指揮の下、パンジシール渓谷はソビエト連邦軍にもターリバーンにも制圧されなかった唯一の地域であった。』
とあります。上の各図によると、パンジシール州はヒンドゥークシュ山脈南麓の大渓谷地帯に位置し、タジク人が中心であり、2001年のタリバン政権時代には北部同盟の版図になっていたことが分かります。今回も、この大渓谷に立てこもったサーレ陣営は結構しぶといかも知れませんね。ただし、マスード将軍あっての強力陣営だったかも知れず、今回マスード将軍の息子が加わったとしてもどれだけ強力かは未知数です。
軍閥が反攻、タリバンから一部地区奪還 石像の破壊も 8月22日 朝日新聞
『アフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンの支配に反発する動きが目立ち始めた。北部では軍閥がタリバンを追い出し、一部の地区を奪い返した。支配地域の奪還は、タリバンが権力を掌握して以降、初めてとみられる。各地で市民のデモも起きている。
地元メディアによると、北部バグラン州で21日、地元軍閥が一斉攻撃を仕掛け、タリバンから3地区を取り戻したという。SNS上では、軍閥メンバーとみられる男たちが、崩壊した政権が使っていた黒、赤、緑の3色の国旗を屋根の上に飾る動画が拡散した。
東隣にあるパンジシール州の住民によると、同州では第1副大統領として政権を支えていたサーレ氏や、タリバンの猛攻から逃げてきた政府軍兵士ら数千人が地元軍閥に合流し、武装闘争の準備を進めている。』
バグラーン州は『ヒンドゥークシュ山脈の北側にあたる。』(ウィキペディア)とあります。民族分布図を見ると、バグラーン州はパシュトゥーン人が多く住んでおり、タリバーンの中心はパシュトゥーン人です。2001年当時も、決して北部同盟の版図ではなかったようです。軍閥はどれだけ持ちこたえられるでしょうか。
上の地勢図で見ても、サーレ陣営が立てこもるパンジシール州と、軍閥が立ち上がったバグラーン州とは、その間にヒンドゥークシュ山脈があり、両者の連携は難しそうです。