平成18年法改正に含まれる特許法の改正のうち分割と補正に関する部分の審査基準案が公表されました。
「出願の分割」の改訂審査基準(案)<PDF 74KB>
「第50条の2の通知」の審査基準(案)<PDF 75KB>
「発明の単一性の要件」の改訂審査基準(案)<PDF 104KB>
「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準(案)<PDF 15KB>
「審査の進め方」の改訂審査基準(案)<PDF 15KB>
4番目がいわゆる「シフト補正」に関する審査基準ですね。これと、3番目の発明の単一性の要件に関する審査基準とに目を通してみました。
シフト補正禁止の運用については、7月に「平成18年法改正説明会」としてブログ記事にしました。この記事の中で採り上げたのは、以下のような場合にどのように運用されるのかという点です。
[特許請求の範囲]
請求項1:発明A
[明細書]
発明A
発明A’(Aを減縮した発明)
発明A+B(構成Aに構成Bを付加した発明)
(知りたい点)
請求項1の発明に新規性なし、との拒絶理由通知を受け、その拒絶理由については承服する場合に、①発明A’に訂正する補正は認められるのか、②発明A+Bに訂正する補正は認められるのか、という点です。
改正特許法17条の2第4項によると、
「補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」
とあります。
特許法37条と特施規25条の8によると、
37条の発明の単一性の要件を満たすためには、「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」ことが必要であり、「特別な技術的特徴」とは「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう」と規定しています。
上記の例で、発明Aは新規性が否定され、この点について承服しているのですから、発明Aには特別な技術的特徴がないことになります。
そうとすると、厳密に考えると、どんな補正をしても補正前の発明と補正後の発明とが37条の単一性の要件を満たすことはあり得ないではないか、ということになってしまうのです。
(今回発表の審査基準)
審査基準案の5ページ4.3.2で明らかにされました。結論からいうと、発明A’に減縮する補正、発明A+Bに変更する補正のいずれも、認められます。
審査基準の4.3.2の手順です。なんだか非常にわかりづらい手順ですが、補正前の請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明(補正後の請求項1)について、特別な技術的特徴を有するかどうかを判断する、とあります。発明A'も発明A+Bもこれに該当するでしょう。
ただし、補正後に
請求項1:発明A'
請求項2:発明A+B
としたら、請求項1は審査されますが請求項2は審査されません。両者の関係は発明の単一性要件を満たしていないからです。
ところで・・・
補正前の請求項1の発明が特別の技術的特徴を有していないとされた場合、新審査基準の4.3に従って、特別な技術的特徴を有する請求項を探さなければなりません。
私は、新規性・進歩性を有しない請求項は、当然に特別な技術的特徴を有しないものだと思っていたのですが、そうではないのですね。
「発明の単一性の要件」の審査基準の3ページ(注3)に、
「「発明の先行技術に対する貢献をもたらすものでないことが明らかとなった場合」とは、「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術の中に発見された場合のほか、一の先行技術に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合や、単なる設計変更であった場合が含まれる。」とあります。
これからすると、
(1) 新規性を有しない発明 ・・・・・特別な技術的特徴-なし
(2) 進歩性を有しない発明
(2)(a)《一の先行技術に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合や、単なる設計変更であった場合》・・特別な技術的特徴-なし
(2)(b)上記(a)以外・・・・・特別な技術的特徴-あり
となります。
つまり「進歩性を有しない」という拒絶理由に承服する場合であっても、その請求項が特別な技術的特徴を有するか有しないか、という点を判断しなければならないということです。
「出願の分割」の改訂審査基準(案)<PDF 74KB>
「第50条の2の通知」の審査基準(案)<PDF 75KB>
「発明の単一性の要件」の改訂審査基準(案)<PDF 104KB>
「発明の特別な技術的特徴を変更する補正」の審査基準(案)<PDF 15KB>
「審査の進め方」の改訂審査基準(案)<PDF 15KB>
4番目がいわゆる「シフト補正」に関する審査基準ですね。これと、3番目の発明の単一性の要件に関する審査基準とに目を通してみました。
シフト補正禁止の運用については、7月に「平成18年法改正説明会」としてブログ記事にしました。この記事の中で採り上げたのは、以下のような場合にどのように運用されるのかという点です。
[特許請求の範囲]
請求項1:発明A
[明細書]
発明A
発明A’(Aを減縮した発明)
発明A+B(構成Aに構成Bを付加した発明)
(知りたい点)
請求項1の発明に新規性なし、との拒絶理由通知を受け、その拒絶理由については承服する場合に、①発明A’に訂正する補正は認められるのか、②発明A+Bに訂正する補正は認められるのか、という点です。
改正特許法17条の2第4項によると、
「補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」
とあります。
特許法37条と特施規25条の8によると、
37条の発明の単一性の要件を満たすためには、「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」ことが必要であり、「特別な技術的特徴」とは「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう」と規定しています。
上記の例で、発明Aは新規性が否定され、この点について承服しているのですから、発明Aには特別な技術的特徴がないことになります。
そうとすると、厳密に考えると、どんな補正をしても補正前の発明と補正後の発明とが37条の単一性の要件を満たすことはあり得ないではないか、ということになってしまうのです。
(今回発表の審査基準)
審査基準案の5ページ4.3.2で明らかにされました。結論からいうと、発明A’に減縮する補正、発明A+Bに変更する補正のいずれも、認められます。
審査基準の4.3.2の手順です。なんだか非常にわかりづらい手順ですが、補正前の請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明(補正後の請求項1)について、特別な技術的特徴を有するかどうかを判断する、とあります。発明A'も発明A+Bもこれに該当するでしょう。
ただし、補正後に
請求項1:発明A'
請求項2:発明A+B
としたら、請求項1は審査されますが請求項2は審査されません。両者の関係は発明の単一性要件を満たしていないからです。
ところで・・・
補正前の請求項1の発明が特別の技術的特徴を有していないとされた場合、新審査基準の4.3に従って、特別な技術的特徴を有する請求項を探さなければなりません。
私は、新規性・進歩性を有しない請求項は、当然に特別な技術的特徴を有しないものだと思っていたのですが、そうではないのですね。
「発明の単一性の要件」の審査基準の3ページ(注3)に、
「「発明の先行技術に対する貢献をもたらすものでないことが明らかとなった場合」とは、「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術の中に発見された場合のほか、一の先行技術に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合や、単なる設計変更であった場合が含まれる。」とあります。
これからすると、
(1) 新規性を有しない発明 ・・・・・特別な技術的特徴-なし
(2) 進歩性を有しない発明
(2)(a)《一の先行技術に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合や、単なる設計変更であった場合》・・特別な技術的特徴-なし
(2)(b)上記(a)以外・・・・・特別な技術的特徴-あり
となります。
つまり「進歩性を有しない」という拒絶理由に承服する場合であっても、その請求項が特別な技術的特徴を有するか有しないか、という点を判断しなければならないということです。
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