今回の知床遊覧船事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りします。また、行方不明の方が1日も早く発見されることをお祈りします。
遭難した知床遊覧船の通信に関して、昨日まではさまざまな情報が錯綜していました。
「会社の屋根に設置しているアンテナが折れていた。」
「会社から船長に連絡してもつながらない。同業者が自分の施設でアマチュア無線で呼びだしたところ、連絡がつき、その同業者が118番通報した。」
それに対して昨日、以下の情報が上がりました。
事故直前に通信手段“変更”申請…なぜ衛星電話から“エリア外”の携帯に 4/29(金) テレ朝ニュース
『確実な通信手段がない状態で出航した「KAZU1」。小型船舶の検査機関を所管する国土交通省への取材で、新たな事実が浮かび上がってきました。
今月20日の検査のとき、法令で設置が定められている通信手段を、衛星電話から携帯電話に変更したいとの申請があったことが新たにわかりました。豊田船長への確認、また、漁業関係者からの「つながる」との情報もあったため、変更を認めたうえで、検査は合格としています。全国的に、通信手段の確認は、自己申告を基に行われているため、実際につながるかどうかは確認していないということです。・・・
地元で30年以上の経験がある漁師に聞きました。業務連絡は、衛星電話で行うのが当たり前だといいます。』
「法律で遊覧船に通信設備の設置が義務づけられている中、遭難事故の当日は、携帯電話が通信手段であった」というのが正しい認識でしょうか。
ところが、知床半島の先端付近では、携帯が圏外となる可能性が高い、というのが実態だとのことです。
船長との携帯のやりとりが一時的には可能であり、また乗客が家族に「沈没する」と携帯で伝えていることから、完全に圏外ではなかったようです。
さて、今月20日までの通信手段であった「衛星電話」とは、多分イリジウムのことだと思います。地球上どこでも、多数のイリジウム衛星の一つと船内の衛星電話が無線でつながり、必要とする相手と通信ができます。会社側は普通の電話回線でも繋がるはずです。そうとすると、「折れていた会社屋上のアンテナ」は必要ありません。あのアンテナは何なのでしょうか。
同業者がアマチュア無線で船長と連絡したということです。ということは、船にアマチュア無線機器が搭載されていて、事故当時に船長はアマチュア無線で通信が可能だったということです。会社の折れていたアンテナは、アマチュア無線用のアンテナなのかも知れません。
しかし、アマチュア無線を遊覧船の業務に使用することは法律違反です。どのような実態があったのでしょうか。
私は、船舶無線というと、国際VHFを思い浮かべます。超短波を用いた無線通信で、船上に船舶局、会社に海岸局を設置します。船舶局の運用には3級海上特殊無線技士の資格が必要で、海岸局の運用には2級海上特殊無線技士の資格が必要です。
しかし今回の報道では、国際VHFの話題は一切登場しません。最近の実務では、もう衛星電話に集約されているのでしょうか。衛星電話であればなんの資格も必要ないでしょうから。
遊覧船事故の報道でも、「通信手段について何が問題だったのか」そろそろ正しい報道に集約してほしいものです。
ps 4/30 以下の報道がありました。
航路の大半が通信圏外の携帯 船長が通信手段と申請 観光船の事故前検査で 4/30(土) 北海道新聞
『海事局によると、日本小型船舶検査機構(JCI)札幌支部が20日、船舶安全法に基づく年1回の中間検査を行った際、豊田船長が通信手段を衛星電話から携帯電話に変更すると申請した。JCI側が「海上でつながるか」と確認すると、船長は「つながる」と答え、その場で変更を認めた。
船舶安全法は20トン未満の小型船舶の通信手段として携帯電話の使用を認めている。ただ、通信事業者の公式サイトによると、豊田船長が申請した携帯は航路の大半がエリア外だった。
これとは別にカズワンを運航する知床遊覧船は海上運送法に基づき、緊急時の連絡手段として衛星電話と無線を届け出ていた。だが関係者によると、衛星電話は少なくとも1年前から故障し、無線も数カ月前から同社事務所のアンテナが壊れ、自社では受信不能だった。』
上記記事の「無線」の意味が不明です。アマチュア無線が海上運送法で認められるはずがないし、とすると国際VHFでしょうか。
遭難した知床遊覧船の通信に関して、昨日まではさまざまな情報が錯綜していました。
「会社の屋根に設置しているアンテナが折れていた。」
「会社から船長に連絡してもつながらない。同業者が自分の施設でアマチュア無線で呼びだしたところ、連絡がつき、その同業者が118番通報した。」
それに対して昨日、以下の情報が上がりました。
事故直前に通信手段“変更”申請…なぜ衛星電話から“エリア外”の携帯に 4/29(金) テレ朝ニュース
『確実な通信手段がない状態で出航した「KAZU1」。小型船舶の検査機関を所管する国土交通省への取材で、新たな事実が浮かび上がってきました。
今月20日の検査のとき、法令で設置が定められている通信手段を、衛星電話から携帯電話に変更したいとの申請があったことが新たにわかりました。豊田船長への確認、また、漁業関係者からの「つながる」との情報もあったため、変更を認めたうえで、検査は合格としています。全国的に、通信手段の確認は、自己申告を基に行われているため、実際につながるかどうかは確認していないということです。・・・
地元で30年以上の経験がある漁師に聞きました。業務連絡は、衛星電話で行うのが当たり前だといいます。』
「法律で遊覧船に通信設備の設置が義務づけられている中、遭難事故の当日は、携帯電話が通信手段であった」というのが正しい認識でしょうか。
ところが、知床半島の先端付近では、携帯が圏外となる可能性が高い、というのが実態だとのことです。
船長との携帯のやりとりが一時的には可能であり、また乗客が家族に「沈没する」と携帯で伝えていることから、完全に圏外ではなかったようです。
さて、今月20日までの通信手段であった「衛星電話」とは、多分イリジウムのことだと思います。地球上どこでも、多数のイリジウム衛星の一つと船内の衛星電話が無線でつながり、必要とする相手と通信ができます。会社側は普通の電話回線でも繋がるはずです。そうとすると、「折れていた会社屋上のアンテナ」は必要ありません。あのアンテナは何なのでしょうか。
同業者がアマチュア無線で船長と連絡したということです。ということは、船にアマチュア無線機器が搭載されていて、事故当時に船長はアマチュア無線で通信が可能だったということです。会社の折れていたアンテナは、アマチュア無線用のアンテナなのかも知れません。
しかし、アマチュア無線を遊覧船の業務に使用することは法律違反です。どのような実態があったのでしょうか。
私は、船舶無線というと、国際VHFを思い浮かべます。超短波を用いた無線通信で、船上に船舶局、会社に海岸局を設置します。船舶局の運用には3級海上特殊無線技士の資格が必要で、海岸局の運用には2級海上特殊無線技士の資格が必要です。
しかし今回の報道では、国際VHFの話題は一切登場しません。最近の実務では、もう衛星電話に集約されているのでしょうか。衛星電話であればなんの資格も必要ないでしょうから。
遊覧船事故の報道でも、「通信手段について何が問題だったのか」そろそろ正しい報道に集約してほしいものです。
ps 4/30 以下の報道がありました。
航路の大半が通信圏外の携帯 船長が通信手段と申請 観光船の事故前検査で 4/30(土) 北海道新聞
『海事局によると、日本小型船舶検査機構(JCI)札幌支部が20日、船舶安全法に基づく年1回の中間検査を行った際、豊田船長が通信手段を衛星電話から携帯電話に変更すると申請した。JCI側が「海上でつながるか」と確認すると、船長は「つながる」と答え、その場で変更を認めた。
船舶安全法は20トン未満の小型船舶の通信手段として携帯電話の使用を認めている。ただ、通信事業者の公式サイトによると、豊田船長が申請した携帯は航路の大半がエリア外だった。
これとは別にカズワンを運航する知床遊覧船は海上運送法に基づき、緊急時の連絡手段として衛星電話と無線を届け出ていた。だが関係者によると、衛星電話は少なくとも1年前から故障し、無線も数カ月前から同社事務所のアンテナが壊れ、自社では受信不能だった。』
上記記事の「無線」の意味が不明です。アマチュア無線が海上運送法で認められるはずがないし、とすると国際VHFでしょうか。