弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

ブログテンプレートの変更

2006-06-17 21:35:06 | Weblog
またまたブログテンプレートを変更しました。

私のザウルスでブログを閲覧したところ、昨日までのテンプレートでは表示不良が発生することに気付いたのです。
出張先などで自分のブログを閲覧することができないのでは不都合なので、goo既存のテンプレートの中から表示問題がないタイプでおとなしい表示のものを選びました。

ちょっとおとなしすぎるようにも思いますが、取り敢えずこれで行きます。
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裁判所の意見(特技懇)(2)

2006-06-17 00:00:59 | 知的財産権
特許庁技術懇話会(略称「特技懇」)会報で昨年11月に発表された下記論文に関する第2報です。
1.知財高裁から見た特許審査・審判(知財高裁の篠原勝美所長)
2.東京地裁知財部から見た特許審査・審判(東京地裁 市川正巳判事)

審決取消訴訟(知財高裁)において、進歩性の判断基準は特許庁審判官よりも厳しく、審判で特許性有りとされた案件が審決取消訴訟で取り消される比率が高くなっています。
侵害訴訟(一審は地裁)でも特許法104条の3が導入されて特許無効の判断がなされておりますが、聞くところでは、地裁の裁判官は知財高裁よりもさらに厳しく判断しており、軒並み「特許無効とされるべきだから権利行使不可」の判決が下っているという話をよく聞きます。
この点について、上記2論文はどのように述べているでしょうか。

1.知財高裁から見た特許審査・審判
無効審判で特許維持の審決がなされ、審決取消訴訟が提起された場合、半数以上において審決が取り消されています。この点について、篠原所長は以下のように述べています。
「審判官が、公知文献の明示的な記載を重視し、ややもすれば自己の知識・経験に頼りがちな傾向があるのに対し、裁判では証拠が追加され、裁判官は、オーソドックスな事実認定の手法により、証拠相互の矛盾の有無などを分析、検討し、総合的に評価して、積極的に踏み込んで当業者の技術常識等を認定し、発明の実質的価値を吟味しようとする傾向があることが指摘できるように思われる。
 審決は、判決と同様、証拠による事実認定を基礎とした法的判断作用であり、その事実認定の対象も、技術的専門事項に限られないから、審判官には、幅広い知識・経験、豊かな一般常識を修得して事実認定のスキルアップを図る自己研さんが求められるが、取消判決の判示内容を検討してみることも有意義であろう。」

審判官の判断よりも知財高裁の裁判官の判断の方が優れている、というスタンスのようですね。
ただし、日本弁理士会主催で開かれたパネルディスカッション「発明の進歩性」(平成17年12月9日 JAホール)での議論内容を見る限り、最近の知財高裁の進歩性判断基準は厳しすぎる、というのが共通意見のようです。

2.東京地裁知財部から見た特許審査・審判
「地裁の裁判官は特許無効の判断に慣れているかが問題となる。進歩性の判断は、まず出来上がったものを見て簡単だと感じ、実はそれは後知恵であったことを気づかされ、後知恵に陥らないように自戒してもやはりこの程度のことはかえって当然過ぎて引用例が見つからないのではないかと考えたりする。そのような行ったり来たりを繰り返して進歩性判断の感覚を磨いていく。地裁の裁判官が限界線上にある進歩性判断においても信頼を得るためには、事件の質及び量の面で、相当の経験を積む必要がある。」
「判断の基本は、具体的に引用例を積み重ねていくことであると考えられ、安易に周知慣用技術等に頼るべきではないが、素人の目で見ると、この程度のものがどうして特許になってしまうのかと感じられる特許が目に付く。」

実は素人であるほど、発明と引例を後から対比すると、その発明が当たり前のように見えてくるのですよね。一方当業者は、発明の現場をよく知っていますから、発明というのがそんなに簡単に生まれないと実感しており、発明の進歩性を素人よりも高く評価する傾向にあると思います。
最近の裁判所での判断について話を聞くと、どうも「コロンブスの卵的な発明については進歩性を認めない」という態度がなされているように思われます。

上記地裁判事のコメントは、当業者ではない地裁判事が陥りやすい問題について自戒する発言ではありますが、現実には進歩性について厳しすぎる判断が成されている証拠ではないかと思わせるものがあります。

最近の知財高裁における進歩性の判断基準、地裁(侵害訴訟)における進歩性の判断基準が適切なのか、それとも厳しすぎるのか、まずはその点を議論する必要があります。私の印象としては厳しすぎるように思いますが。
そして、厳しすぎるという意見がコンセンサスを得るのであれば、この意見をどのように裁判で反映していくかです。
せっかく知財高裁ができたのですから、その制度を有効に活用したいです。この問題について有効な世論が形成されれば、知財高裁は組織としてその世論を取り入れる方向に動くであろうと予想されます。この点、それぞれの裁判官がタコツボに籠もって判決していた従来とは異なるはずです。

まずは議論の結果としての共通意見を各所で表明することが必要でしょう。共通の意見が形成されれば、それは世論となります。その世論の影響を受け、知財高裁全体としての判断基準が適切化していくでしょう。
その結果は、審決取消訴訟の結論、侵害訴訟における控訴審の結論の変化として現れるはずです。

侵害訴訟で「進歩性なし」との判決を受けた特許権者は、その判断が厳しすぎると考えるのであれば、労をいとわず、控訴審に持ち込みましょう。知財高裁で適切な判断が下るようになっていれば、地裁の判断基準も自ずから適切化されていくはずです。

本日(6月17日)に、日本知財学会主催第4回学術研究発表会の弁理士会協賛セッション「進歩性はいかにあるべきか」が開催されます。どのような議論が行われるか、楽しみです。
コメント (2)
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