弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

弁理士試験制度(2)

2006-06-08 00:50:00 | 弁理士
4月21日に開かれた産業構造審議会の第1回弁理士制度小委員会について、議事録の内容を前回かいつまんで報告しました。

知財協や経団連の委員は、「合格人数はそろそろ下げてもいいのではないか」という意見のようです。
しかし、私の意見は「受験生の受験負荷を適正化するためには、ある程度の合格人数枠は必要である。合格人数枠が多いことによって弁理士適性のない人が合格することがあったとしても、それは必要悪である。昔のように合格人数100人のように狭めると、受験地獄のために有為な人材が損なわれることになる。」です。

6月5日日経新聞夕刊に、谷垣財務大臣が良いことを書かれていました。
谷垣さんは司法試験にトライして合格されているのですね。
「1979年34歳で最終合格・・・今となっては回数すら覚えていない。」
「あのころの司法試験は一定の知識と能力が満たされれば受かる資格試験というよりは、偶然が左右しがちな不条理な参入障壁だった。」
「難関であっても構わない。だが法曹界への切符を得るだけのために、人生をかけるのは意味があるのか。なぜ試験に合格する知識より、法曹界に入った後の能力や識見が重要という前提の試験制度にならないのだろう。」

まさにその通りです。
極端に難しかった司法試験と同列では語れませんが、平成一桁の合格者100人時代、合格に要する勉強時間は3000時間とも5000時間ともいわれていました。受験生のとる態度は二つに一つで、
(1) 仕事をないがしろにして勉強に邁進し、何とか数年で合格するか
(2) 仕事はそこそこまじめにやるものの、勉強時間不足でなかなか合格ラインに到達せず、5年前後あるいはそれ以上の受験期間中にたまたま合格する幸運を待つ
というものでした。
いずれにしても、最も大切であるはずの実務スキルアップを犠牲にせざるを得ません。

それよりは、合格者枠を増やした上で短い勉強時間でさっさと合格してしまい、余った時間で実務スキルをアップさせる方がトータルとして優れています。現状のように700人まで合格枠が必要かどうかは議論が必要でしょうが。

「合格者が増えた結果として実務無経験弁理士が増大した」との批判がありますが、実務経験を有する弁理士も増えているのであり、経験/無経験の比率自体は変化していないようです。そもそも試験の内容が法律試験であり、実務能力を評価するのではないのですから。
実務能力はOJTで身につけるしかありません。昔から、実務未経験の初心者は特許事務所などに所属してOJTで実務スキルを身につけてきたのです。その初心者が、実務未経験無資格者から、実務未経験有資格者に変わるだけです。

議事録によると、「技術と法律の両方の素養を有すること」を重要視している意見が目立ちました。この点はどうするのですかねえ。
弁理士会は、「文系出身者には、登録時の導入教育で技術の素養を身につけさせる」との計画を持っているようですが、そんなことで技術の素養が身につくはずがありません。結局は単なるかけ声で終わるのでしょうか。
コメント
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