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読書感想「だから荒野」桐野夏生

2017年08月16日 13時20分28秒 | 乱読本感想

文藝春秋 2016年11月10日


★3 2017年08月16日 13:17

帯に“こんなにいとも簡単に夫と息子を捨てられるとは”と。
家族を維持している途中でそう思うことはあるだろう。
ただ、思ってもそれを実行に移す人はあまりいないだろう。
一時の願望でしかない。
だから、いとも簡単に捨てることができた朋美の心情に興味が湧いた。
家族を捨てる理由が描かれる。
捨てる朋美も捨てられる夫も息子も、そうなる理由は解るが、果たして自分は?と考えると、そこまではしないだろう。
ある意味勇気ある朋美の行動に注目する。
飛び出した朋美が出会う人たち、そうそう善い人に巡り会うわけもない。
捨てられた夫と息子たちは、“してもらっている”恩恵が無くなるとどうなるのかが描かれる。
どちらも、“家族”という集団に所属することの是非が問われる。
朋美が出会った人で“家族”を最初から否定して生きて来た人がいた。
その気持はよく解ったが、少しもの悲しい。
家族を捨てようと思った時に乗っていたのが車で、それほど深い考えもなく目指すのは長崎。
家族がテーマであると同時にロードムービーならぬロード小説なので、旅の途中で次々起こることが興味深い。
朋美の旅は長崎で終わったが、これから先の森村家はどうなるんだろう?
旅の途中で出会った人も、森村家の人も、誰ひとりとして結論、結果が出た人はいない。
現実はそうだろうが、中途半端に終わったままで不満足。
小説としてはもう少し踏み込んで欲しかった。


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