孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  APEC閉幕 極東開発への日本の参加を睨んで、領土問題交渉も浮上

2012-09-10 23:04:17 | ロシア

(極東ロシアの更に東への玄関口となるウラジオストク “flickr”より By dospacificos http://www.flickr.com/photos/kinolina/6098458319/

欧州志向からアジア太平洋国家へ
今月5日からロシア極東ウラジオストクで開催されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)が閉幕しました。

食料品の輸出規制の抑止、環境物品の関税引き下げリストの承認、有事の際に加盟国・地域間で石油や液化天然ガス(LNG)などの備蓄を相互に融通し合う枠組みを創設などの本来の議題もさることながら、韓国・中国と領土問題が表面化している日本にとっては、日中韓の首脳が握手したとか、何分間“交談”したとかいった話題などもあって、何かと注目された会議でした。

アメリカ・オバマ大統領が民主党大会を理由に欠席したこともあって、中国の存在感が目立ち、南シナ海問題を巡るベトナム首脳と胡錦濤主席の会談なども注目されました。

中でも一番印象に残ったのは、今回会議を起爆剤にして遅れている極東開発に弾みをつけようとする、開催国ロシア・プーチン大統領の力のいれようでした。

****APEC首脳会議:ロシア、極東発展の呼び水に…開幕****
日米中露など21カ国・地域によるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が8日午後、ロシア極東ウラジオストクで開幕した。ロシアで初めて開くAPECでホスト役を務めるプーチン大統領は、発展から取り残された極東に光を当て、ロシアが本格的にアジアの一員となる大号令を発しようとしている。(中略)

ロシアはユーラシアに広がる世界最大の国だが、ソ連時代から政治・経済の重点は首都モスクワのある欧州部に偏っていた。極東シベリアは資源供給基地や軍事拠点など中央の植民地的な役割を担わされてきた。「東方を支配せよ」を意味するウラジオストクも、ソ連時代は軍事・閉鎖都市だった。ソ連崩壊後の極東は経済混乱で衰退。90年代に開発計画が策定されたが、予算の裏付けがなく掛け声倒れに終わった。

だがプーチン大統領は、あえてウラジオストクを開催地に選んだ。投資総額は2兆円近い。立ち遅れたインフラを一気に整備し、投資拡大の呼び水とする戦略だ。主要貿易相手の欧州が債務危機から抜け出せない中、シュワロフ第1副首相は「ロシアの対外貿易でアジア太平洋諸国が占める比率を50%(現在は約23%)に引き上げたい」と、成長するアジア経済とのリンクに意欲を示す。

極東重視の背景には中国の存在もある。ロシア極東の人口減少が進む一方、隣の中国は人口を急増させている。「ここで極東開発に着手しなければ中国にのみ込まれる」という危機感があったのは間違いない。大統領が日本との北方領土問題決着に意欲を示すのも、対中にらみで日本を極東のパートナーにしたいという思惑がある。

ロシア科学アカデミー極東支部の極東諸民族歴史・考古学・民俗学研究所のラーリン所長は「『極東』はモスクワから見た呼び名であり、『太平洋ロシア』のほうがふさわしい」と提言する。プーチン大統領の東方戦略は、欧州志向が根強いロシアをアジア太平洋国家に変貌させるインパクトを秘める。【9月8日 毎日】
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問われる「ポストAPEC」の戦略
当然ながらAPECのための投資は一過性・限定的なものであり、今後どのように極東開発を進めるのかという戦略が必要になります。
ロシアでは今後、ソチでの冬季オリンピック、サッカー・ワールドカップが予定されており、手をこまねいていると、極東はロシア内でまた忘れ去られてしまいます。

****APEC:成功も極東シベリアの浮上には課題…ロシア****
ロシアのプーチン大統領は、インフラ整備に2兆円近い国費を投じてロシア初のAPECをひとまず成功させた。だが立ち遅れた極東シベリア全体の浮上につなげるには課題が山積している。

「(APECのために)新たな街がつくられた。ロシアが発展する大きな可能性を物語っている」。プーチン大統領と7日に会談した中国の胡錦濤国家主席は、ルースキー島にゼロから整備された会場を称賛した。152ヘクタールの広大な敷地はウラジオストク市内にある極東連邦大学の新キャンパスとなる。

ただ、不便な島への移転に不満をもつ学生や教員は多い。冬季や悪天候時は橋や渡船が使えず、島は本土から孤立する。大学は約1万7000人の学生を19年までに3万人に倍増させる計画で、うち7500人はアジアなどの外国人留学生(現在は約1000人)を見込んでいるが、多くの学生を集める「魅力」は乏しい。

ウラジオストクには国際空港の新ターミナルや3本の長大橋などが整備されたが、市民の間では「APECは一過性のイベント。終われば極東は忘れられる」との声もある。ロシアは14年に南西部ソチで冬季五輪、18年に欧州部でサッカーのワールドカップ(W杯)を開催する。いずれもプーチン大統領が国家プロジェクトとして総力を挙げており、極東への投資が先細りになる可能性もある。

ソ連時代に225万人を超えた沿海地方の人口は195万人に落ち込んでいる。人口減はロシアの極東シベリアに共通する深刻な問題だ。プーチン大統領は5月に極東発展省を新設し、てこ入れを図っているものの、人口増や地域全体の再生に転じる有効な政策は見いだせていない。

プーチン大統領はAPEC閉幕後の9日の記者会見で「極東シベリアの開発は必ず継続する。(APECは)第一歩にすぎない」と強調したが、具体的な成果につなげる「ポストAPEC」の戦略が問われそうだ。【9月10日 毎日】
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【「過去から引き継がれた全ての問題を解決したい」】
ロシアが継続的な極東開発を進めるうえで欲しいのは日本の協力です。
経済的に台頭し、人口増加も著しい中国には「のみ込まれる」との不安感もあります。政治的にも東アジアでの主導権を握ろうとする中国への警戒感もあります。ロシアが安心して手を組めるのは高い技術力と大きな資本を持ち、かつ、政治的野心が表に出てこない日本でしょう。

しかし、日本とロシアの間には北方領土問題が喉に刺さった小骨のように存在し、両者の関係強化を阻害し続けています。
プーチン大統領としては、北方領土問題をクリアして日本を極東開発に呼び込みたい思いが強いと思われます。

****露大統領:北方領土の決着 改めて意欲示す****
ロシアのプーチン大統領は9日、APEC首脳会議の閉幕を受け会見し、対日関係について「過去から引き継がれた全ての問題を解決したい」と述べ、北方領土問題の決着に改めて意欲を示した。

大統領は「日本は伝統的なパートナーで、地域における重要なパートナーのひとつ。我々は日本との関係発展に関心がある」と強調。8日の日露首脳会談で合意した、野田佳彦首相の12月をメドとする次回の訪露時に「(領土問題を)静かな環境で、より詳細に協議できる」と語った。(後略)【9月10日 毎日】
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こうした流れを受けて、長く停滞を続け、あるいは、メドベージェフ・ロシア首相が7月に北方領土を訪問したことで後退した感もある北方領土問題が浮上してきています。

*****野田首相、12月に訪ロ=領土交渉、秋に次官級協議―大統領、投資に期待****
野田佳彦首相は8日午後(日本時間同日昼)、ロシアのプーチン大統領とウラジオストクで約30分間会談した。首相は、北方領土問題の前進に向けて予定している自らのロシア訪問について「12月をめどに調整していく」と表明。大統領は「歓迎したい」と応じた。首相は、訪ロに先立ち、今秋に次官級協議を開くことも提案、大統領は異論を挟まなかった。

会談で首相は、日ロ関係の協力強化の重要性を強調した上で、メドベージェフ・ロシア首相が7月に北方領土を訪問したことを念頭に「(日本の)国民感情への配慮が必要だ」と指摘。領土交渉に関しては「静かで建設的な環境の下、双方受け入れ可能な解決策を見つけるべく、首脳、外相、次官レベルで、実質的議論をさらに進めていきたい」と語った。
これに対し、大統領は「世論を刺激せず、静かな雰囲気の下で解決していきたい」と同調した。

日ロ経済に関し、首相は「極東シベリア開発には日ロ協力のポテンシャル(潜在力)があり、相互信頼がさらに進めば協力が現実的なものになる」と述べ、関係強化に期待を示した。大統領は、日ロ間の貿易量が拡大していることに触れ、「日本の投資を歓迎する。投資保護を行いたい」と述べた。【9月8日 時事】
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もちろん、ロシア側のガードが緩んだ訳でもなく、安易な期待はできません。
また、解散・総選挙を睨んだ日本国内の政治日程・政局で混乱する可能性もあります。

****首相訪露予定、領土交渉「再活性化」へ道筋****
野田首相とロシアのプーチン大統領は8日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて行った会談で、首相が12月をめどに訪露することで一致、北方領土問題をめぐる交渉を「再活性化」させる道筋はとりあえず示された。

だが、ロシアは領土問題での譲歩を拒み、極東開発など経済関係の発展を優先する方針だ。
「中身の濃い議論ができた。最終的には大統領と直接じっくりと議論し、互いに納得できる解決案を見いだしていきたい」。首相は8日の会談後、記者団にこう語った。
政府は、秋に次官級協議を行う一方、首相の訪露前に大統領と親交のある自民党の森元首相を政府特使として派遣し、協議進展に向け、環境を整える考えだ。

ただし、日本外務省の幹部は「協議することと、ロシアの譲歩につながるかとは別の話だ」とみる。大統領は6月、首相との初会談で領土交渉を進展させるとしたが、約2週間後の7月3日、メドベージェフ首相が国後島を訪れ、日本への領土引き渡しを拒否する姿勢を示した。歯舞、色丹の2島引き渡しで最終決着とするロシアと、国後、択捉を加えた4島を求める日本の隔たりは大きい。【9月9日 読売】
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最近の極東経済情勢
ただ、領土問題は再度戦争でもするのでなければ、双方に主張・利害があり、互いに譲歩して政治的決着を図る姿勢がない限り何百年たっても進展しないのが現実です。
何百年でも自己の主張を続け一歩も引かない・・・というのもひとつの見識ではありますが、いささか自己満足的な感もあります。

また、ロシアの政治・経済状況は必ずしも法律や経済合理性に基づかない側面が多々あり、クレムリンや、それと結びついた政商・オリガルヒの思惑で、進出した外国企業が食い物にされるといったこともあります。

それにしても、極東地域の石油・ガス資源の開発や、農業生産などの可能性を座視するのは、日本経済の将来にとって大きな損失となるような気がします。いささか「満蒙は生命線」的な発想のようでもありますが。

“ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で、採掘ガスを輸出用の液化天然ガス(LNG)に加工する工場が09年にサハリン南部で稼働した。ロシアは独自のLNG生産技術を持たないため、日本の千代田化工建設などが工場を建設し、三菱重工などが専用輸送船を建造した。「サハリン2」には三井物産や三菱商事が出資している”

“天然ガスの輸出拡大戦略も進めている。昨秋、サハリン産のガスをハバロフスク経由でウラジオストクまで運ぶパイプラインが完成。ロシア政府系ガスプロムは、丸紅や伊藤忠商事などが参加する日本の企業連合との間でウラジオストク近郊に液化天然ガス(LNG)製造施設を建設する事業の採算性調査に着手した。”

“日本のLNG輸入量(11年)のうちロシアからは712万トンで全体の9%。日本政府は中東への依存度を下げる狙いでロシア産の輸入拡大を図る。ウラジオストクのLNG施設が日本の協力で計画通り稼働すれば、20年ごろから年約1000万トンの生産を見込んでおり、大半を日本向けに充てる方針。”【9月5日 毎日】

****シベリア油田開発、三井物産と帝石が参画検討****
国際石油開発帝石と三井物産が、ロシアの国営石油会社ロスネフチと共同で、東シベリア・イルクーツクの油田開発を検討していることがわかった。
政府も資金支援を検討しており、実現すれば、日本の民間企業が東シベリアで石油開発にかかわる初の事例となる。

原油輸入の約9割を中東に依存する日本としては、調達先の多様化につながることが期待できそうだ。
関係者によると、開発対象となる油田の埋蔵量は少なくとも、日本の需要の2~3年分にあたる20億~30億バレルとみられる。日本勢が3~5割程度出資することを念頭に調整しており、国際協力銀行(JBIC)や「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)も資金支援を検討している。【9月8日 読売】
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****アジアへ「回廊****
「『極東穀物回廊』をつくって、急速に発展するアジア太平洋諸国への輸出を増やすことが重要だ」。ロシア穀物連盟のアレクサンドル・コルブト副会長は昨年10月、記者会見でそう強調した。「極東穀物回廊」とは、シベリアで収穫された穀物を極東へ運び、アジア太平洋市場へ穀物を輸出する構想だ。

ロシアの穀物輸出は年間約2400万トン。主な輸出先はエジプトやサウジアラビアなど中東・北アフリカだ。だが、シベリアの約500万トンにのぼる余剰穀物の輸出は、ロシア南部の穀倉地帯やカザフスタンなどとの競争が激しい。「統一穀物会社」の幹部は国営ノーボスチ通信に、シベリアの穀物輸出の潜在力は20年までに800万~1千万トン見込めると述べている。 【9月6日 朝日】
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****露極東で日本車生産 秋以降に開始 政権「重視」も物流に難****
日本製中古車が市場を席巻してきたロシア極東のウラジオストクで今年秋以降、ロシアの新興自動車メーカー「ソラーズ」がマツダ車とトヨタ車の現地組み立てを相次いで始める見通しとなった。極東で日本メーカーの新車が生産されるのは初めてで、プーチン政権の極東重視路線に沿った動きだ。ただ、人口の希薄な極東は消費市場としての規模が小さいため、他地域に製品を輸送するための物流インフラの整備が生産拡大への鍵を握りそうだ。(後略)【8月20日 産経】
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1 コメント

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Unknown (すずめの涙)
2012-09-10 23:12:52
2012.9.23(日)全国日韓国交断絶国民大行進
【場所】札幌大通公園10丁目広場
【集合時間】14:00【出発】15:00
東京
【場所】水谷橋公園(東京都中央区銀座1-12-6)
【集合時間】15:00【出発】15:30
名古屋
【場所】名古屋市 未定
【時間】未定
大阪
【場所】新町北公園
【集合時間】14:00【出発】15:00
福岡
【場所】未定
【時間】未定

名古屋と福岡に関しましては詳細は決定しておりませんので
各自ご確認ください

注意事項各自ご確認ください

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