孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

温暖化による海面上昇  “水没する国”は移住計画など検討

2014-02-16 22:19:20 | 環境

(キリバス 堤防を越えて押し寄せる海水 【2012年3月9日 NBC News】http://worldnews.nbcnews.com/_news/2012/03/09/10618829-as-sea-levels-rise-kiribati-eyes-6000-acres-in-fiji-as-new-home-for-103000-islanders

アメリカ:記録的寒波で「温暖化懐疑論」】
温暖化の話を取り上げるたびに触れているように、長期にわたる変動であり、短期的には逆方向へのブレもある気象変動について、生活実感的に把握するのは非常に困難です。

この冬に記録的な寒波に襲われたアメリカでは、温暖化を否定するような議論が高まっているそうです。

****アメリカ大寒波で温暖化否定論が噴出****
過去20年間で最も厳しい寒波は、地球の気候が本当に温暖化しているのかと、人々に疑問を投げかけている。

保守派Webサイト「Breitbart.com」は、この大寒波を地球温暖化“でっち上げ”の証拠と呼んだ。
また、実業家のドナルド・トランプ氏はツイッターで、「今我々はここ20年で一番の寒波を経験しているが、ほとんどの人がこのような寒さを記憶していない。これが地球温暖化?」とつぶやいた。

しかし気候科学者たちは、今回の天候により現行の気候モデルが無効になるわけではなく、今週の極渦に対するさまざまな反応は、人々が寒さを忘れてしまったことを示しているという。

ここ数日、中西部の一部地域では気温が摂氏マイナス40度、体感温度に至ってはマイナス51度にまで低下し、はるか南のアラバマ州やジョージア州でもここ数年で一番の寒さを経験した。また、それによって20人以上の死者が確認されている。

テキサス州共和党上院議員テッド・クルーズ氏は、「寒いな。アル・ゴア氏は、こんなことは起こらないと私に言ったのに」とからかった。

ソーシャルメディア上では、凍りついたアル・ゴア氏の写真が人々の間を行き交っている(テレビ番組「The Daily Show」の中で、キャスターのジョン・スチュワート氏もその様子についてからかった)。
(後略)【1月10日 ナショナル・ジオグラフィック】
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温暖化対策に取り組みたいオバマ政権は、こうした「温暖化懐疑論」の高まりを警戒しています。

****記録的寒さでも「温暖化否定しない」ホワイトハウス見解****
いま寒いからといって、地球温暖化が起きていないと考えないで――。米ホワイトハウスは8日、米国で先週から続いた記録的な寒波は、地球の温暖化を否定することにはならないとする見解を発表した。

野党共和党などに根強い「温暖化懐疑論」が高まるのを抑える狙いがあるとみられる。

ホルドレン大統領補佐官(科学技術担当)はビデオメッセージで「寒波は温暖化が起きていない証拠だという話を信じないでほしい」と呼びかけた。(後略)【1月10日 朝日】
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温暖化に関する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の主張を認めるか否かは別として、少なくとも“今現在寒いことは、長期的な変動である温暖化の妥当性の判断には全く関係ない”というのはサルでもわかる当然の話ですが、アメリカ人は・・・・。

まあ、アメリカ人というのは“米国人のおよそ4人に1人は地球が太陽の周りを公転していることを知らなかった。人間が原始的な生物から進化したことを知っていたのは半数に満たない48%だった。”【2月15日 AFP より】といった国民ですから。

今世紀中の海面上昇量が1 - 2mを超える可能性も
話が横道にそれました。
温暖化の話にもどすと、そのひとつの現象とされるのが「海面上昇」
これも、生活実感的にはわからないものです。

一応、IPCCの報告では以下のようになっています。

****海面上昇量の予測*****
地球全体の気温が上昇し、陸上の氷床・氷河の融解や海水の膨張が起こると、海面上昇(海水準変動)が発生する。(中略)全地球的には温暖化により海面が上昇していると考えられている。

(IPCC)第4次報告書によれば、実測による海面水位の平均上昇率は、1961 - 2003年の間で1.8±0.5mm/年、20世紀通して1.7±0.5mm/年だった。
また、ここ1993 - 2003年の間に衛星高度計により観測された海面上昇は3.1±0.7mm/年と大きかった。

そのうち熱膨張による寄与がもっとも大きい値を示しており(1.6±0.5mm/年)、ついで氷河と氷帽の融解(0.77±0.22mm/年)、グリーンランド氷床の融解(0.21±0.07mm/年)、南極氷床の融解(0.21±0.35mm/年)の順で寄与が大きい。(中略)

2100年までの海面上昇量の予測は、IPCCの第3次報告書 (2001) では最低9 - 88cm の上昇、第4次報告書 (2007) では、最低18 - 59cmの上昇としている。

しかしこれらのIPCCのモデルでは西南極やグリーンランドの氷河の流出速度が加速する可能性が考慮に入っていない。
近年の観測では実際に大規模な融雪や流出速度の加速が観測されていることから、上昇量がこうした数値を顕著に上回ることが危惧されている。

AR4以降の氷床等の融解速度の変化を考慮した報告では、今世紀中の海面上昇量が1 - 2mを超える可能性が複数のグループによって指摘されている。(中略)

2011年、NASAの研究者でカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の地球システム科学教授であるエリック・リグノ氏は、南極やグリーンランドの氷河流出も考慮したうえで、2050年までの海面上昇を32cmと予測した。【ウィキペディア】
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【“水没する国”キリバスの国民をフィジーが受入
“2050年までに32cm”とか“今世紀中の海面上昇量が1 - 2mを超える”ということになると、日本を含めて世界中が深刻な影響を受けますが、海面下に消えてしまう島国もありえます。
南太平洋のツバル、キリバスあるいはインド洋のモルディブといった国々です。

そうした国々にとっては、遅々として進まない国際的な温暖化防止への取り組みは全くあてにできないものに過ぎず、移住計画が国家プロジェクトとして検討されています。

****キリバス人全員の移住も=気候変動で国土水没なら―フィジー*****
気候変動による海面上昇で国土が水没の危機に直面している太平洋の島国キリバスに対し、南太平洋の小国フィジーが「いざとなれば全員受け入れる」と申し出ている。フィジーのナイラティカウ大統領が11日、キリバスの首都タラワを訪問した際、公式に表明した。

キリバスを構成する島々の海抜は平均2メートル。海岸線がじわじわ住宅地に迫り、飲み水に塩が混じるようになってきた。海外集団移住も危機感を帯びて語られるようになっているが、先進国は積極的に受け入れる姿勢を見せていない。

ナイラティカウ大統領は「国際社会が温暖化を止められなければ海面は上昇するが、難民になることはない。キリバス人は堂々と(フィジーへ)移住できる。キリバス人の魂は新天地で生き続ける」と約束した。ニュージーランド北方沖約2000キロにあるフィジーの首都スバから、さらに北へ約2000キロ、赤道を越えた海域にタラワは位置する。

キリバスの人口は10万人。フィジーは90万人だが、人口の3分の1は貧困層だ。実際に受け入れ能力があるのか疑問視する見方もある。ただ、キリバスは既にフィジーに広大な農地を購入。塩害でキリバスが耕作不能になる事態に備えており、両国のつながりは深い。【2月16日 時事】 
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ともに南太平洋の島国である両国で、人口では“キリバスの人口は10万人。フィジーは90万人”ですが、面積ではフィジーはキリバスの22倍ほどです。

5年以上前にも、モルディブにおける、毎年の観光収入の一部を国土購入資金として積み立てる国土購入計画が報じられていました。

“(インド洋の島国モルディブで10月の選挙で当選したナシード)次期大統領は既に数カ国に打診しており、好感触を得ているとしたうえで、よく似た文化と気候を持つインドやスリランカ、それに国土が広大なオーストラリアを候補地に挙げた。また、観光資金を元に、幾つかのアラブ諸国のような国家ファンドを創設する計画だと語った。”【2008年11月10日 AFP】

キリバスの場合は、相手国フィジーが協力的なことは心強いところです。フィジーにはフィジーの思惑もあるのでしょうが。
生活環境も似ているので先進国への移住などよりは住みやすさはあるでしょう。食べていけるのか・・・という現実問題はありますが。


ニュージーランド:「気候変動難民」を否定
こうした国家的移住計画の他に、個人的に「気候変動難民」の認定を求める試みもありますが、現状では難しいようです。

****世界初の「気候変動難民」認定、NZ最高裁が退ける****
ニュージーランドの最高裁判所は26日、世界初の「気候変動難民」の認定を求めた太平洋の島しょ国キリバスの男性の訴えについて、「説得力が不十分」として退ける判決を下した。

キリバスのイオアネ・テイティオタさん(37)の弁護士は、国土の海抜が低いキリバスが海面上昇の脅威にさらされているとして、ニュージーランドの査証(ビザ)が期限切れになったものの、テイティオタさんを本国に送還するべきではないとして、訴えを起こしていた。

キリバスは30を超える環礁からなる国で、環礁の多くは海抜数メートルしかない。テイティオタさんの弁護士は、本人と家族が本国に送還された場合に遭遇する困難を考慮して、ニュージーランド当局はテイティオタさんを難民として認定するべきと主張していた。

最高裁判所のジョン・プリーストリー裁判官は26日、判決文の中で、キリバスが台風や洪水、水の汚染など気候変動に起因する環境悪化に直面していることを認めつつも、国際的に認知された国連(UN)の難民条約の下では、帰国した場合に迫害を受ける恐れがあることを難民の条件と定めており、テイティオタさんはこの条件を満たしていないと述べた。

テイティオタさん側は、キリバス政府に対処不可能な気候変動により、「受動的な迫害」を環境から受けていると主張していたが、裁判官はこの主張を退けた。

またプリーストリー裁判官は「より広いレベルで言えば、彼らの訴えが支持され、他の司法管轄区域でそれが採用されれば、中期的な経済的貧困、あるいは自然災害や紛争による即時的な影響、また気候変動がもたらしたと推定しうる困難などに直面した大勢の人々が、難民条約の下で保護される権利を有することになる」と述べ、「その意味で難民条約の範囲を変更することは、ニュージーランド最高裁の役目ではない。その変更を望むのであれば、それは各主権国家の立法機関の役目である」と続けた。

国連は、ツバルやニュージーランド領トケラウ、モルディブなどと並んでキリバスを気候変動により「国土を失う」恐れのある島しょ国の1つとしている。【2013年11月26日】
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先進国としては「気候変動難民」が押し寄せてくるような事態は避けたい・・・というのが本音でしょう。
そこは日本も同様ですが、かつてキリバス大統領からは日本に対し、難民として国外に移住することを可能にする職業訓練などの支援策を求める発言もありました。

****我が国は海に沈む」キリバス大統領が全10万人移住計画****
地球温暖化に伴う海面上昇により、国土が水没の危機にひんしている太平洋の島国キリバスのアノテ・トン大統領(55)は本紙と会見し、「我が国は早晩、海に沈むだろう」と明言。
国家水没を前提とした上で、国民の脱出を職業訓練などの形で側面支援するよう、日本など先進各国に要請した。

首都タラワの大統領官邸で、30日、インタビューに応じたトン大統領は、キリバスの水没は不可避との見方を強調、「小さな我が国には海面上昇を防ぐ手だてなどなく、どうしようもない」と述べた。

国際社会の取り組みについても、「温暖化は進んでおり、国際社会が(2013年以降のポスト京都議定書の枠組みなどで)今後、どんな決定をしても、もはや手遅れだ」と明確に悲観論を展開した。【2007年9月1日 読売】
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海面上昇しても沈まない?】
なお、ツバルやキリバスが本当に海面下に沈むのかどうかについては異論もあるようです。

****温暖化:「海面上昇でもツバル沈まず」 英科学誌に論文****
太平洋の島々は成長を続けており、海面が上昇しても沈むことはない」--。そう主張する研究論文が英科学誌「ニュー・サイエンティスト」に掲載され、議論を呼んでいる。

ツバルやキリバス、ミクロネシア連邦など南太平洋の島々は温暖化による海面上昇の影響で、将来的には地図上から消える「沈む島」と呼ばれてきた。

論文のタイトルは「変形する島々が海面上昇を否定」。
過去60年間に撮影された航空写真と高解像度の衛星写真を使い、ツバルやキリバスなど太平洋諸島の27島の陸地表面の変化を調査した。

その結果、海面は60年前よりも12センチ上昇しているにもかかわらず、表面積が縮小しているのは4島のみ。23島は同じか逆に面積が拡大していることが明らかになった。ツバルでは九つの島のうち7島が3%以上拡大し、うち1島は約30%大きくなったという。

拡大は「浸食されたサンゴのかけらが風や波によって陸地に押し上げられ、積み重なった結果」であり、「サンゴは生きており、材料を継続的に供給している」と説明。1972年にハリケーンに襲われたツバルで、140ヘクタールにわたってサンゴのかけらが堆積(たいせき)し、島の面積が10%拡大した事例を紹介している。

研究に参加したオークランド大学(ニュージーランド)のポール・ケンチ准教授は「島々が海面上昇に対する回復力を備えていることを示す」と指摘し、「さらなる上昇にも対応する」と予測。

一方、海面上昇が農業など島民生活に影響を与えることは避けられないとして、「どのような地下水面や作物が温暖化に適応できるか調べる必要がある」としている。【2010年6月9日 毎日】
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海面上昇はあるが、それ以上に島が成長拡大している・・・という話ですが、門外漢にはその妥当性は判断できません。
衛星写真等による“事実”だとのことですが、キリバスなどで土地が浸食され、海水が宅地・農地に押し寄せ、井戸にも海水が混じる・・・というのも“現実”でしょう。
どのように考えたらいいのか・・・よくわかりません。

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