孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  タリバン、カルザイ政権の外国部隊撤退を睨んだ動き 社会には変化も

2013-04-05 21:48:19 | アフガン・パキスタン

(厳しい寒さのカブールの路上で毎日物乞いする女性と子供 “flickr”より By jimimac90 http://www.flickr.com/photos/jimimac90/8559822510/

無人機VS自爆攻撃・ロバ爆弾
アメリカはアフアニスタン・パキスタンなどで、自軍兵士の犠牲を最小限にとどめるべく無人機による攻撃を多用しており、その法的根拠や、米国籍の者の暗殺が可能かどうか、ゲーム感覚にも思える無人機攻撃が民間人を含む生身の人間が犠牲となる戦闘行為に対する心理的ハードルを下げてしまうことの問題はないのか・・・いろんな視点からの議論もあります。

一方で、イスラム武装組織側はアメリカの無人機というハイテク兵器に対抗して、人間そのものを兵器として使う自爆攻撃を多用しており、無人機攻撃とは対照的な展開となっています。

そんなアフガニスタンで「ロバ爆弾」による攻撃があったそうです。
“ロバ”にはやや間延びした響きもあり、また、人間を使った自爆攻撃よりはましとも言えますが、無人機だろうが、自爆攻撃だろうが、あるいはロバ爆弾だろうが、飛び散る血しぶき、引き裂かれる手足など、戦闘による悲劇は同じです。

****ロバ爆弾」で4人死傷 アフガニスタン****
アフガニスタン東部ラグマン州の州都メータルラムで5日朝、ロバの背にくくり付けられた爆弾が爆発し、警官1人が死亡、市民3人が負傷した。

州政府報道官がAFPに明らかにしたところによると、爆発は警察官の詰め所前をロバが通りかかったところで起きた。ロバの背にくくり付けられた爆発物が遠隔操作で爆破されたとみられる。同報道官は、西側諸国に支えられた現政権への攻撃を続けるアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)の仕業だと非難している。

アフガニスタンでロバを使った爆弾攻撃はまれではあるが、昨年8月にも中部ゴール(Ghor)州で同様の攻撃があり、地元の警察署長が死亡し、3人が負傷している。【4月5日 AFP】
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外国部隊撤退後の治安維持に不安
アフガニスタンでは3日、44人にものぼる犠牲者を出すタリバンによる大規模な襲撃事件も起きています。

****タリバンが裁判所を襲撃、44人死亡 アフガニスタン****
アフガニスタン西部ファラーで3日、同国の旧支配勢力タリバンが裁判所を襲撃し、当局によると少なくとも44人が死亡した。過去1年余りで起きた襲撃事件の中で最多の死者数だ。

襲撃は裁判を受けていた反政府勢力メンバーの解放を狙ったものだったが、被告らが脱走したかどうかは今のところはっきりしていない。病院の医師によると負傷して治療を受けた者の中に被告人が1人いたという。
襲撃は裁判所の入口で起きた大きな自動車爆弾の爆発から始まり、最後に残った襲撃者1人を治安部隊が追い詰めるまで、少なくとも7時間は続いた。裁判所を襲った武装集団は9人全員が死亡した。

今回の襲撃事件によって、来年末までの北大西洋条約機構(NATO)軍撤退後、アフガニスタン当局が十分な治安体制をとれるかという懸念がさらに高まった。
内務省副報道官はAFPの取材に対し、「民間人34人、兵士6人と警察官4人が死亡し、負傷者は91人で大半が民間人だった」と述べた。この死者数は、2011年12月に首都カブールのイスラム教シーア派寺院で80人が犠牲となった爆弾事件以来、1度の攻撃による死者としては最多。

タリバンはウェブサイトに掲載した犯行声明で、襲撃は入念に計画されたものだったとし、判事、検察官、兵士、警官の計35人を殺害、被告13人が脱走したと主張している。【4月4日 AFP】
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タリバンとの交渉は?】
14年末の外国部隊撤退が迫る中で、タリバン側としてはその力を誇示する狙いもあるのではないかと思われます。
一方、アフガニスタン・カルザイ大統領は米軍などの外国部隊撤退後を睨み、タリバンとの交渉を模索する動きを見せていますが、その実効性は疑問視もされています。

****アフガン大統領:カタールを訪問 元首らと会談****
アフガニスタンのカルザイ大統領は31日、訪問先の中東・カタールで国家元首のハマド首長やハマド首相兼外相らと会談した。アフガニスタン旧支配勢力タリバンとの和平をめざし、カタールの首都ドーハに交渉窓口となるタリバンの事務所を設置する案を協議したとみられる。

ドーハにタリバンの事務所を設置する案は昨年、米政府とタリバンとの接触で浮上。だが、タリバンが米側への不信を深めて接触を断ち、立ち消えになっていた。カルザイ氏の今回の訪問は、アフガン政府主導でドーハ事務所設置計画を復活させる狙いがある。
訪問には、カルザイ氏がタリバンとの和平を目指して10年に設置した「高等和平評議会」のサラフディン・ラバニ議長(11年に自爆テロで暗殺された前議長ブルハヌディン・ラバニ元大統領の息子)も同行した。

しかし、タリバンはカルザイ政権を認めていない。タリバンのムジャヒド報道官は、AFP通信に対し、「タリバン事務所開設は、タリバンとカタール政府間の協議事項でカルザイ(大統領)とは関係ない。カタールにいる我々の代表は(カルザイ氏側とは)会いもしないし話もしない」と発言。タリバンとアフガン政府が和平交渉に入るのは難しい情勢だ。【4月1日 毎日】
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社会変化・・・14年末以降も維持されるのか?】
アフガニスタンの社会・経済状況を伝える記事が2件。

****アフガン人口の36%が極貧、国連リポート****
国連のリポートによると、アフガニスタンでは人口の36%にあたる900万人前後が「極貧状態」で生活しており、37%は貧困ラインをやっと上回る生活水準とされる。【4月1日 AFP】
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「極貧状態」と「貧困ラインをやっと上回る生活水準」を合計すれば約4分の3を占めますが、国土が戦闘状態にある訳ですから当然とも言えます。
ただ、カルザイ政権による統治の成果が実を結んでいない・・・とも評価できます。その結果、タリバンなどの武装勢力が根絶されない・・・とも。

もうひとつは、そうは言いつつもアフガニスタン社会には変化が見られるという話題。

****広がる女性の「ブルカ」離れ=タリバン時代と様変わり―アフガン****
頭から足まで体全体をすっぽり覆うアフガニスタンの女性の伝統衣装「ブルカ」。イスラム原理主義勢力タリバン政権時代(1996~2001)には女性に強制されていたが、政権崩壊から10年以上を経た現在、主に都市部の若い女性がブルカを避ける傾向が強まり、販売数も大きく減少している。

首都カブール北部にあるレセマリヤーム通り。タリバン時代に20店以上が軒を連ねたブルカ販売店も今ではわずか2店。この道15年の店員モハマド・シャリーフさん(23)は「タリバン時代と比較すると売り上げは8割減だ」と嘆く。ブルカは地元アフガン製が良質だが高価で、最近は約5分の1の値段の中国製品が販売の中心を占めるが、それでも毎年減少し続けている。【4月4日 時事】
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こうした社会変化が14年末の外国部隊撤退後も維持されるのか・・・、それともタリバンなどのイスラム主義が再び社会を覆うのか・・・・今はなんとも言い難いところです。

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