goo blog サービス終了のお知らせ 

孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベトナム  経済減速と相次ぐ大手企業の不祥事 ネット社会へ厳しい言論統制

2012-09-26 23:04:09 | 東南アジア

(7月1日、ハノイでの反中国デモ こうしたデモの容認・規制は今のところは政府のコントロール下にありますが、こうした抗議行動やネット上での発言で示される個人の主張は、やがては現行政治システムへの批判につながる可能性があります。 “flickr”より By thanhmai2011 http://www.flickr.com/photos/thienmai/7499738076/

ベトナムにとって日本は最大の援助国
中国と類似した社会主義体制の下での開放経済政策をとるベトナムの経済成長が著しく、人件費が高騰する中国(最近の反日抗議デモで、政治的なリスクも強く意識されるようになっています)に代わって、日本企業の進出も増加している・・・と言う話は、かねてより言われていることであり、下記記事もその流れに沿うものです。

****ベトナムに官民熱視線 企業の進出、売り込み加速****
成長著しいベトナムに、日本の官民が熱いまなざしを送っている。経済産業省はトップセールスで航空機の売り込みをはかり、ベトナム政府肝いりの工業化計画には同省幹部らが指南役に就いた。

「協力して(航空機ビジネスを)広げていきたい」。枝野幸男経済産業相は出張先のハノイで15日、日本の官民が開発に取り組む国産初の小型ジェット旅客機「MRJ」(ミツビシ・リージョナル・ジェット)を売り込んだ。
ハノイには航空機部品を組み立てる三菱重工業の子会社がある。ベトナム航空から受注がとれれば、アジア各国の受注獲得に弾みがつくうえ、地元ベトナムにも経済効果が高い、とアピールした。枝野氏と会談したビン計画投資相もMRJを「基本的に支持する」と前向きに応じた。

ベトナムは人口増が続き、若い世代が多いのが特徴だ。ドイモイ(刷新)政策で市場経済の導入を進めている。人件費が上がり続ける中国の代わりの生産拠点として日本企業の進出が加速し、進出企業の数は10年間で2倍以上になった。
製造業に続いて、最近ではイオンなど大手サービス業も進出している。日本からの直接投資額は年々増え、2010年には20億4千万ドル(約1600億円)に達した。

ベトナムには、中国が輸出規制を続けているレアアース(希土類)もある。枝野氏はズン首相とも会談し、日本企業が開発をめざすレアアース鉱山の認可について協力を要請した。
この鉱山の周辺には、日本政府の途上国援助(ODA)で、中学校や診療所が建った。ODAの一つの方法で、低い金利で資金を融資する円借款は、11年に2700億円にのぼる。ベトナムにとって日本は最大の援助国になった。

ベトナムも、日本をはじめ外国からの投資を呼び込んで発展を続けることに積極的だ。だが最近、日本企業を誘致するうえでライバルとなる国も現れている。民主化を進めるミャンマーだ。人口が多く人件費も安いため、日本企業が生産基地を築く国として魅力が高まっている。
そこでベトナムは、港湾や交通などインフラの整備を進める「工業化戦略」をつくっている。その顧問に、外国政府の関係者では唯一、経産省の通商部門トップと駐ベトナムの日本大使が就いた。ベトナムで存在感を高めたい日本と、日本の協力を仰ぎたいベトナムの思惑が一致した。(ハノイ=藤崎麻里) 【8月16日 朝日】
************************

経済の行方に垂れ込める暗雲
一方で、不動産バブル崩壊による経済危機、共産党独裁政権下における政府と企業の癒着など、ベトナム経済の内情を懸念する報道もあります。

****ベトナム:大物銀行家逮捕 経済全体への不信感広がる****
ベトナム有数の資産家として知られる大物銀行家が「違法な経済活動」の疑いで逮捕され、国内に混乱が広がっている。20日の逮捕以降、主要株価は軒並み急落しており、AFP通信は24日、ベトナム株式市場の時価総額はすでに50億ドル(約3900億円)以上、下落したと報じた。事件は新興市場として世界の注目を集めるベトナム経済全体への不信感をも招いている。

逮捕されたのはベトナム大手銀行「アジア商業銀行(ACB)」の創業者、グエン・ドク・キエン容疑者(48)。ACBの経営から退いた今も多数の企業に投資し、プロサッカーチームの会長も務める。容疑は自身が会長を務める複数の投資会社に関するものとみられるが、政府は詳細を明らかにしていない。
ベトナム国家銀行(中央銀行)は事件とACBの関連性を否定したが、23日には、ACB頭取がその職を辞した直後に逮捕された。

事件は銀行業界全体への不信を招き、ACB株やほかの国内主要銀行株は急落、ベトナムの主要株価指数は23日までに約10%下落した。ホーチミンにあるACBの支店では預金を引き出す市民が殺到する取り付け騒ぎが起きている。

86年に「ドイモイ(刷新)」と呼ばれる開放政策を採用したベトナムは急速な経済成長を遂げた。
しかし、09年以降、外国投資は減少傾向にあり、一部では不動産バブル崩壊による経済危機を懸念する声も出始めている。
22日付の米ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、共産党独裁政権下における政府と企業の癒着が市場経済を不健全にさせており、キエン容疑者の詳しい逮捕容疑も明らかにされていないことから「ベトナム経済の問題点を浮き彫りにしている」と指摘した。
また、関係者の間では、政権と緊密な関係だったキエン容疑者の逮捕の背景には「共産党内の権力闘争があるのでは」との臆測も流れており、投資家らの不安が増している。【8月25日 毎日】
************************

上記のアジア商業銀行(ACB)創業者に続いて、国営ベトナム海運総合会社の元会長も逮捕され、大手企業の不祥事が目立ちます。

****海運会社の元会長逮捕=企業の不祥事続く―ベトナム****
ベトナム公安省は5日、国営ベトナム海運総合会社(ビナラインズ)の元会長で運輸省海事局長も務めたズオン・チ・ズン容疑者(55)を逮捕したことを明らかにした。同容疑者は浮体式ドックの購入などで多額の損失を計上し、「国家経済管理違反」で5月に逮捕状が出た後、逃走していた。有罪なら無期懲役の可能性もあるという。

ベトナムでは8月20日にアジア商業銀行(ACB)の共同創設者で大物実業家のグエン・ドゥック・キエン氏が「不正な事業活動」を行ったとして逮捕されたばかり。同30日には国営造船会社ビナシンの経営難を招いたとして、禁錮20年の有罪判決を受けたファム・タイン・ビン元会長の控訴が棄却されるなど、大手企業の不祥事が相次いでいる。【9月5日 時事】 
*********************

経済が減速するなかで、ベトナム政府が銀行の不良債権問題でIMFに救済を求める可能性も取り沙汰されているようです。

****経済減速のベトナムがアジアのギリシャに****
ベトナム経済の行方に暗雲が垂れ込めている。銀行の取り付け騒ぎが噂されたかと思えば、汚職容疑で政府高官が逮捕され、着実に伸びていた経済成長にも陰りが見える。さらに政府が国際機関の支援を求めているという臆測まで飛び出した。

ベトナム政府が銀行の不良債権問題でIMF(国際通貨基金)に救済を求める可能性に言及したのは、国会の経済委員会だ。中央銀行のレー・ミン・フン副総裁がすぐにそれを否定したが、可能性が取り沙汰されただけでも注目に値する。財政赤字の是正と景気回復に必要な措置を早急に講じるべきだと、政府に対する圧力が高まっていることを意味するからだ。

地域の大国、中国の財政も非常に不安定な状態にあると指摘する専門家もいる。中国の財政が枯渇し、ベトナムが景気後退に向かっているとなれば、東南アジア諸国に対する影響は計り知れない。
東南アジア各国の経済は、世界金融危機が発生した08年以降も、その荒波をものともせずに成長を遂げてきた。だがその躍進を支えてきた中国とベトナムが共倒れとなれば大問題だ。

ASEAN自由貿易地域の関税撤廃によって、加盟10カ国問の貿易は飛躍的に伸びた。加えて、中国による投資と資金援助(特に対カンボジア)は、ASEAN地域の景気の見通しを明るいものにしてきた。
しかし国単位でいえば、マレーシアやタイ、フィリピン、インドネシアなどの経済は不安定な傾向を示している。経済成長は鈍く、債務が増え、規制撤廃による地域的な恩恵はもはや見込めない。かといって、ヨーロッパや日本、中国などの貿易相手国がすぐに好況を迎えるとも思えない。

ベトナムが「東南アジアのギリシャ」になると断言するのは時期尚早だろう。政府と国民の性質はギリシャとはかなり異なるし、インフレは抑制されて為替レートも安定している。
とはいえベトナムの不動産価格は2分の1に下落し、国外からの投資は3分の1も減少した。
向こう2年間の成長率の見通しは5%台だが、発展を目指す途上国にとっては微々たる数字だ。

ベトナム経済の不安は隣国のカンボジアやラオスにも悪影響を及ぼす。そして先行きの不透明感が急速に問題になりつつある東南アジア経済全体にも波及するだろう。【9月26日号 Newsweek日本版】
*******************

個人のブログに対しても強まる監視・規制
経済だけでなく政治・社会の面でも軋みが出ています。
ベトナムを観光旅行していても、この国が共産党一党支配の社会主義であるということを意識させるものは殆んどありませんが、やはり中国同様、言論の自由が著しく制約されているという、共産党一党支配から生じる大きな問題が存在しています。

****ベトナム当局が「ブログ狩り」 体制批判に危機感***
ベトナム当局がブログの摘発を強めている。ブロガーの拘束や有罪判決が相次ぎ、サイト妨害も頻発する。共産党の一党独裁下で言論統制を続けるが、ネット空間で体制批判が広がる現状に危機感を募らせる。

ハノイの裁判所は11日、反国家宣伝をブログで広めたとして、元軍人のレ・タイン・トゥン氏に禁錮5年の判決を言い渡した。報道などによると、3年前から民主主義や政治の自由を求める意見をブログに掲載。昨年11月、国家や党の政策を誤って伝えたとして逮捕されていた。
この判決の3日前にも、教員や警察官を務めたブロガー、ディン・ダン・ディン氏が南部ダクノン省で禁錮6年の判決を受けた。

7日には著名な女性ブロガーのタ・フォン・タン氏(43)ら3人のブロガーの初公判も予定されていた。しかし先月30日にタン氏の母親(64)が娘の釈放を求めて焼身自殺。当局の弾圧への抗議とみられ、その直後に公判は理由が示されないまま延期された。

ブロガーへの脅迫行為も伝えられる。国立の研究所に勤めるグエン・スアン・ジエン氏は16日、自らのブログの内容について、ハノイの情報通信当局から罰金を課されたほか、当局者から「精神的な脅しや暴力的な態度」を繰り返して受けたと告発した。

ジエン氏が運営する人気ブログは今年5月、日本からの原子力発電所の輸入に反対する文章を掲載し、署名を呼びかけた。直後に傷病兵を名乗る集団がジエン氏の勤務先を訪ね、物を投げたり、脅迫したりする行為を繰り返したという。ブログへの嫌がらせの書き込みやアクセス妨害が続き、ジエン氏は公安当局の監視下に置かれている。

党や政府が警戒するのは、インターネットの普及でブログ利用者が急増しているためだ。「知りたい情報は政府の握るメディアにはないので、ブログやフェイスブックのチェックは欠かせない」(貿易会社に勤めるハノイ在住の男性)
政府は「インターネットの普及に力を入れている」(2009年12月の外務省会見)とする一方、「個人の心情をブログにつづるどさくさに紛れ、国家の治安を乱す情報を流す人間がいる。違法行為は厳重に処罰する」と警告してきた。

2年前からは中国と領有権をめぐり対立する南シナ海問題が国民の大きな関心を呼び、ハノイなどで開かれた反中デモはブログなどで参加が呼びかけられた。一部のブログでは、中国の非難だけでなく、ベトナム政府の対応のつたなさを公然と批判する書き込みもみられるようになっている。【8月28日 朝日】
**********************

反日だろうが、反中国だろうが、ネット社会において国民が公然と声を出し始めると、やがてはそれは政府批判に転化するというのは、中国と同様です。
上記【朝日】にもある、著名な女性ブロガーのタ・フォン・タン氏ら3人のブロガーの初公判については、24日、禁錮4~12年の判決が出されています。

****政府批判のブロガーに禁錮4~12年 ベトナム****
インターネットのブログで政府を批判したとして、反国家宣伝の罪で起訴されたベトナムのブロガー3人に対し、ホーチミン市の人民裁判所は24日、禁錮4~12年の判決を言い渡した。AP通信などが伝えた。

ディウ・カイ被告は禁錮12年、タ・フォン・タン被告は同10年、ファン・ターン・ハイ被告は同4年。3人はそれぞれのブログで、警察の汚職や中国との関係などで政府に批判的な記事を執筆したとされる。

共産党一党体制のベトナムではテレビや新聞は政府が統制。個人のブログに対しても近年、監視や規制を強めていた。
在ベトナム米国大使館は同日、「ベトナム政府の対応は表現の自由に関する国際法と矛盾する恐れがある。3人は釈放されるべきだ」との声明を発表した。【9月25日 朝日】
********************

中国やベトナムは、著しい経済成長を実現して成長モデルとしての有効性を世界にアピールしましたが、経済成長とネット社会の拡大によって“もの言う”市民が増加すれば、その政治体制の根本的問題が浮かび上がってきます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 韓国大統領選挙  父親の存... | トップ | ロシア  メドベージェフ首... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

東南アジア」カテゴリの最新記事